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 「テーブルテニスコレクター」を苦しみながらも読んでいると、執筆している人の中に、アラン・デュークというとんでもないイギリス人研究家がいることがわかってきた。なにしろこの方、卓球史において重要な人物を見つけると、その人の生没年はもちろん、当時の住所や家族構成、はては祖父の代からの一家の歴史など、もはやどこが卓球史なのかわらないことまで調べ上げて発表するというとんでもないお方なのだ。

 ホイ氏の回答に納得できなかった私はデューク氏に連絡を取り、E.C.グッドが架空の人物なのはわかったが、モデルになった人物はいなかったのかを尋ねた。デューク氏は私の疑問に興味を持ち、さっそく調査をしてくれた。その結果、E.C.グッドに限りなく近いフレデリック・グッドという当時25歳の人物がいたことを突き止めてくれた。フレデリック・グッドは、1902年の大会で3回優勝しており、当時の新聞に「ラバー貼りラケットの先駆者のひとり」と書かれ、ロンドン郊外のパットニーに住んでいたという点も伝説とぴたりと一致していた。薬局のエピソードまでは記録に残っていないので真偽のほどはわからないし、ラバーの発明者は先述したようにフランク・ブライアンであることに変わりはないが、ともかく、E.C.グッドは名前は違ったが実在したことがわかったのだ。

 こうして、ときには卓球史の研究に小さな貢献をし、私自身も新しい発見をしたりしながら、行きつ戻りつしながら卓球マンガを書き進めた。

 当然ながら目を通した文献は膨大になった。書籍だけではなく、卓球レポートなどの専門誌、新聞記事も集めた。何がどこに書いてあるかは到底覚えられないので索引が重要になる。一度読んでも記録をしていないと二度と見つけられなくなるので、ちょっとでも使えそうなものは念のためにすべて記録した。この索引がなくなったらと想像するだけで恐ろしい。

 こうした苦労をしたので、私が藤井基男さんの著書を参考にしたように、将来、私の仕事を引き継ごうという物好きな人が現れたときのために、各巻の巻末に参考文献を載せた。マンガの何ページが参考文献の何ページに基づいているかまで書いた異様に詳しいリストだ。「どうだ、まいったか」と読者をマウンティングする目的も兼ねていることは言うまでもない。あまりにも大変だったので、これくらいはさせてもらいたい。

〜制作秘話5(8/7掲載予定)に続く〜

 『マンガで読む 卓球ものがたり1』はコチラ
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