スマホ版に
戻る

中国リポート

トップニュース中国リポート
 先月末、福建省の新聞にこんな記事が掲載された。
『9歳の少年をはじめ、福州市を訪れるトウ亜萍と「卓球がしたい」という200名を超える応募者の中から、抽選で男子25名・女子7名・少年8名が選ばれた。この3組でそれぞれ予選が行われ、優勝者3名は、これもまた抽選で選ばれた100名の観衆の中で、晴れてトウ亜萍とプレーする権利を得る』。

 引退してすでに10年、いまだにこれほどの求心力を持つトウ(登+おおざとβ)亜萍(デン・ヤァピン)。北京五輪を前に、再びマスコミへの露出も増えている。「トウ亜萍ってどんな選手だったの?」と聞かれたら、迷わずこう答えたい。「史上最高の女子卓球選手」だと。そして、少し時代は遡るが、この卓球史に永遠に残るであろうひとりの女子選手を、少し紹介してみたくなった。
 昔話ではあるが、興味のある方はお付き合い願いたい。

 トウ亜萍は1973年2月6日生まれ、湖南省新寧市の出身。生まれて間もなく両親とともに河南省に移住、父親の手ほどきで5歳から卓球を始めた。1983年にわずか10歳で河南省チーム入りすると、88年には15歳で早くも国家チームのメンバーに選出。初出場の89年世界選手権ドルトムント大会で女子ダブルスに優勝したのが初の世界タイトルだ。
 ここから97年マンチェスター大会を最後に引退するまで、世界選手権で9個のタイトルを獲得し、女子シングルスでは91年千葉、95年天津、97年マンチェスターの3大会で優勝。さらに92年バルセロナ五輪、96年アトランタ五輪で単複とも金メダルに輝き、五輪ではなんと一度も負けていない。ワールドカップやワールドダブルスカップ、ワールドチームカップも含めると、全部で18個の世界タイトルを獲得している。まさに90年代を代表する卓球界のスーパーヒロインだった。

 タイトルを例に出してしまえば、トウ亜萍より評価に値する人は他にもいる。5月の世界選手権ザグレブ大会で20個目の世界タイトルを手にした王楠(中国)がいる。不滅の世界選手権6連覇の記録を持つロゼアヌ(ルーマニア/故人)もいる。しかし、トウ亜萍の凄さというのは、人一倍どころか三倍、五倍の努力で体格面の不利をカバーし、他の誰にも真似できない独創的な卓球を築き上げた点にある。

Photo上:92年バルセロナ五輪表彰。「小さな女帝」は圧倒的な強さで金メダルを獲得した
Photo下:汚くてすみませんが、『卓球王国』14号のハイテク解剖『トウ亜萍の速攻』から。トウ亜萍の『トウ』を確認してください