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 「面白くてタメになる卓球の歴史マンガを作りたい」
 卓球王国編集長の今野さんからそんな電話をいただいたのは3年前2017年8月のことだった。よく覚えていないのだが、その電話は私への原作依頼ではなく、私が古い卓球の本を沢山持っているので資料提供の協力をしてほしいというものだったと思う。なぜなら私はその電話で「原作は私がやりますから絶対に他の人に頼まないでください!」と言ったことをはっきりと覚えているからだ。

 そもそも卓球の歴史は、語り継がれるべき面白いエピソードが満載なのに、それらが広く活用されているとは言い難い。これらを一部の卓球史マニアだけのものにしておくのはあまりにももったいない。どうにかしてそれらを世間に伝えることはできないか、そういう思いを常々持っていたのだが、具体的にどうしたらよいかはわからなかった。

 そこに今野さんからお話をいただいたので(いただいていないのだが)飛びついたのだった。といって、私はふざけた4コマまんがを描いたことがある程度で、ちゃんとしたマンガの原作は書いたことがない。今野さんが躊躇したのも当然であったが、そこは熱意で押し切った。また、エピソードそのものが面白いのだから、そのまま書くだけで面白くなるはずだという目算もあった。

 さっそく藤井基男著『卓球・知識の泉』(卓球王国2003年)を参考にして卓球の誕生から書き始めた。そこでわかったのは、文章と違ってマンガは実時間で書かなくてはならないということだ。たとえば「第1回ヨーロッパ選手権にインドが参加していたことから、大会の途中から世界選手権に変更されてこれが第1回世界選手権になった」という史実があったとすると、試合の絵にこの説明文を入れてもマンガにはならない。それでは絵本か紙芝居だ。マンガにするには、インド人が参加しているのを見て誰かが「世界選手権にしよう」と提案するなど、実時間でのやりとりを描くことが必要になる。ところがそんな細かい記録などどこにも残っていないから想像で書くしかない。よって、史実に基づいた歴史マンガといっても、コマのほとんどが創作になってしまうのだ。そのまま書くだけで良いというのはとんだ誤算であった。

 これは大変なことになったと思ったが、創作とはいわば妄想なので、それなら得意だと開き直った。イメージしたのは、歴史マンガの傑作『栄光なき天才たち』(作・伊藤智義/画・森田慎吾)だ。卓球のそれぞれのエピソードが『栄光なき天才たち』にすでに描かれた様子を想像して、それをなぞるつもりで書くと、自然に書くことができた。この名作マンガなくしては今回のマンガは書けなかったと思う。


〜制作秘話2(後日掲載)に続く〜

 『マンガで読む 卓球ものがたり1』はコチラ
 『マンガで読む 卓球ものがたり2』はコチラ