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世界卓球ブダペスト大会

 安宰賢に敗れ、茫然とした表情でミックスゾーンに現れた張本智和。安宰賢には16年世界ジュニア団体決勝2番で、3ー1で勝利していたが、ジュニア世代の選手の成長速度を考えれば参考にならない。
 安宰賢はフォア面に中国製の粘着ラバーを貼り、バックハンドでは回転をかけて伸ばしながら、隙あらばフォアハンドの回り込みを狙ってくるタイプ。そのフットワークは、ジュニア時代に田㔟邦史・男子JNT監督が「日本選手にも見習ってほしい」と語っていたほど。張本戦でも、随所に強烈なパワードライブを打ち込んできた。以下は試合後の張本のコメント。

「実力が足りなくて、特に対策されて負けたというわけでなく、自分の凡ミスや相手のスーパープレーがあって、思い切って攻めることができなかった。いつも負ける時はそんな感じですけど、展開を変えることができなかった。練習の時からチキータにミスが多くて、修正できずに試合に入ってしまった。試合でもチキータで決められたプレーは1、2本しかなく、その後のプレーもまったく入らなかった。本当に全然ダメな試合でした。

 今日は特別緊張していた。理由はよくわからない。いつもは1ゲーム目を終わると緊張は解けてくるんですけど、今日は緊張したままでした。昨日は100%向かっていけたけど、今日はあと少しでメダルというところで、少し守りに入ってしまった部分はありました。東京五輪まで1年半もない中で、メダルを獲って自信をつけたかったですけど、オリンピックにも恐らく出てこない選手にこうやって負けたというのは残念です」(張本)

 張本はボル(ドイツ)の棄権については聞いていなかったようで、ミックスゾーンで記者から質問され、逆に目を丸くしていた。絶好のドローに加え、ボルの棄権という好条件を生かせなかったが、「今日のプレーだったら、今の試合に勝っても次は勝ち上がれないと思う。そこまでいけなかった自分が悪いと思います」と潔く語った。
 
 これまで、打球点の早いアジア勢との打ち合いには強く、中陣で変化をつけてくるヨーロッパ勢に対して課題があると言われてきた張本。この安宰賢は韓国選手の中でも、台から距離を取ってプレーするタイプで、それだけに相性の悪さが出たというのはある。チキータはことごとく中陣で変化をつけてブロックされ、連続攻撃に移行できなかった。今後さらに研究されれば、対アジアでも同じような張本対策を講じられるだろう。

 「今後は戦術の引き出しを増やしていかないと、こういう大きな大会で勇気を持って戦術は変更できない。そういったところが今後の課題かなと思います」。ベンチに入った倉嶋洋介監督はそう語った。右手薬指の負傷を抱えながら、必死で戦い抜いた5日間の戦い。誰よりも敗戦を糧にしてきた選手だからこそ、今大会を真摯に反省し、さらなる成長を望みたい。