この人ほどスピーチのうまかった現役選手を知らない。
日本代表選手になると、壮行会や祝勝会、パーティーなどへの出席が多くなり、みんなそつなくあいさつをこなす。しかし、普通は定型的なものだ。
平野早矢香は18歳、社会人1年目で全日本選手権初優勝を決めた。当時、「卓球王国大賞」という選手や指導者を讃える賞を贈るための授賞式を開いていた。そこでの平野のスピーチは見事だった。淀みなく、本当に自然な語りで喜びを語っていた。語りだけではなく、思慮深く賢い選手という印象を強く持った。
インタビューのために久しぶりに会うなり、テンションがマックスの平野。近況を話す彼女の口が止まらない。「洋服選ぶの大変でしたよ。だって、今までいつもジャージだし、せいぜいあるのがスーツなんですから、ガハハ」。
メイクのREINAさんに、「すいません。正面を向いてくださいね」と言われるほど……。そして正面を向いたと思ったら、「今までメイクとかもしたことなくて、どうしたらいいんですかね、教えてください。#⁂⁑★☆&♥♧♣☂☃♨☞〠☎♫♬……」やっぱり止まらない。
これが素の平野早矢香。見事なスピーチをするのも平野早矢香。卓球の試合で鬼になっていたのも平野早矢香。
最新号を送るとお礼のメールがすぐに来た。知り合いの人が涙を流しながら読んだという彼女のインタビュー。
彼女の生き方には人を感動させる何かがあるのだろう。 (今野)*文中敬称略