世界選手権後にブンデスリーガの決勝を控えるドイツの名門クラブ『ボルシア・デュッセルドルフ』を訪ねた。
対応してくれたのはクラブの最高責任者であるアンドレアス・プレウス氏。彼は元同クラブの代表選手で、コーチを経て、現在はゼネラルマネジャーとしてクラブを仕切っている55歳。
1961年創立の60年近い歴史を持つ名門クラブ『ボルシア・デュッセルドルフ』は、かつて松下浩二も在籍した。ブンデスリーガでの優勝はもちろん、欧州チャンピオンズリーグでも優勝し、トップのプロチームを頂点に傘下には23のアマチュアチームを持つ、クラブの規模と歴史でも欧州随一のクラブだ。
クラブの予算規模は約2.5億円で、ドイツでは『オクセンハウゼン』とほぼ同程度か。
トップチームはもちろんだが、それ以外に、各種オープン大会の企画、コーチセミナー、スポーツホテルの経営、そして社会活動として、障がい者卓球のサポート、老人ホームや病院などへ出向いての卓球活動など幅広い。
「クラブとしてはスポンサー収入をメインとして、チケット収入、社会活動を通しての補助金、ホテルや各種イベントからの収入で成り立っている。スタッフはプロ選手を含めると20人、それ以外にパートタイマーを含めたコーチ陣が20人ほど。ホームマッチの時には会員の家族や友達などがサポートしてくれるし、そういったボランティアやファンクラブ、会員がクラブを支え、そういうコミュニティーとつながりがクラブの中心になっている。ドイツと言えばサッカーが有名だし、スポーツと言えばサッカーと言われるが、卓球でしかできない活動があると思っている」(プレウス)。
クラブの歴史を綿々とつなぎ、クラブとしての軸をぶらさず、「TABLE TENNIS for ALL」(すべての人のための卓球)を実践し、デュッセルドルフという町に密着していこうとしている。
そこにこそ、来年開幕しようとしているTリーグが目指す本来のクラブの姿があるのではないか。
「日本で新しく新リーグが立ち上がることは聞いているよ。それにシンガポールで始まるT2リーグやインドリーグなども始まるから、選手の争奪戦も始まるかもしれないね。日本は日本独自のやり方があると思う。学校や企業と協力した独自のやり方があるのだろう。今日本はオリンピックの後に良い流れが来ていると聞いているし、日本の卓球が発展していくことは卓球界にとってとても良いことだ」(プレウス)。
ゆったりとしたクラブラウンジやテラス。そこで働くスタッフの笑顔。平日の昼間、高齢の方や障がい者の会員が卓球を楽しんでいた。60年近いクラブ運営と素晴らしい施設。こんなクラブが日本にできるのだろうか。
お金を稼ぐだけのものではなく、単なるエンターテイメントの箱ではない、地域密着の『ボルシア・デュッセルドルフ』のようなクラブが近い将来、日本にできることを願っている。