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 昨年の12月20日、編集部タローは新幹線で急きょ大阪に向かった。世界選手権では59年男子団体優勝、61年男子ダブルス優勝の伝説の名プレーヤー、星野展弥(のぶや)さんに話を聞くためだ。その日の朝に連絡がつき、週に1回指導している東大阪市のMT卓球場で、夜に取材ができることになったのだ。

 卓球王国編集部には、1950年代からの古い写真がたくさんある。その中で、ギョロリとした大きな眼で人懐っこい笑顔を見せる星野さんはひと際目立っていた。「東京体育館の観客席に飛び込んだ」という伝説が残る強烈なフォアスマッシュを武器に、太く短い競技生活を全力疾走で駆け抜けた。

 2時間近くうかがったお話は、時間を忘れるほど面白かった。わかる人にはわかるでしょう、まさに至福の時間。もうすぐ81歳になる星野さんだが、歯切れの良い語り口から、驚きのエピソードがポンポン飛び出してくる。

 取材を終えると星野さんは卓球場に行き、中高生の選手たちのプレーを笑顔で見つめ、時にアドバイスを与えていた。「子どもたちのプレーを見ているのはホンマに楽しい。夜になって寝床に入ると、その日の子どもたちの試合を全部思い出すんです」と語る星野さん。選手時代に指導を受けた経験はなく、自らの創意工夫でスマッシュという武器を磨いた星野さんの指導法は、「子どもたちは絶対に怒らない、とにかく長所を伸ばす」ことだ。

 町工場が連なる東大阪・長瀬の街にともる、あたたかな卓球場の明かり。子どもたちやレディースの汗と笑顔があふれる中で、伝説の卓球人は少年のように眼を輝かせていた。ちなみに話が面白すぎて、新幹線の終電を逃しました(柳澤)。

【卓球王国 2018年3月号(好評発売中)/『【伝説のプレーヤーたち】星野展弥』より
https://world-tt.com/ps_book/newdetail.php
  • 59年ドルトムント大会での星野展弥さんのプレー

  • 61年北京大会でのひとコマ