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2017世界卓球デュッセルドルフ大会速報

 ミックスゾーンではペン記者の前にテレビのインタビューが入る。昨日の最後の日本選手の試合は村松雄斗(東京アート)対モンテイロ(ポルトガル)だった。ペン記者の前のテレビのインタビューで村松は感極まって泣き出してしまった。
 負けた後の悔し涙でもない。彼は素晴らしいプレーで勝ったのだ。今大会2試合目の2回戦の試合。ペン記者の前でも彼の大粒の涙が止まることはなかった。大接戦だったとはいえ、何が村松の心を揺さぶったのか、記者の人たちは知るよしもなかった。

 昨年の8月からドイツのブンデスリーガ1部の『オクセンハウゼン』でプレーする村松。シーズンが始まり、リーグでも活躍し、チェコオープンで優勝するなど、10月、11月までは絶好調。世界ランキングも上げていたが、12月くらいから失速し、1月の全日本選手権やその後のツアーでも成績を出せないでいた。
 世界ランキングは高位置をキープし、世界選手権の代表には選ばれたものの、本人は成績を出せないことに苦しんでいた。

「最近良い結果が出なくて、勝つところをコーチや監督に見せたかった。たくさん練習してきたのに勝てなかったけど、この大舞台で勝ててうれしい」。
 モンテイロ戦の最終ゲーム、9-5からジリジリ追い上げられ、10-8からのサービスエースで、ジャンプしながら吠えた村松。感情を爆発させ、そして涙にむせんだ理由は、壁にぶち当たった男が苦しみながら勝利し、自信を回復させた喜びだったのかもしれない。 
 口数の少ない村松が内面にため込んだ苦悩。その苦しみと向き合った数ヶ月。涙を流しながら、その長かった時間を村松はかみしめていた。 (今野)