編集部の一日遅れで蘇州に入った。
事前に得ていた情報では、上海空港から蘇州までは新幹線で30分ほどだという。そのつもりでいると、空港で会ったニッタクの温くんが、大会組織委員会のバスが来ているのを見つけ、無料で乗ることができた。当然、卓球関係者がたくさん乗っていて、木村興治夫妻の姿もあった。
席に座って温君と話していると「蘇州までは2時間くらいだそうです」とのことだ。それはまずい。実は蘇州には元同僚が住んでいるので、ホテルに早く着いてちょっと会おうと思っていたのだ。
それで慌ててそのバスを飛び下り、ひとり新幹線の駅に向かったのだった。それが午後1時頃だ。
新幹線の駅は空港にはなくて、まず地下鉄に乗らなくてはならない。さっそく券売機で券を買おうとすると使い方がさっぱりわからないのだ。途方にくれていると、中国人夫妻が「どうしましたか?」という具合に英語で話しかけてきた。
行きたいところを話すと、女性が切符を買ってくれて、私にくれるという。3元だから60円ほどだが、なんと親切なのだろうか。私は100元札しかもっておらず、支払うこともできず恐縮するばかりであった。
その夫妻も行先は蘇州で、新幹線の乗車券はすでに買っているのだが、私が無事に買えるかが心配らしく、チケット売り場についてきてくれた。そこにはなんと人が50人以上も並んでいてしばらく買えそうにない。しかもIDカードがないと買えないものらしく、男性が係員のところに行ってパスポートでも買えることを確認してくれた。
あと20人ほどのところで、夫妻は親切にも列に割り込んで(笑)私の分を買ってくれた。2時前には買えたのだが、なんと早い便はすでに満席で、買えたのは4時42分の便であった。トホホ。おとなしくバスに乗っていればよかった。
とはいえ、日本でもいないような親切な中国人に出会えて得難い経験をした。夫妻は20代後半に見え、結婚して1年だという。今年の秋には大阪に8日間の旅行の予定であり、とても楽しみにしていると語った。中国でも一般の人はそうそう英語を話すわけではないので、仕事を聞いてみると中学校の中国語の先生だという。
よくYahoo!ニュースなどで、外国人が日本に来てその親切さに感動する話が載っているが、中国にも日本人以上に親切な人はいることがよくわかった。
そういえば2008年に広州大会に来た時も、ホテルの従業員にチップをあげようとするととても感じよく固辞され、意外な気持ちになったことを思い出した。