朱世赫は、卓球界ではいわゆる「カットマン」と呼ばれる戦型だ(女性でもカットマンという)。基本的には守備を主体として、台から離れて、相手のボールが空気抵抗で遅くなったところで打球をする。もちろんそれだけでは勝てないので、ボールにバックスピンをかける。このボールは普通に打つと全部下に落ちてしまうので、相手は、ラケットを激しく上に振らないと返せない。そこでカットマンは、バックスピンの回転量に差をつけることで相手のミスを誘うのだ。その回転量は、先日計測された結果では、日本の渋谷浩が120回転/秒を記録した。1分間に7200回転だ。これとゼロ回転を打ち方とラバーによって操って、相手のミスを誘う、または攻撃の糸口をつかむのが、カットマンという戦型なのだ。
一方、攻撃選手が放つドライブの回転量は、これまで計測された最高は、スウェーデンのアペルグレンで169回転/秒。1分間に10000回転。これほどまでの回転の攻防がスピードとボールコントロールと同時に行われているのだ。
ただ、ドライブの場合はその目的が速いボールを入れるため(ボールの軌道が山なりになるため)であることと、全身打法なので、回転量に差をつけるということはあまりしない傾向にある。日本の水谷は、それを操る数少ない選手であり、ゆえに天才と呼ばれる。今日の試合でも、水谷の「回転をかけたふりをして実はゼロ回転」というドライブをして、相手がネットにかけるミスをするシーンがあるはずだ。
そのあたりも見所だ。