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中国リポート

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 今、中国版グーグルで「トウ亜萍(Deng Yaping)」という名前を検索してみると、関連するキーワードの一番上に出てくるのは「トウ亜萍 去向不明」というワード。「去向不明」とは行方不明のこと。昨年8月に検索エンジン「人民捜索」のCEOを退任した後、トウ亜萍には失踪説が流れ、香港などのマスコミから「この2年あまりの間に20億元(約340億円)を浪費し、ほとんど収益を上げられなかった」という情報が伝えられた。多額の資金を浪費して雲隠れした、と言わんばかりの報道がなされていた。
 20億元という数字には誇張があり、実際には2億元程度という関係者の証言もあるようだが、トウ亜萍が検索エンジン「即刻」を軌道に乗せられなかったのは事実だ。『第一財経日報』の報道によれば、トウ亜萍は現在も人民日報社の副秘書長として、普通に勤務しているという。

 昨年11月、『21世紀経済報道』では次のようなトウ亜萍の発言が紹介されている。「私たちは国家の代表です。『百度(大手検索エンジン)』は私たちを打ちのめすのではなく、手を差しのべるべき。私たちにとって一番大事なのはお金を稼ぐことではなく、国家としての責務を果たすことなのだから」。
 これがトウ亜萍の真意であるかどうかはともかく、社会一般から見れば相当「ズレている」発言と受け取られてもしかたない。抜群の知名度をもってしても、後発の検索エンジンを軌道に乗せるというのは、あまりに畑違いの仕事だったのかもしれない。「卓球界の女王も、スティーブ・ジョブズにはなれなかった」と書いたマスコミもあるが、当たり前の話だ。

 中国のネットの世界を覗(のぞ)いてみると、トウ亜萍への中傷や雑言が散見される。社会の不公平感が強まる中国では、成功者ほど風当たりも強い。事の全容がなかなか見えてこないトウ亜萍の失脚事件、続報があったらまたお伝えします。