スマホ版に
戻る

中国リポート

トップニュース中国リポート
 トピックスでもお伝えしたが、4月10日、国際オリンピック委員会(IOC)は理事会で帖雅娜と林菱(ともに中国香港)の五輪出場資格を承認した。04年アテネ五輪にも出場していること、またパスポート取得が間近であることが主な理由だ。一方で、アジア五輪大陸予選を通過した張瑞については、出場資格が認められなかった。
 選手の五輪出場についての決定権を持つIOCが最終判断を下したことで、香港の3選手の出場問題は一応の決着を見たことになる。中国香港オリンピック委員会としては、霍震霆会長が北京でIOCのジャック・ロゲ会長に「特赦(とくしゃ)」を求めるなど、IOCへの積極的な働きかけが実った形だ。

 ハンガリーで行われる五輪最終予選に出場する帖雅娜と林菱。両選手の実力を持ってすれば予選通過はほぼ確実だ。国際卓球連盟(ITTF)から自動出場権を剥奪され、自らのブログで「非常に憤慨しているし、理解できない思い」とその心情を吐露していた帖雅娜。29歳の帖雅娜、31歳の林菱にとって、ラストチャンスとも言える大会だった北京五輪だけに、出場が認められてひと安心だろうが、チーム内でハッキリ明暗が別れては手放しでは喜べないだろう。

 それにしても、今回の中国香港選手の出場資格騒動には、多くの疑問がつきまとう。まず、香港はなぜ1997年の中国への返還後も、IOCへの加盟を続けているのだろうか。
 1952~1996年まで、イギリスの海外領土としてIOCに加盟していた香港。現在でもイギリス領時代から培ってきた文化や風土があり、大幅な自治権を持つ特別行政区として、中国とはある程度独立した存在となっている。しかし、国内オリンピック委員会(NOC)は原則として1カ国につき1つしか認められないはずだ。台湾が「チャイニーズタイペイ」としてIOCに加盟しているのには、「正統な中国」の座を巡る長い闘争の歴史があるが、香港が「HONG KONG, CHINA(中国香港)」としてIOCに加盟を続ける必然性は感じられない。

 IOCには中国香港の他にも、イギリスなどの海外領土が個別にIOCに加盟している(英領ヴァージン諸島・アメリカ領サモアなど)。しかし、遥かに離れた本国での選手選考に加わるのが難しいこれらの島々と違い、香港は中国・広東省の一部。中国香港オリンピック委員会は、中国オリンピック委員会と一本化するのが望ましい。なにしろ中国香港の選手が優勝しても、オリンピックの表彰式で流れるのは中国の国歌「義勇軍行進曲」なのだ。加えて卓球競技では、元中国選手に対する勝利者操作の疑惑が、中国香港という存在に微妙な影を落としている。

(その2に続く)

Photo:世界最終予選に出場する帖雅娜(上)と林菱(下)。両選手が最終予選を通過すれば、これに柳絮飛を加えた中国香港女子チームは、日本女子にとっても相当な強敵になる