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中国リポート

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Lesson.3 チームは省の代表? それとも企業チーム?

 超級リーグは日本のプロ野球や、スペインのリーガ・エスパニョーラ(サッカー)のようなプロリーグなのだろうか?
 答えは「No」だ。超級リーグの主催は中国卓球協会で、放映権や広告に及ぶまで、すべてを管理下に置いている。選手たちが着るウェアや卓球台、ネットに至るまで、すべて中国卓球協会との一括契約で決められている。国家体育総局・局長補佐の重職にある蔡振華は、「超級リーグは中国のNBA(アメリカのプロバスケットボールリーグ)を目指す」と述べている。しかし、Lesson.2で述べた海外選手の締め出しのように、北京オリンピックのような国家的事業を前にすれば、何よりも協会の指示が最優先される。超級リーグはいわば、中国大陸を舞台にした、壮大な部内リーグと言ったほうが正しいだろう。

 もちろん、所属するチームも純粋なプロのクラブチームではない。移籍してきた選手の寄せ集めのようなチームもあるが、超級リーグのチームは、基本的に省チーム(省は日本で言えば県に当たる)にスポンサーがついたものと考えれば分かりやすい。たとえば女子の遼寧鞍鋼の場合、遼寧省の女子チームに鞍鋼株式会社(製鉄業)がスポンサーとしてついている。
 男子では省チームを超えた選手の移籍もかなり進んでおり、トップクラスの王励勤・馬琳・王皓などは毎年のように所属チームが変わるが、2番手以下の選手はその多くが地元のチームでプレーしている。女子の場合は、ほとんどの選手が地元のチームに所属していて、省チームの原型を留めている。そして、下部リーグの甲Aとの入れ替え戦の対象になる下位2チームは選手の出身地もさまざまで、ホームとなる都市もスポンサーも幾度となく変わる。これが超級リーグの現状だ。

[コラム-Column] チーム名を覚えるだけで大変?

 日本のプロ野球やJリーグでは、球団の身売りは新聞の一面を飾る大ニュース。しかし、超級リーグではスポンサーが1年単位でコロコロ替わる。あくまで母体は省チームだし、「1年お金を出して名前を売れば十分」と思っている企業が多い。超級リーグが始まった1999年からまだ10年も経っていないのに、チーム名が替わっていないのは男女とも母体が軍隊である八一工商銀行だけ。今年の男女10チームのチーム名をぜひ覚えておいてほしい。来年の開幕を迎えた時、同じチーム名(スポンサー名)が半分残っていれば良いほうだろう。
 その最たる例が男子の浙商銀行。今年の超級リーグの最初のチーム登録では、昨年リーグ5位だった浙江海寧鵬翔のスポンサーが撤退し、天津市卓球協会が名乗りを上げて、天津北信中ピンというチームが新しく登録された。待望の地元チームの復活に、天津市出身のハオ帥、李平などはわざわざこのチームに移籍した。ところが、北信中ピンはいわば仮のスポンサーで、正式にスポンサーになったのは浙商銀行(浙江省)。チームは再び浙江省にホームを置くことになり、天津市の選手と浙江省のスポンサーによる“混血”チームが登場した。もちろん練習も試合も浙江省で行う。
 こうなるともうファンや応援団が根付くとは考えにくい。第4節では、全部で9試合あるホームの試合の中で1試合だけ、本来のホームである天津市で戦った浙商銀行。四川全興を相手に見事な勝利を挙げたが、天津の卓球ファンはなんとも複雑な心境で、地元の英雄たちを迎えたのではないだろうか。

Photo上:05年超級開幕式でのひとコマ。昨年は06魯能杯中国超級リーグと冠名にまでなった名門・山東魯能も、男子では戦力を大幅に削減、今年は魯能・中超電纜と合同チームでの登録となった。
Photo下:浙商銀行の2番手、李平。故郷を遠く離れて07年のシーズンを戦う