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2018世界卓球ハルムスタッド大会速報

 男子団体準決勝トップで、中国の馬龍とスウェーデンのマティアス・カールソンが対戦。馬龍が3ー0で勝利を収めた。

 マティアス・カールソンはフォア面に表ソフトを使用している。勝利を決めた最後の一本は、馬龍の強烈な回転のバックドライブに対する、カールソンのフォア強打のミス。現代卓球で、表ソフトで戦うことの難しさを象徴する一本だったが、もともと80年代にペン表ソフト速攻で一斉を風靡(ふうび)したのは中国。その中国の代表選手である馬龍が、ヨーロッパの表ソフトを使う選手と戦う。なかなか興味深い一戦だった。

 一方で、馬龍とマティアス・カールソンの対戦は、ふたつのスウェーデンスタイルの邂逅、巡り合いと言えるのかもしれない。

 マティアスはヨーロッパ卓球の中では「異端児」のように映るが、71年世界チャンピオンのステラン・ベンクソンが現役後期にバック面に表ソフトを使用したり、60年代から70年代にかけて活躍したシェル・ヨハンソンがフォアの「ハンマースマッシュ」を得意とするなど、スウェーデンには表ソフトやミート打ちを取り入れたひとつのスタイルの流れがあった。それは1960年代に荻村伊智朗がスウェーデンで指導を行ったことに端を発する、日本からの影響もあるだろう。

 1980年代後半、スウェーデンはオールラウンドなシェークドライブのプレースタイルを創造した。ワルドナーのフォアのミート打ち、「コブラ」と呼ばれたパーソンのバックハンドスマッシュにかつての伝統は感じられるが、プレーのベースとなるのは回転量が多く、死角のない両ハンドドライブ。そして中国のペン表ソフト速攻を打ち破った。

 スウェーデンが創造したシェーク両ハンドドライブのスタイルは、現在も世界の卓球界の主流になっている。ペン表ソフト速攻に限界を感じた中国は、スウェーデンから取り入れたシェーク両ハンドドライブのスタイルを、何世代もかけて独自に進化させてきた。強力なフォアハンドを誇りながら、バックハンドの攻守に抜群の完成度を誇る馬龍は、中国式シェークドライブスタイルの最先端にいる。

 クラシックなスウェーデンスタイルの流れを継ぐマティアス・カールソンと、80年代のオールラウンドなスウェーデンスタイルに中国の速攻卓球のエッセンスを注入した馬龍。中国応援団の「マーロン!」の歓声と、スウェーデン応援団の「マーティアス!」の声援が飛び交う中、ふたつのスウェーデンスタイルがハルムスタッドの地で交錯した。