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中国リポート

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 全中国選手権の女子団体戦で、個々のレベルの高さで優勝を決めた遼寧省。しかし、王楠・郭躍・常晨晨というレギュラー3人はいずれもサウスポー。ダブルスが右と左で組めないことから、超級リーグでもダブルスが最大の課題となっている。もし遼寧省出身である李暁霞が山東省に移籍していなければ、郭躍/李暁霞という若手最強ダブルス、そして王楠・郭躍・李暁霞というドリームチームが完成していた。同様に男子チームも選手の流出がなければ、馬琳・馬龍・張超・王建軍らが揃う強豪チームになっていただろう。

 中国では現在、スポーツ選手が登録する省・市を移籍することが珍しくない。2005年には国家体育総局が「全国運動員注冊与交流管理法(全国のスポーツ選手の登録および交流管理法)」を施行。人材の交流を促進して、全国での均等なスポーツの発展を狙ったものだが、結果的には一流選手のスカウト合戦を招いている。
 また、北京市、上海市といった中国の都市部では一人っ子政策の影響で、両親がスポーツより学業を重視するようになり、才能のある少年選手の発掘が難しくなっている。そこで地方から有望な少年選手を引き入れて育成するケースが増えてきた。遼寧省出身の馬琳・劉詩ブンは、少年時代にコーチとともに広東省に移籍し、同じく馬龍も、北京市のコーチにスカウトされて遼寧省を離れている。
 逆に選手のほうから都市部の体育学校・卓球学校を受験するケースもある。もちろん、「より良い環境を求めて」というのが最大の理由だが、もうひとつの側面がある。中国には都市籍と農民籍というふたつの戸籍があり、都市籍を持っていれば医療費や年金など多くの面で優遇される。農村部の人たちにとっては、都市籍の獲得はかなり困難なのだ。子どもを北京市など都市のチームに入れ、都市籍を獲得させようとする親がいるのも不思議ではない。
 才能ある選手が特定の強豪校・チームへ一極集中する状況は、中国も日本と変わらない。しかし、その裏には日本とはまた違った、中国ならではの事情があるようだ。

Photo:遼寧省からの流出組のひとり、山東省チームのエース・李暁霞