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中国リポート

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 4月28日、スペイン五輪委員会は北京五輪でスペイン選手団が着用する公式スーツ・ユニフォームを首都マドリッドで発表。情熱の国らしい真紅のスーツに身をまとい、この席上に姿を現したのが御年45歳の何志文だ。
 すでに今年1月、世界ランキングによる自動出場枠を獲得し、五輪出場を決めている何志文。五輪を直前に控えた現在でも、練習時間は1日1時間程度だという。それでいて、欧州のトップ選手のパワードライブをいとも簡単にブロックしてしまうのだから、ある意味では驚愕(きょうがく)のセンスの持ち主だ。04年アテネ五輪では決勝トーナメント1回戦でブラシュチック(ポーランド)にゲームオール9本で惜敗しているが、北京五輪ではどこまで勝ち上がるか。観客からも大きな声援を浴びるだろう。

COLUMN- 北京五輪へ外堀を埋めにかかる「李寧」

 今回の公式スーツ・ユニフォーム発表会に先立って、昨年7月にスペイン五輪委員会とオフィシャルサプライヤー契約を結んだのは、中国の「李寧(リィニン)」。これまでに中国リポートでもたびたび取り上げているが、84年ロサンゼルス五輪・体操競技で3枚の金メダルを獲得し、「体操王子」と言われた李寧氏が立ち上げた大手スポーツメーカーだ。

 3年前、アディダスやナイキと北京五輪のオフィシャルパートナーの座を争った李寧だが、05年1月にアディダスが50億円以上と言われる巨額の提示によってパートナーの権利を獲得。中国選手団ががセレモニーで着用する公式ウェアや、大会役員・ボランティアのユニフォームはアディダスが担当する。一方、ナイキもそれに対抗するべく、中国から北京五輪に出場する28競技のうち、22競技の協会とウェアのサプライヤー契約を締結した。
 母国で開催される歴史的な五輪にも関わらず、役員や選手たちは海外の有名ブランドを身にまとう。当時はまだ現在ほどの資金力がなかった李寧は、はやばやと本丸を乗っ取られてしまったのだ。

 そこで李寧は、中国国内では卓球や体操、射撃に飛び込みなど、金メダル獲得が有力視される競技のスター選手とスポンサー契約を結び、五輪ムードに乗じて「アンブッシュ・マーケティング(タダ乗り広告)」を展開。さらに中国中央電視台(CCTV)とも契約を結び、スポーツニュースに登場するキャスターや記者は、李寧のロゴが入ったジャケットやシャツを着用するようになった。これらの広告活動の成果か、中国では李寧を五輪のオフィシャルパートナーと誤認している人がほとんどなのだとか。

 一方で、李寧は他の国の五輪委員会とも、矢継ぎばやにスポンサー契約を締結。上で述べたスペイン五輪委員会に加え、すでにスイスやスウェーデンの五輪委員会とも契約している。その他にもアルゼンチンバスケットボールチーム、ベトナムサッカーチーム、そしてアメリカ卓球チームなど代表チームとの契約も数多い。
 乗っ取られたかに見えた本丸に陽動作戦をかけ、海外の五輪委員会と手を結ぶことで外堀を埋め、巨大スポーツメーカーに対抗している李寧。その株式時価総額では、すでにナイキ・アディダス・プーマに次ぐ世界第4位のスポーツブランドに成長している。

Photo:広州大会会場に設置された李寧のブース