丹羽という選手は本当に面白い。
これまで、丹羽の試合態度が一生懸命ではないとか、すぐに諦めて試合を捨てるので見ていて腹が立つという批判を何人もから聞いた。
しかし私は、そういうところが丹羽という選手の面白さだと思う。そこを楽しまなくては損だ。考えてみよう。世界選手権やオリンピックでテレビで何十万人かが見ているとわかっている状況で、他人にどう思われるかをまったく意に介さないで試合をできる男がいったいどういう人間なのかということを。
鉄の心臓、氷の情熱、馬耳東風、カエルの面に小便、それが丹羽なのだ。
そう思ってみればこの男の試合のなんと面白いことか。応援団も観客も相手も徹底的に盛り下げて凍てつかせた上で、無表情でしかし狂った闘鶏のように打ちまくる。どうやらその肉体だけは熱く燃えているらしいことが、ときおり二本の指先でぬぐう汗が示す。
仲村さんいわく「あれじゃ相手は絶対調子でません。出しようがないです。ラリーが続かな過ぎてボール打たせてもらえないんですから」
そういう男だからこそ中国に勝つチャンスがあるのだ。腹が立つどころか、丹羽ほどアブない魅力を放つガキはいない。卓球界にこんなに面白い男がいるのが心底うれしい。