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リオ五輪

 日本卓球界史上初のシングルスでのメダルを懸けて、3位決定戦に挑んだ水谷隼。相手はサムソノフ(ベラルーシ)。近年は負けていない相手だが、準々決勝でオフチャロフ(ドイツ)を破ってきているだけに、調子の良さが伺える。勝てばお互いに初のメダル、気合いが入らないわけがない。

 試合は序盤から水谷が好調。守備から入るサムソノフは、水谷に打たせてくれる攻めやすい相手だ。準決勝の馬龍のようなボールの厳しさはなく、先手を奪ってラリーにすれば水谷のペースに引き込める。第1ゲームでは9−3と水谷が大きくリード。そのままゲームを奪った。

 第2ゲームに入ると守備一辺倒だった皇帝が牙をむく。水谷のボールを読み、前陣で止めていく。水谷は同じ攻めをしても点数をリードできず、点数が離れない。8−9でロビングを我慢の連打で打ち込み、9−9でバックのプッシュとフォアドライブの速攻を決めて、水谷がゲームポイントを握った。最後はやや長くなったストップに対し、サムソノフがダブルストップミス。このゲームも水谷が奪った。

第2ゲームが終わり、インターバルに両者はウェアを着替えた。一時コートを離れ、冷静になれる時、一体何を模索する。少なくともサムソノフは変えてくるだろう。

第3ゲームはサムソノフの攻撃が多くなっていく。バックで守っているだけではない。押して、伸ばして、水谷のバックサイドを執拗に攻めていく。エッジボールもサムソノフに味方し、水谷はこのゲームを失った。

次のゲームが勝負だろう。2−2になるか、3−1になるか。ここが大きな分かれ道。
攻めの姿勢を崩さず、サービスも変え、水谷が4−1とリードする。
いつものサムソノフならば、このカウントで受け身に回り、やや諦め気味になる。しかしここは五輪の舞台だ。ここから3ポイント連取し、ガッツポーズが飛び出す。4−4、点差はまたも離れない。

息を吹き返した皇帝に対し、水谷は力でねじ伏せていく。甘いボールは見逃さず、6−4のカウントではレシーブからバックハンドを振り抜いた。
優位に進め、9−5とリードを奪ったが、ここからサムソノフが息を吹き返して9−8。ここで邱建新コーチがタイムアウトを取った。しかし、9−9に追いつかれ、そのままサムソノフが逆転し、9−10。5連続ポイントでゲームポイントを握った。10−10、10−11、11−11、11−12。常にサムソノフが王手をかける状況。その都度、水谷はフォアで無理矢理打つのではなく、バックドライブでピンチをしのぐ。かつては連続で打てなかったバックハンド。今ならどこからでも打てる。
13−12、水谷がゲームポイントを握った。しぶとくロビングで返し続け、最後はエッジボールでポイント。台に入れ!と願った執念がボールに乗り移ったのか。

迷いがなくなった水谷。あとは攻めるだけだ。一本決めるたびにメダルへのガッツポーズ。10−7、ついにマッチポイント。
最後のポイントは、3球目フォアドライブがサムソノフのバックミドルに突き刺さった。ゲームセット。
床に倒れ込み、拳を天に挙げ、何度もガッツポーズを見せた水谷。

日本卓球界悲願のメダル。
史上初の五輪シングルスのメダル。
水谷は「卓球を始めた時からの夢だったので本当にうれしい」とコメント。

おめでとう、そして感動をありがとう。
表彰式で胸にかけた銅メダルは水谷の笑顔とともに輝いていた。