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リオ五輪

 これまで世界選手権や五輪では、なぜか対戦がなかった宿命のライバルふたり。張継科と馬龍は、リオ五輪男子シングルス決勝という最高の舞台で相まみえたが、その結果は意外なほどのワンサイドゲームに終わった

 第1ゲーム、4ー8のビハインドから9ー8と逆転した張継科が、11ー10、12ー11と2回のゲームポイントを握る。しかし、12ー11の場面で勝負にいった台上バックドライブは空振り。14ー12で馬龍にゲームを先取された。「第1ゲームを取っていれば、試合全体の流れは違ったものになっただろう」と試合後に張継科は語った。

 第2ゲームは馬龍が6ー2から9ー4、11ー5。10ー5から、ネットインした張継科のバックフリックを、目にも留まらぬフォアドライブで打ち抜く。第3ゲームも張継科3ー2のリードから馬龍が5ー4と逆転し、8ー4の場面ではバッククロスの強烈なフォアドライブの打ち合いを制した。抜群の読みとフットワークを見せる馬龍。結局、5ー4からの6点連取で、馬龍が金メダルに王手をかける。

 張継科は心身の状態によって、パフォーマンスが大きく変わる選手だ。総合的な技術力では馬龍が一段上だが、張継科は大舞台になるほどいわゆる「ゾーン」状態に入り、天性の勝負勘と研ぎ澄まされた予測能力で、対戦相手をコントロールしてきた。しかし、決勝での張継科は最後までゾーンに入ることがなかった。右肩や腰など、多くの故障を抱える張継科。どこか古傷が痛むのではないかと思えるほど、動きにキレがなかった。もっとも、馬龍の動きが良すぎて、そう見えた部分もあるのだろうが……。

 第4ゲームに入っても、張継科の返球を完璧に読み、フォアのカウンタードライブを連発する馬龍。3ー0から7ー3、8ー4とリード。9ー4でブロックからバックハンドのパワードライブを振り抜き、勝利を確信したように咆哮。最後は10ー4のチャンピオンシップポイントで、連続フォアドライブからフォアクロスへ強烈なパワードライブで打ち抜いた。

 試合後の記者会見では、「張継科とは小さい頃から一緒に成長してきて、長い間ライバルであり、兄弟のような関係だった。ここ数年、中国チームで最も成績が良かったのは彼だ。ぼくにとっての目標であり、成長するためのパワーの源でもあった」と語った馬龍。水谷戦は中国の首脳陣をヒヤリとさせただろうが、決勝で見せたプレーは完璧だった。ジュニア時代から将来を期待されながら、メンタルの弱さを指摘され続けた男が、五輪決勝という大舞台で最高のプレーを披露した。
  • 会見でしみじみと語る水谷

  • これが最後のオリンピックと言われる張継科

  • 悲願を成就した馬龍