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全日本卓球選手権大会

 男子シングルス1回戦、地元・大阪で30歳にして全日本初出場を決めた福岡弘人。大阪府予選の代表決定戦で、クローバー歯科カスピッツの右ペン表の実力者・加藤駿にゲームオールで競り勝ち、全日本の舞台に立った。

 大阪府立城東工科高校の出身で、近畿大会には団体で出場したが、シングルスは出ることはできなかったという福岡。大阪商業大を卒業後も卓球を続けたが、全日本予選前でも練習は「週に1〜2回やっていたのを週3回にしたぐらい」。勝った瞬間の心境は本人曰く「まさかっていう感じですよ。こんな腹して出ていいんかなと」。
 ちなみに体重は98キロ。一般男子シングルスの最重量プレーヤーも夢ではない数字だ。ラグビーの福岡堅樹は俊足プレーヤーだが、こちらの福岡さんは歳を重ねるに連れてフットワークが落ちていた。その彼が30歳にして、全日本への重い扉を開いたのには理由がある。

 「もともとは下がってプレーしていたんですけど、体重が増えて動けなくなってきた。若い子がみんな卓球が早くなって、前陣でプレーするようになったので、明徳の手塚(崚馬)くんみたいにぼくも前でパチパチやろうかなと。スマッシュを覚えて、自分の味を出していったら勝てるんちゃうかと。そしたらうまいことハマッた感じです。練習会場でもひとりスマッシュを打ってました」(福岡)

 クラブプレーヤーから、大躍進の全日本出場。卓球王国を毎月読んで、技術ページから「イイとこ取り」でプレーに取り入れているという。読者の方を大いに勇気づける存在である福岡に、「読者の方にメッセージをください」とお願いしてみた。

 「皆さん、YouTubeを見たり、全日本選手権を見に来たりして、トッププレーヤーの真似をしたがる人が多いと思うんですけど、週に1回とか2回しか練習できない選手はやらないほうがいい。できないし、ケガのもとになる。できないことはあきらめて、『このプレーに絞る』というシンプルな考え方で、『できる・できない』をハッキリさせたほうが自分の長所を生かせる。ある意味では、あきらめが肝心かなと思うんです。

 ぼくも動けなくなったんで、動くのをあきらめたら意外にボールがよく見えるようになってきた。良い用具を使うのはいいですが、良いプレーはなかなか真似できない。無理せずに何かをあきらめて、できること一本でやっていったら、ぼくは全日本に出られました。ブロックとカウンター、あとはチキータが怖いから低いサービスの3点セット。これで前で動き回る若い選手に対抗したのは、自分の中では間違っていなかったと思います」(福岡)

 聞いていて思わず引き込まれ、「エエこと言うなあ」と深くうなずいてしまった「アキラメのススメ」。長所と短所、できることとできないことを整理すれば、見えてくる世界があるということだ。
 シングルス1回戦はジュニアベスト32の松田(野田学園高)に対し、2ゲーム目はゲームポイントを奪うも0−3で敗退。来年も大阪で開かれる全日本では「また出場して、1ゲームでも1試合でも多くやりたい」と意気込みを語る福岡。動かずに勝つ卓球でも、体重は3ケタの大台に乗せないよう、気をつけてくださいね。

●男子シングルス1回戦
松田(野田学園高) 7、10、1 福岡(竹の子)
  • 抜群の「センスマン」。そしてクラブではムードメーカーの福岡

  • 可愛いクラブ名「竹の子」は河内長野市が拠点。由来は知らないそうです……