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 緊急事態宣言が解除されたとは言え、まだ感染拡大が収まらない7月上旬に石川佳純は対面取材に応じてくれた。もちろん、取材する側もヘアメイクの方も感染予防に気を配りつつ、3年ぶりの撮り下ろしの撮影とインタビューが始まった。その取材を彼女自身が心待ちにしてくれていた様子がなんとも嬉しい。

 過去の全日本選手権後の「チャンピオン・インタビュー」と違い、じっくり話を聞いていると改めて石川佳純の「素の部分」が見えてきて、興味深いものになった。先日放送されたNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』で紹介された石川とはまた別の顔も見えたような気がした。
「楽しく卓球をしたいけど、無理なんですよ。プロは勝つことが仕事なので、楽しく勝てることもあるけど、苦しく辛いことを乗り越えて勝たなければいけない。ただ、その過程を楽しみたいですね」(卓球王国最新号10月号)
 長く日本の女子卓球界のトップランナーとして走り続け、東京五輪に向かっている石川の言葉。13歳で全日本選手権ベスト4に入り、球界を震撼させた当時の卓球少女は天真爛漫だった。そんな明るさを残しながら、変貌したアスリートの言葉がインタビューの中に詰め込まれいる。

 1時間のインタビュー後に、彼女の美しい基本打法を撮影した。これほどの美しい打法を持っている選手は世界でも類を見ない。中学生時代の石川を取材した際に、ミキハウスの大嶋雅盛監督に「驚くほど左右のバランスが良い」という言葉を聞いたことがある。通常、卓球選手は小さい頃から利き腕だけを酷使するために左右のバランスが崩れ、それが打法に表れたり、故障の原因になることが多い。右利きの選手ならば、立った時に右肩が下がっていることが卓球選手では多い。それが身体の歪みを作り、腰や膝などを傷める原因になるのだが、石川は立ち姿を見ても左右のバランスが良く美しい。

 一方で、左右のバランスが素晴らしいゆえに、ボールもきれいな弧線を描きながら飛んでいく。つまり「クセ球」がない。相手からすれば、美しい球道ゆえに返球しやすいとも言えるかもしれない。これが対人競技の卓球の難しさとも言える。
 
 昨年の東京五輪代表レースを劇的な結末で終え、シングルスの代表権を得た石川佳純は、来年の東京五輪開催が決まらない中、どういう心境でいるのだろう。「オリンピックはあってほしいけど、それは私が決めることではない。でも、あるという前提で全力で準備をするし、そこに向けてモチベーションを保つことはできます」(卓球王国最新号)。

 不確実な東京五輪、想定する相手を卓球台の向こうに見つけられない日々。しかし、石川佳純の生き方はブレることがない。彼女にとって東京五輪は言葉にできないほど大事な大会ではあるが、五輪が彼女の選手生活の終点ではないからだ。
「いろいろやっても続かなくて、努力ができない人間なんだと小さい頃は思っていました。でも卓球に出合って、夢中になるものとして、のめり込むことを覚えたんです。頑張ったと言うより、楽しいから夢中になっていた。卓球が私にとっては巡り合えた一番のスポーツだった」
 夢中になれる、彼女の中での一番のもの。それが石川佳純にとっての卓球だった。
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