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 日本の卓球界では12月に行なわれたITTFワールドツアー・グランドファイナルで、五輪代表レースにひとつの区切りをつけた。そして、明日1月6日に日本卓球協会は男女の五輪代表6名を発表する。

 代表争いが熾烈だったのは周知のとおりだが、五輪代表を争った卓球の日本男女の6選手のワールドツアーや大陸イベントへの出場した大会をカウントしてみた。張本智和(木下グループ)19、丹羽孝希(スヴェンソン)18、水谷隼(木下グループ)16、伊藤美誠(スターツ)17、石川佳純(全農)20、平野美宇(日本生命)21。日本以外の世界のトップクラスの選手でだいたい12から15の大会に参戦している。

 ヨーロッパとアジアを頻繁に往復し、時にはアメリカ大陸やオセアニアにも飛ぶ日本のトップ選手の大会参加数は他のどの協会よりも多い。もちろん、日本の五輪代表や世界選手権代表の選考基準に「世界ランキング上位者」が明記され、世界ランキングが国際競争力における日本代表のひとつの指標になっているので、世界選手権や五輪を狙う選手たちは世界ランキングを上げるためにワールドツアーに参戦する。 
 数年前から協会、そして所属チームなどが選手をサポートしているため、ワールドツアーのたびに日本からは大選手団が現地に乗り込む光景が日常化している。 

 2000年くらいまでは、日本卓球協会の強化予算も十分ではなく、代表選手に自己負担金が課せられていた時代と比べると隔世の感がある。それだけ、協会にもスポンサーが付き、JOC(日本オリンピック委員会)、JSC(スポーツ振興センター)からの補助金も下り、同時にトップ選手の経済的な状況も相当に良くなっている。

 ヨーロッパのプロ卓球リーグにはアジアやアメリカ、アフリカなどからもプロを目指す選手が集まってくる。しかし、ブンデスリーガなどのプロリーグが主な収入源の場合は、ワールドツアーに出たくても、生活のためにリーグ戦を重視するしかない。
 テニスと違うのは、一獲千金を夢見てツアーに挑むのではなく、卓球のプロ選手はプロフェッショナルとして、自分の生業のためにプロリーグに所属し、プレーすることが優先されているケースが多いことだ。ヨーロッパ選手や南北アメリカ、アフリカの選手たちは自分の協会の予算が十分でないためにワールドツアーに参加できない選手はたくさんいる。

 今後も世界ランキングを上げたい選手間で、お金を出せる日本、中国の卓球富裕国と、お金がないヨーロッパやほかの大陸選手との格差は広がっていくだろう。ランキングによる選手選考は一見、公平な競争力の指標にも見えるし、選手強化の手段のようにも見える。しかし、実際には経済力による参戦有無の不平等さがあるにも事実。 

 一方で、世界ランキングを重視して、参戦すれば強くなるのかと言えば、そうとも言えない。ワールドツアーの前からケガや故障をしないように、そして大会に照準を合わせれば合わせるほど「調整の練習」になってしまう。
 ワールドツアーで腕を磨き、世界ランキングを上げるための努力をすると同時に、どのように強化していくのか。そのバランスに選手たちは悩んでいる。 

 加盟協会が226となり、競技団体の加盟協会数としてはトップになった卓球。グローバルスポーツを標榜するにもかかわらず、その競技スポーツとしての実態はグローバルではなく、「アジアのスポーツ」に傾いている。 
 誰でも親しめる「ピンポン」が日本や中国だけでなく、世界の人々に楽しんでもらえるためには、世界ランキングとは別の物差しが卓球界に必要なのかもしれない。(今野)