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 本日1月6日に卓球の日本代表が男女3名ずつ発表される。
 過去に例がないほどの激しい代表選考で、2名のシングルス枠は男子の張本智和(木下グループ)と丹羽孝希(スヴェンソン)、女子の伊藤美誠(スターツ)と石川佳純(全農)が代表内定を確実にして、協会推薦の3番手は2番手を激しく争った水谷隼(木下グループ)と平野美宇(日本生命)になるだろうというのが大方の予想だ。

 3番手の選手は団体戦に出場し、個人戦の混合ダブルスに出る可能性もある。
 仮に水谷と平野が3番手となった場合、東京五輪を目指す日本の3選手は「史上最強」の代表チームになる可能性が高い。日本女子は、現在個人の世界ランキングをもとにした「世界チームランキング」で2位を維持。男子は2020年1月発表のランキングで2位から3位に落ちたが、東京五輪までに2位に戻すことができれば、東京五輪の団体戦では中国が第1シード、日本が第2シードとなるために、日本は中国とは決勝でしか対戦しない。 もちろん、男子のドイツ、韓国のように日本を脅かす強豪国はあるにせよ東京五輪のセンターコートでは「日中対決」で金メダルを争う可能性は高い。

参考までにロンドン、リオ、そして予想される東京五輪での卓球のメンバーの世界ランキングを書き出してみよう。
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2012年ロンドン五輪(大会時のランキング)
[男子]
水谷隼 WR5
丹羽孝希 WR18
岸川聖也 WR21

[女子]
石川佳純 WR5
福原愛 WR6
平野早矢香 WR23
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2016年リオ五輪(大会時のランキング)
[男子]
水谷隼 WR6
吉村真晴 WR21
丹羽孝希 WR22

[女子]
石川佳純 WR6
福原愛 WR8
伊藤美誠 WR9
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仮に3番手を水谷と平野と仮定した場合・・・
[男子]1月現在のランキング
張本智和 WR5
丹羽孝希 WR15
水谷隼 WR16

[女子]
伊藤美誠 WR3
石川佳純 WR9
平野美宇 WR11
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史上最強チームの卓球ニッポンになったのは偶然ではない。
東京五輪前の補助金を使えたことも重要ではあるが、それがすべてではない。1950年代から60年代にかけて、「卓球王国」と呼ばれ、黄金時代を迎えていた日本は、中国の台頭によって王座を奪われ、フットワークとフォアハンドに固執するプレースタイルは「時代遅れのステレオタイプ」と言われていた。男女ともに1990年代から2000年くらいまではメダルを獲得するのにも相当な苦労が必要で、中国からの帰化選手も助っ人として活躍した。

2002年に男子の中・高校生をドイツに送り込み、卓球留学をさせ、まず男子の卓球は変わった。そこで「世界で勝てるプレースタイル」を学んだ日本の若手が日本の卓球スタイルを急激に変革させた。そこから飛び出してきたのが水谷隼だった。この背景には、母体チーム(学校)、日本卓球協会、卓球メーカーによる三位一体のサポートがあった。
一方の女子は、まさに「福原愛効果」が牽引した。福原が卓球界のイメージキャラクターとしてマスコミやスポンサーの注目を浴び、実力を伴いながら、「福原チーム」というプライベートな強化チームを作り、協会とも摩擦を起こさずに、強化に努めた。福原に憧れた石川佳純や平野美宇、伊藤美誠が同じ手法でそれに続いた。

つまり、日本の卓球界は男女が異なるプロセスで強くなった。それに加え、ナショナルトレーニングセンターの設立によって、いつでもナショナルチームやトップ選手たちが集まって訓練する場所を得たことも重要であり、JOCエリートアカデミーによって、張本智和や平野美宇がそこから育っていった。つまり、日本が史上最強チームを作れた理由は、この20年間の中にあったのだ。

 史上最強の卓球ニッポンと言えども、中国の壁は厚い。ほかの競技を見ても、卓球の中国のような絶対的な強さを持った国はないだろう。
まさに1950年代、時の毛沢東主席が国威発揚として、同じアジアの日本が世界で勝てている卓球なら中国も勝てるはずだ、と卓球に力を入れ、その後、文化大革命の最中に、周恩来首相の計らいで国際舞台に卓球を復帰させ、1971年の「ピンポン外交」につなげた。まさに中国にとっての卓球は「国球」と呼ばれる、政治的なスポーツとなっていった。
 今の時代でもその根底には、卓球が世界で負けるわけにはいかないという日本人が想像できないほどの重責を中国の協会や選手たちは感じているはずだ。

 全日本男子の倉嶋洋介監督は12月の月刊「卓球王国」へのインタビュー(1月21日発売号に掲載)に、こう答えている。
「中国には隙がない。隙のあるようなチームだったら今までも勝っている。日本がこじ開けていくしかない。中国はリオ五輪の時よりもさらに強くなっている。でも、彼らを倒して金メダルを獲りたい、このまま負けて終わりたくない」
 王者・中国も「五輪史上、今回の日本は最強の相手となるだろう」と警戒している。
 日本は中国のとてつもない厚い壁にどんな穴を開けていくのか。史上最強の卓球チームはこれから7カ月間、こじ開ける穴を見つけ、勝機を見つけるための訓練に入る。
 日本の卓球界では12月に行なわれたITTFワールドツアー・グランドファイナルで、五輪代表レースにひとつの区切りをつけた。そして、明日1月6日に日本卓球協会は男女の五輪代表6名を発表する。

 代表争いが熾烈だったのは周知のとおりだが、五輪代表を争った卓球の日本男女の6選手のワールドツアーや大陸イベントへの出場した大会をカウントしてみた。張本智和(木下グループ)19、丹羽孝希(スヴェンソン)18、水谷隼(木下グループ)16、伊藤美誠(スターツ)17、石川佳純(全農)20、平野美宇(日本生命)21。日本以外の世界のトップクラスの選手でだいたい12から15の大会に参戦している。

 ヨーロッパとアジアを頻繁に往復し、時にはアメリカ大陸やオセアニアにも飛ぶ日本のトップ選手の大会参加数は他のどの協会よりも多い。もちろん、日本の五輪代表や世界選手権代表の選考基準に「世界ランキング上位者」が明記され、世界ランキングが国際競争力における日本代表のひとつの指標になっているので、世界選手権や五輪を狙う選手たちは世界ランキングを上げるためにワールドツアーに参戦する。 
 数年前から協会、そして所属チームなどが選手をサポートしているため、ワールドツアーのたびに日本からは大選手団が現地に乗り込む光景が日常化している。 

 2000年くらいまでは、日本卓球協会の強化予算も十分ではなく、代表選手に自己負担金が課せられていた時代と比べると隔世の感がある。それだけ、協会にもスポンサーが付き、JOC(日本オリンピック委員会)、JSC(スポーツ振興センター)からの補助金も下り、同時にトップ選手の経済的な状況も相当に良くなっている。

 ヨーロッパのプロ卓球リーグにはアジアやアメリカ、アフリカなどからもプロを目指す選手が集まってくる。しかし、ブンデスリーガなどのプロリーグが主な収入源の場合は、ワールドツアーに出たくても、生活のためにリーグ戦を重視するしかない。
 テニスと違うのは、一獲千金を夢見てツアーに挑むのではなく、卓球のプロ選手はプロフェッショナルとして、自分の生業のためにプロリーグに所属し、プレーすることが優先されているケースが多いことだ。ヨーロッパ選手や南北アメリカ、アフリカの選手たちは自分の協会の予算が十分でないためにワールドツアーに参加できない選手はたくさんいる。

 今後も世界ランキングを上げたい選手間で、お金を出せる日本、中国の卓球富裕国と、お金がないヨーロッパやほかの大陸選手との格差は広がっていくだろう。ランキングによる選手選考は一見、公平な競争力の指標にも見えるし、選手強化の手段のようにも見える。しかし、実際には経済力による参戦有無の不平等さがあるにも事実。 

 一方で、世界ランキングを重視して、参戦すれば強くなるのかと言えば、そうとも言えない。ワールドツアーの前からケガや故障をしないように、そして大会に照準を合わせれば合わせるほど「調整の練習」になってしまう。
 ワールドツアーで腕を磨き、世界ランキングを上げるための努力をすると同時に、どのように強化していくのか。そのバランスに選手たちは悩んでいる。 

 加盟協会が226となり、競技団体の加盟協会数としてはトップになった卓球。グローバルスポーツを標榜するにもかかわらず、その競技スポーツとしての実態はグローバルではなく、「アジアのスポーツ」に傾いている。 
 誰でも親しめる「ピンポン」が日本や中国だけでなく、世界の人々に楽しんでもらえるためには、世界ランキングとは別の物差しが卓球界に必要なのかもしれない。(今野)
 ITTFより2020年1月の世界ランキングが発表された。
 
 日本男子のトップは張本智和(木下グループ)の5位。女子は伊藤美誠(スターツ)が先月の4位から3位にアップし、2カ月連続で自己最高位の更新となった。

その他、気になるトップ選手の動向は

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2020年1月の世界ランキングを見る
http://world-tt.com/ps_player/worldrank.php
今月21日にカメイアリーナ仙台で行われた、2020年世界卓球団体戦(3月/韓国・釜山)の日本代表最終選考会だ。出場したのは、12月発表の世界ランキングで日本人の3位から8位までの6名に、1次選考会(10月22~23日/東京・赤羽体育館)の上位者3名、全日本大学総合選手権シングルス優勝者1名を加えた合計10名。この10名でトーナメント戦を行い、優勝者1名が出場権を得る。ちなみに、世界選手権には、今回の優勝者1名に、五輪出場者3名(1月6日に発表)、来年1月の全日本選手権の優勝者1名を加えた合計5名が出場する。五輪出場者が全日本選手権でも優勝するなど、複数の資格を重複して得た選手が出た場合には、日本卓球協会が不足人数分を推薦して5名とする。

かなり入り組んだ選考方法に見えるが、長年の試行錯誤によって、戦略と透明性のバランスを考慮して構築された選考方法だ。かつては戦略性だけで日本卓球協会が決定したり、逆に、全日本選手権1発の結果だけで機械的に決めたりした時代もあり、いずれにおいてもさまざまな不満や批判が巻き起こった。完全な選考方法はないのだろうから、かなりよく考えられていると思う。

最終選考会の位置づけは選手によって微妙に異なるが、勝ちたい気持ちは同じだ。全日本選手権での優勝は無理そうで、協会推薦も期待できない選手にとってはこれが唯一のチャンスだし、協会推薦が得られそうな選手にとっても、推薦による負い目や批判のない「自力での出場権獲得」への思いは強い。そこに選手ぞれぞれのドラマがある。

女子の選考会を見てあらためて感じたのは選手層の厚さだ。前週のグランドファイナルの女子ダブルスで優勝する快挙を成し遂げたばかりの長崎美柚(JOCエリートアカデミー/大原学園)が、1回戦で成本綾海(中国電力)に敗れた。「左利き」×「バック面表ソフト」という珍しい要素が二つも重なった選手だ。グランドファイナルで長崎のパートナーだった木原美悠にいたっては、1次選考会で6位となり(長崎は全勝1位)、最終選考会に出られてさえいない。石川、伊藤、平野といった誰もが知っているトップ選手の下には、紙一重の差でチャンスを狙っている選手たちがひしめいている。1本の差が選手人生を決める。

その中から決勝に進んだのは、過酷な五輪レースを戦い抜いた平野美宇(日本生命)と早田ひな(日本生命)だった。平野は、成本に苦しんで勝った後、昨年優勝の加藤美優に第6ゲームを17-15で取る劇的な勝利。加藤が号泣して会見ができなかったほど壮絶な戦いだった。一方の早田は昨年、その加藤に準決勝で最終ゲーム10-5から大逆転負けする地獄を見ており、なんとしても優勝したい大会。1回戦で橋本帆乃香(ミキハウス)、2回戦で佐藤瞳(ミキハウス)といった世界レベルのカットマン二人をドライブで粉砕して決勝に上がってきた。相手が五輪選手だろうが何だろうが絶対に勝ちたい。

しかし平野は強かった。そして力強かった。試合後に「もうポイントは関係ないので」「世界ランキングに関係ない試合なので」と幾度も語ったように、プレッシャーから解放された平野は、フォアハンド、バックハンドともに強烈なドライブを連発した。特に、バック側の遠いボールに対して、腕を延ばして体の外で打つバックハンドドライブには目を見張った。長く地道なトレーニングによる筋力なくしてはできない技だ。まだ五輪代表が決まっていない現状では、この大会の戦いぶりが選考にまったく関係がないとは言い切れないことは本人もわかっているはずだが、何より世界ランキングの呪縛から逃れられた安堵感があまりにも大きいのだろう。その結果、プレッシャーによって封印されていた平野のパワーが一気に噴き出した形だ。それほどのプレッシャーの中で平野が続けていた努力を思い、目頭が熱くなった。「結果よりも自分のプレーを優先することで良いプレーにつながることがわかり勉強になった」「追い込まれた状況でも今日のようなプレーができなければ勝てないことがわかった」と語った平野。五輪のシングルス代表は逃したが、熾烈な代表レースからもっとも大きな収穫を得たのは、もしかすると平野かもしれない。

なお、翌日行われたジャパントップ12では、準決勝で石川佳純(全農)を破り、決勝では惜しくも伊藤美誠(スターツ)に敗れた。

男子では、1回戦からいずれのコートでも高レベルのプレーが展開された。個々のラリーではすべての選手がファインプレーと言ってよいプレーをし、少し見ただけではどちらが強いかわからないほどだった。わずかな確率の差が勝敗を決めている印象だ。特に目を引いたのは、チキータをカウンターする技術の進化だ。かつて張継科に代表される中国選手が高速チキータをやり始めたとき、どんなサービスを出してもレシーブから攻撃されてしまうため、丹羽孝希など「サービスを出す意味がない」とまで語ったほどだった。ところが最近の男子の試合では、チキータに対するカウンターが普通に行われるようになり、よほど威力のあるチキータでなければ、戻りが遅れる分だけかえって不利を招き、下手をすると「チキータをする意味がない」と言いかねない状況だ。チキータをカウンターで打ち抜く場面がほぼすべてのコートで見られた。

森薗政崇(BOBSON)と神巧也(T.T.彩たま)の決勝はあまりにも劇的だった。気合たっぷりの神が積極的に森薗を攻め立て、ゲームカウント3-0とリードし、初の世界選手権出場に王手をかけた。一方の森薗は随所に良いプレーがあるものの波に乗れず、何度も自分の太腿を叩いて気合を入れた。そこから徐々に森薗の精度が高まり、大逆転で2年連続の優勝を果たした。会見では「(団体戦なので)どれだけ試合に使ってもらえるかわからないが、練習からベンチでの所作まで、徹底して日本のために尽くしたい」と力強く語った。昨年優勝したときに男泣きに泣いた森薗の姿はもうない。

初の世界選手権出場を目前で逃した神は、会見で涙を堪えきれず「プロになったのも世界選手権に出るためだった、すべてこのためにやってきた」と絞り出すように語るのがやっとだったが、最後には「全日本選手権で優勝すれば出られるのでチャンスが消えたわけではない」と前を向いた。張本智和、丹羽孝希らの怪物や天才が文字通り命かけで挑んでくる全日本選手権という更に厳しい舞台に神は最後の望みを託す。

卓球選手が人生をかけて挑む世界選手権。その檜舞台に立てる選手はほんの一握りだ。その陰に無数の選手たちの挫折と涙がある。それを目の当たりにした、心揺さぶられる最終選考会だった。

文=伊藤条太(卓球コラムニスト)
 準決勝、決勝と僅差の内容で勝ち切りトップ12初優勝を果たした伊藤美誠。この1年間、どんなコンディションでも勝ち切る実力をつけることに注力してきた成果を発揮した優勝だった。そして、勝負の五輪が控える2020年、伊藤のテーマは「無敗の女」だ。

●決勝の勝負どころは
伊藤「4ゲーム目に長いラリーを制して、お互いに必死というか、そこを取れたのは大きなポイントになりましたし、落としていても楽しんでやれてるなと思っていた。楽しんでいるけど、ハイになってしまうので、自分で自分を落ち着かせながら試合をした。自分のペースにできるように集中していた。
 もちろん自分で攻めて点数を取りたいんですけど、平野選手も自分の卓球をしてきて、私は1点を取ることに集中していた。攻めるばかりじゃなくて、守りやしのぎで点を取れるというのは大きなポイントにもなりますし、ジュースの場面でもそこで点数を取れていた。なんとしても1点という意地ですね。だんだんと足も動くようになってきて、今年最後の試合頑張ろうと思って試合をしていた」

●今年1年間を振り返って
伊藤「たくさん試合をこなして、試合数はものすごい多かったんじゃないかなと思います。ただ、それは自分が毎大会勝ち進んでいるということなので、そこはすごくうれしい。五輪の代表選考レースだったけど、リオの時とは違って楽しく、自分らしく、自分のことだけを考えて戦えたので、そこは成長したところ。来年のオリンピックまでも、目の前の1試合1試合をやり切って、自分らしく戦うことがもっともっと重要になってくると思う。しっかり実力をつけて、自信もつけて、負けない選手になりたいと思います。
 次の試合は全日本で3種目出場させてもらうんですけど、どの種目も目の前の試合に集中して楽しみたい。大会をこなしていくことで自分の実力も上がったと感じているので、もっと実力をつけて『無敗の女』になれれば良いなと思っています」

●無敗の女とは?
伊藤「根本に負けない選手になりたいというのがあって、最近ではどんな状況でも勝てるようになってきている中で、最終的には『無敗の女』だと思っています。だんだん負けないようにはなっているし、なるべく早くそうなりたいですけど、練習をこなして、試合で勝ってという過程があるので、世界選手権くらいには『無敗の女』になれるようにしたい。オリンピックもあるので、そこをテーマに頑張っていきたいと思っています」
 故郷・仙台で見事2年連続のトップ12制覇を果たした張本。優勝後の会見で口にしたのは、「出るからには負けたくない」という気持ち。そして地元への愛と五輪への抱負を語った。

●地元仙台での2連覇
張本「グランドファイナルが終わった後だからといって、少しでも試合を流すとか、負けても良いという気持ちがあるくらいなら、出ないほうが良いと思っている。出ることも決まっていたし、トップ12も国内の大事な大会なので、仙台の皆さんの前で勝ちたいと思っていた。
 前回も今回も仙台での開催で、こんな機会もなかなかないですし、その中で良いプレーができたと思っている。来年に向けて、仙台からまた良いスタートができるのは本当にうれしい」

●この1年間を振り返って
張本「今年の前半、夏くらいまで苦しかったけど、練習してきた成果が出てきて、10月以降は良いプレーができている。自分の世界ランキングも上がってきて、中国選手以外は格下になる厳しい立場で、あまり今年の前半はうまくいかなくて、負けては落ち込むの繰り返しだった。でも、実力もついてきて、10月以降は格下に負けることはなくなった。今日も2試合しかなかったんですけど、勝ち切れたことは来年につながると思う。
 普段の厳しい練習の中でメンタルも鍛えられたと思いますし、練習を毎日投げ出さずにやり抜いたことが、地道にメンタル、技術の成長につながったのかなと思います」

●東京五輪に向けて
張本「オリンピックはまだ経験したことがないので、雰囲気とかはわからない。でも金メダルを確実なものにするためには目の前の大会ひとつひとつで優勝していくことが、積み重ねとしてオリンピックにつながるのかなと思います。このまま2020年の8月まで突き抜けていきたいなと思います。
 来年は1年間通して、今年よりも笑っていられるようにしたい。まあ笑うためには勝つことが大事なので、今年よりも大きな成績を残せるように頑張りたいです」


 一方、決勝で敗れた丹羽も、落ち着いた語り口で五輪出場を争ったこの1年間、そして東京五輪に向けての抱負を述べた。

●今日の試合を振り返って
丹羽「準優勝ですけど、今日は2試合しかしていないので、自分の調子もわからないまま終わってしまった感じ。でも2位はうれしいです。今年は4度目の対戦でしたけど、今日が1番強かったですね。凡ミスが少なくて点がなかなか取れなかった。気持ち的にはリラックスして試合に臨めた。でも今日は張本くんが強すぎました。1ゲーム目は4点で負けて、いつもより強いと感じた。2ゲーム目はリードしていたけど、それを落としてからはやっぱり厳しかった」

●この1年間を振り返って
丹羽「この1年は国際大会だけでも20大会くらい出て、その中で7大会連続で1回戦負けがあって、そのあたりはすごく辛かった。でも11月の試合で結果が出せて、良い形でオリンピックの選考レースを終えられたかなと思います。7大会連続初戦負けの時はメンタル面が非常にきつくて、調子を戻せないままでも試合が続いていくので、その中で試合をしていった。スウェーデン、ドイツオープンでようやく1回戦を突破できて、苦労した積み重ねが良くなっていった要因かなと思います。
 (オリンピックが確定した心境は)ノースアメリカンオープンもグランドファイナルもぼくは出場していなかったので、決まった時の実感というのはあまりなくて、2、3日経つごとに喜びが沸いてきた。今年は五輪の代表になることだけが目標だったので、今は確実なものにすることができたのがうれしい。シングルスの代表になろうというのではなくて、(団体戦に出場する)3人目は(強化本部推薦なので)誰が選ばれるのかはわからない。だからシングルスに出たいというのではなくて、何としても2番手に入ることで、代表に選ばれないとうことを避けたかった」

●東京五輪に向けての意気込み 
丹羽「五輪の目標は団体戦でのメダル獲得。今日は張本くんにストレートで負けたけど、ぼくがもっと強くなって、団体で必ず勝てるような選手になれれば、日本がメダルを獲れる確率は高くなると思う。シングルスはリオはベスト8で負けてしまったのでメダルが目標ですけど、客観的に見てまだメダルを獲れる実力はないと思うので、もっと実力をつけて、堂々とシングルスでメダルが目標と言えるようにしたい」
【女子】
◆決勝
伊藤美誠(スターツ) -9、11、7、15、5 平野美宇(日本生命)

 女子決勝は激しいラリー戦を制した伊藤が初優勝。日本女子のエースが実力を見せつけた。
 1ゲーム目、伊藤が終盤までリードを奪って試合を進めたが6-9から平野が逆転。逆に2ゲーム目は平野がゲームポイントを握ったが、伊藤が打ち合いをものにしてゲームカウントをタイに戻す。3ゲーム目に入ると、伊藤はサービスを散らして平野のチキータを封じる。うまくコースを突いた攻めで2-1と伊藤がゲームをリードした。
 勝負を分けたのは、4ゲーム目か。両者譲らぬ展開で平野が先にゲームポイントも、伊藤がすぐに追いつく展開でジュースへ。平野が連打を打ち込み、伊藤が跳ね返す、激しい攻防となり、会場もヒートアップ。随所で表ソフトの変化でミスを誘った伊藤が第4ゲームを奪って王手をかけた。
 最終ゲームもラリー戦となったが、最後までプレーの精度が乱れなかった伊藤に軍配。試合後に両者が「楽しかった」と口にするほど白熱したラリー戦に打ち勝ってトップ12初制覇を果たした。
 優勝インタビューでは「2020年は『無敗の女』になりたい」と語った伊藤。年内ラストゲームをVで締めくくり、勝負の2020年に挑む。

●伊藤優勝会見
 「初優勝はうれしい。準決勝、決勝と1点取ることが苦しくて、どちらが勝ってもおかしくないような試合を勝ち切れたことは自信になった。今回はコンディションもそんな良くなくて、疲労もあったけど、『今日できること』をやり切りました。
 (決勝は)2ゲーム目の後半に良いラリーで点数が取れたので、そこから楽しくなってきて、笑顔だったり、笑えるようになってきて、自分に流れが向いてきたかなと思う。そこから1本1本取ることがどれだけ大事かわかりました。今日の試合はすごく考えられた試合だし、気持ちが落ちそうな時にキープできて、最後に自分のペースに持っていけたことが勝因かなと思います」
【男子】
◆決勝
張本智和(木下グループ) 4、9、8、5 丹羽孝希(スヴェンソン)

 男子優勝は張本! 五輪代表を確実にしている丹羽との決勝を制し、地元仙台でトップ12連覇を達成した。
 張本はスタートからエンジン全開。快速両ハンドが火を噴き、1ゲーム目を4点で奪うと、2ゲーム目は3-8から逆転で奪取。丹羽が攻める展開に持ち込んでも中陣からの逆襲、速さだけでなくパワーでも丹羽を押し込んでいく。丹羽もトリッキーなプレーやロビングで崩しにかかるも、張本の爆走は止まらず。試合後に「今日は張本が強すぎた」と語るなど、丹羽はお手上げ状態。「トモカズくん頑張れ!」の声援にも後押しされ、完勝でトップ12制覇を達成した。

●張本優勝会見
 「練習しないと勝てないと思っていたので、グランドファイナルが終わってからも休まずに練習してきた。疲れはありましたけど、なんとか持っている技術で優勝することができました。
 丹羽さんとは今年4回目の対戦で、いつもどうなるかわからない。2ゲーム目3-8から逆転できたのが決勝は良かったかなと思います。
 準決勝の1本目から仙台ジュニアクラブの後輩たちが声を出してくれて、一気に自分のプレッシャーもなくなった。そういう中でプレーできるのはありがたかったですし、優勝できてホッとしています。
 (優勝賞金300万円の使い道は?)特に欲しいものもないので、優勝できたことが賞金よりも今は1番かなと思います」
【女子】
◆準決勝
伊藤美誠(スターツ) 6、-1、-12、5、6、10 早田ひな(日本生命)
平野美宇(日本生命) 10、-13、7、7、-3、9 石川佳純(全農)

 女子準決勝1試合目は伊藤が苦しみながらも勝利。1ゲーム目は甘いボールも厳しいボールにもフォアで積極的に仕掛けて得点。しかし、2ゲーム目は早田の豪打が火を噴き1点で取り返す。3ゲーム目、先にマッチポイントを奪ったのは伊藤だったが、両ハンドを振り抜いた早田が逆転。精細を欠いたプレーが続く伊藤だが、勢いだけでは崩されないのが彼女の強さ。4、5ゲーム目はサービス、球質を変えながら得点を重ね王手。6ゲーム目は10-7から早田に追いつかれたが、最後は振り切って決勝へと進んだ。まだまだ本調子とはいかない様子の伊藤は、勝利にも苦い表情だった。
 昨日、世界選手権代表の座をつかんだ平野は宿敵・石川に勝利し決勝へ。1、2ゲーム目はお互い点差が離れずに1ゲームずつを奪い合う。3ゲーム目以降は石川にミスが目立ち、平野のサービスに苦しむ場面も多く、平野が3、4ゲームを奪取。5ゲーム目こそ石川らしい連続攻撃が入り出したが、6ゲーム目も積極的な攻めを貫いた平野が勝利。伊藤の待つ決勝へと勝ち進んだ。
 昨日より宮城・カメイアリーナ仙台で開催されている第24回ジャパントップ12。2日目の今日は昨日の世界選手権代表選考会の1、2位と五輪シングルス代表に確定している2名を加えたトーナメントで優勝を争う。

【男子】
◆準決勝
張本智和(木下グループ) 3、5、4、7 神巧也(T.T彩たま)
丹羽孝希(スヴェンソン) 5、4、-9、-8、3、7 森薗政崇(BOBSON)

 今日の第1試合には地元仙台出身の張本が登場。昨日の代表選考会2位の神を相手に、ワンサイドゲームを見せる。1ゲーム目の0-0からサービスエースを2本奪うなど、サービス・レシーブで翻弄し、快速強打を叩き込む。神が打ち込む展開に持ち込んでも、前陣で落ち着いてブロックし、振り回してシャットアウト。試合中盤から神が苦笑いを浮かべるほどの快勝で、わずか24分で試合を終わらせて決勝進出を決めた。
 2試合目は青森山田、明治大の先輩・後輩対決。1、2ゲーム目は攻めのミスが目立つ森薗に対し、丹羽が速攻、カウンターを浴びせて連取。しかし、昨日の代表選考会決勝を大逆転で制した森薗も丹羽のお株を奪うような速い攻めを見せて2-2と食らいつく。しかし、丹羽も動じず。5ゲーム目は攻め急ぐことなくミスを誘うようなプレーにシフト。6ゲーム目も打つボールをしっかり選んで得点を重ね、準決勝突破。昨日の会見で「五輪選考レースを勝ち抜いて、丹羽さんのプレーがどう変わっているか楽しみ」と話した森薗に、先輩の貫禄をみせつけた。