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平成29年度全日本選手権速報

小道野結とのペアで女子ダブルス3回戦に臨んだ、アスモの河村茉依(まい)。一般女子シングルスの最年長プレーヤーは、大学生ペアの三條/熊中(青山学院大)に1−3で敗れ、全日本の舞台を去った。試合後、「卓球を始めて29年やってきて、ここはたくさん良い思い出もあるし、悔しい思いもしたし、いろいろな思いが混ざった場所ですね」と涙を見せながら語った。

昨日の女子シングルス2回戦ではマッチポイントを奪いながらも惜敗し、号泣。東京富士大時代には女子プロレスラーに間違えられたことがあるという長身と、会場の空気を振るわせるような気合い、そしてガッツポーズ。しかし、その神経は人一倍細やかだった。
日立化成からアスモに移籍し、今年で8年目の河村。アスモに入社して2年目くらいから、団体戦で単複で起用された時、特にダブルスでサービスが出せなくなる「イップス」状態に陥った。それから5年くらいはずっとバックサービスでプレーし、ダブルスでさえバックサービスのみで戦った。

「でも、去年の全日本社会人あたりから『現役ももう最後かもしれない』と思って、サービスが出せないまま終わるのは絶対後悔すると思った。それで頑張って出してみたら、シングルスではかなり出せるようになった。まだダブルスではイップスが出てしまっていたんですけど、今大会たまたま練習で2本入って、「もしかしたら出せるチャンスがあるかもしれない」と思いました。今日の最後も点差が離れていたし、出さないで終わるよりはトライしようと思ったら、やっぱり出せたんです。それは大きかったです。卓球人生というか、人としてトライして良かったなと思いました」(河村)。

「世界選手権とか出るわけでもないのに、なんかひとりで『勝たなきゃいけない』『成績を出さなきゃいけない』とこだわってしまった。それで自然にサービスが出せなくなってしまったんでしょうね」と河村は振り返る。イップスになった自分を受け入れ、できる範囲で自分のプレーを見直そうと気持ちを切り替え、不安障害にも苦しみながら、現役を続行してきた。

全日本で思い出に残るシーンとして、「日立化成時代の福平暁とのダブルスでの初メダル(3位)や2年連続でベスト8に入れたこと、アスモで30代になってから全日本でベスト16に入れたこと、そして今大会の混合ダブルス」と語る。3月の東京選手権にもエントリーしており、これで現役引退ということではないが、「自分の中では(現役生活は)もういいんじゃないかと、そういう気持ちで固まりつつあります」と語る河村。全日本を沸かせた女傑は、フロアに深々と一礼した。