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中国リポート

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 10月31日、ITTF(国際卓球連盟)は6月の中国オープンの男子シングルス2回戦をボイコットした、馬龍・許シン・樊振東の3選手に対して、それぞれ2万ドルの罰金を課すことを発表した。中国卓球協会はその日のうちに、以下のような文章を発表し、国際卓球連盟からの処罰を受け入れることを表明している。

 「北京時間の2017年10月31日、国際卓球連盟は中国・成都での中国オープンで試合をボイコットした3名の選手、馬龍・許シン・樊振東に対してそれぞれ2万ドルの罰金を課し、今後は国際卓球連盟の規定を遵守すること、イメージアップを図り、良き模範となることを求めた。

 中国卓球協会は国際卓球連盟の意向を尊重し、それに従うとともに、その提案を支持する。中国卓球協会は真摯に教訓を汲み取り、さらに国家チームの思想・行動規範を強化するとともに、愛国主義、集団主義教育を推し進める。
 中国卓球チームの『艱苦創業(苦労して新しい事業を始める)』『頑強併搏(粘り強く努力する)』『為国争光(祖国のために栄光を勝ち取る)』の精神を広く伝え、高揚させるとともに、社会主義の核心となる価値観の模範となり、優秀な成績を収めることを自らの責任として、社会各界からの支持と厚情に応えられるよう務めていく」


 まるで数十年も昔の文章のようで、読む気にもならない。中国代表として国際大会に出場しながら、試合をボイコットした3名の選手たちに対し、彼らはあくまでも「アンダー・ザ・コントロール」、国家(中国共産党)の支配下にあるということを強調する文章だ。
 今、中国では国から卓球界への政治的な圧力が大きい。昨日開幕したスーパーリーグに関しても、ようやくニュースが流れるようになったものの、スーパーリーグ関連の報道は控えるよう要請があったという。

 国家体育総局の権力闘争の一端だった、今回のボイコット事件。結果的に国に反旗を翻した形になった3選手が、選手本人にその意思はないにせよ、インターネット上で「英雄」に祭り上げられるという可能性もゼロではない。ITTFの処罰に対する、異例なほど早い今回の声明も、ボイコット事件への「火消し」のように感じられる。

 先日閉幕した、5年に1度の中国共産党の全国代表大会。国家の中枢を担う186名の中央委員のリストに、中国卓球協会会長である国家体育総局の蔡振華副局長の名前はなかった。過去2回、中央委員の候補委員だった蔡振華は、規定によって再び候補委員になることはできず、中央委員への道も閉ざされた。

 そして今回、中央委員となったのは蔡振華の「政敵」である苟仲文局長。権力闘争はひとつの決着を迎え、今後の中国卓球界にも大きな影響を与えるだろう。今回発表された文章を見る限り、その前途には暗雲がかかり始めている。