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2018世界卓球ハルムスタッド大会速報

 いよいよ世界選手権が始まる。
 会場は人口6万6千人のスウェーデンの西南の町ハルムスタッド。世界選手権開催史上、もっとも小さい町での開催となった。
 スウェーデンには卓球の聖地と言われる場所がある。それはハルムスタッドの隣町である「ファルケンベリ」だ。この名前を聞いたことがあるだろう。バック2本(バックハンドフォアハンド)、フォア1本(フォアへの飛びつき)のフットワーク練習だ。 
 ファルケンベリはハルムスタッドよりもさらに小さな町だが、卓球においては世界中にその名を知られている。なぜならこの小さな町から世界チャンピオンが二人も生まれているからだ。

 ステラン・ベンクソン(1971年世界チャンピオン)とウルフ・カールソン(1985年世界ダブルスチャンピオン)だ。
 ベンクソンは1969年に日本へ卓球留学し、その2年後に世界チャンピオンとなった。日本の荻村伊智朗(元世界チャンピオン、元国際卓球連盟会長)に指導を受け、日本式の練習を理解し、尊敬し、実行した選手だった。彼が日本に来て、フットワーク練習を行ったが、それをスウェーデンに持ち帰り、バックハンドを使うヨーロッパ用に変えたのが「ファルケンベリ」だった。ファルケンベリでプレーするベンクソンが広めたフットワーク練習だったためにスウェーデンでこの練習を「ファルケンベリ」と呼び、スウェーデンが世界で活躍した時期に、このフットワークは日本にも逆輸入された。

 過去のスウェーデンでの世界選手権はストックホルムかイエテボリだったが、なぜ今回ハルムスタッドで開催されたのか。
 それは今から数年前、ハルムスタッドの卓球クラブの会長が「ハルムスタッドで世界選手権をやりたい」という荒唐無稽なアイデアを言い出し、それが実現したという。
 小さな町での開催で、まずホテル数が絶対的に少ない。市内にホテルは3、
4軒しかない。世界中から集まる卓球関係者は宿泊するのにひと苦労だ。アクセスもあまり良くない。コペンハーゲン(デンマーク)から電車で2時間を要して来るか、イエテボリ空港から1時間ほどかけてくる。それに観客がどれほど集まるのかも心配だ。
 不便ではあるけど、小さな町の卓球クラブの情熱が世界選手権の誘致に成功したことも驚きだ。これもスウェーデンらしいことかもしれない。

 このハルムスタッド開催の裏にはヨーゲン・パーソンの存在がある。1991年の世界チャンピオンで、スウェーデンの栄光の時代を築いたスーパースターだ。前述したように、ファルケンベリとハルムスタッドは隣町。ハルムスタッド生まれのパーソンは小さい頃からファルケンベリで練習していた。そこには憧れのスター、ベンクソンがいた。ファルケンベリには当時、リンドやカールソンなども練習していた。
 ハルムスタッドが生んだスーパースター、パーソンの存在が卓球クラブの「世界選手権をこの地で」という思いの根底にあったのだ。 (今野)
  • 28日のプレスカンファレンスにも出席したパーソン。まさに大会の顔だ