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中国リポート

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 4月6日、フランス・ナントで行われていた北京五輪ヨーロッパ大陸予選が終了。男女で11名が代表権を獲得したが、女子はなんと11名中7名を中国からの帰化選手が占めた。予選通過を決めた中国系選手は以下のとおり。

リー・ジエ    李潔    (オランダ)
フー・メレク   候美玲   (トルコ)
シェン・イファン 羨宜芳   (フランス)
シュー・ジエ   徐潔    (ポーランド)
リ・チャンビン  李チャン冰 (オーストリア)
ジュ・ファン   朱芳    (スペイン)
タン・ウェンリン 譚文玲   (イタリア)

※李チャン冰のチャンは女+薔の草冠以外

 ヨーロッパ大陸予選を通過した7名のうち、ふたりの選手に少しスポットを当ててみよう。
 2月の広州大会・準々決勝のシンガポール戦では右足首を捻挫し、涙の途中棄権となったリー・ジエ。負傷からわずか1カ月にも関わらず、危なげなく予選通過を決めた。現在23歳の彼女は四川省・成都市の出身で、陳龍燦(88年ソウル五輪複金メダリスト)、成応華(00年シドニー五輪アメリカ代表)に続く、四川省が生んだ3人目のオリンピック卓球プレーヤー。7歳から卓球をはじめ、16歳からオランダのクラブ・デンヘルデルでプレー、昨年末にオランダ国籍を取得している。長身の右カット主戦型で、今年1月のスロベニアオープンではコチヒナ(ロシア)と組んだダブルスで優勝を果たした。

 予選最終日に出場権を獲得したリ・チャンビンは北京市の出身。早くから国家チームのメンバーに選ばれ、99年にはアジアジュニア選手権準優勝。01年の第9回全中国運動会では、張怡寧・郭炎とともに北京市チームを26年ぶりの優勝へ導いている。2002年にオーストリアに渡って代表の座を掴み、プロツアーなどにも積極的に参戦中だ。
 実は彼女の父親は、現在国家男子チームで王励勤らの担当コーチを務める李暁東。リ・チャンビンが国家チームに入った時、女子チームを教えていた李暁東は余計な疑いをかけられないように、娘とは全く会話を交わさなかったそうだ。それが彼女がオーストリアに渡った理由のひとつかもしれない。

 中国系選手の上位独占に、欧州の卓球関係者は危機感を募らせているだろう。特に女子は非常事態と言うほかない。呼吸困難で窒息寸前、という印象を受ける。
 …ただ、中国からの帰化選手が何の苦労もなく、各国の代表枠を手中にしているわけではない。リー・ジエの母親は言う「オランダに渡った当時の娘は言葉も通じないし、ひとりの友達もいなかった。ただひたすら卓球をしていた。娘はプレーヤーとしての道のりを、いつもひとりで歩んできた(出典:成都晩報)」。強い中国系選手の存在が非常事態なのではなく、欧州卓球界が中国への闘志を失いかけていることが非常事態なのだ。

Photo上:実はもう既婚者であるリー・ジエ。23歳にしてはかなりの落ち着きぶり
Photo下:シェーク両面裏ソフト攻撃型のリ・チャンビン