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中国リポート

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 7月27日夜、ともに集合訓練を終えた国家男女卓球チームは、最後のエキシビションマッチを控えた江蘇省無錫市で「反興奮剤(アンチ・ドーピング)承諾書」への署名式を行った。これは国家体育総局の要請により行われたもので、馬琳が選手代表として中国国旗の前で宣誓文を読み上げ、五輪代表選手団のメンバーが承諾書へのサインを行った。

「実際には、卓球界のアンチ・ドーピングへの取り組みの中で、これまでに重大な問題は発生していない。これは我々の選手に対する、厳格な要求による所が大きい。卓球は陸上や水泳、重量挙げのような、高い身体能力を要求される競技に比べ、問題が発生することは少ないが、それだけに油断も生じやすい。我々はより厳しく、自らを律していく必要がある(五輪卓球選手団・劉風岩団長)」。
 6人の代表選手たちはこれから五輪期間中を通じて、外食や差し入れられたものを食べることは厳禁。風邪などを引いた場合も、禁止薬物の含まれた薬を誤って服用しないよう、チームドクターの許可なしでは一切薬を口にできない。これまで細心の注意を払って積み重ねてきた膨大な努力が、わずかな不注意で台無しになってしまうのだ。首脳陣はいくら気を遣っても、遣いすぎることはあるまい。

 北京五輪の開催が決定する以前から、国を挙げてアンチ・ドーピングに取り組んできた中国。裏を返せば、中国選手の相次ぐドーピング違反によるダーティなイメージを払拭することが、中国の五輪開催への絶対条件でもあった。94年アジア競技広島大会で、競泳を中心に11名の薬物違反者を出したことをご記憶の方も多いのではないだろうか。昨年11月には、国家体育総局の下部組織として「中国反興奮剤中心(中国アンチ・ドーピングセンター)」を成立させ、五輪代表、および候補選手に対して計5000回を超えるドーピング検査を行ってきた。今年に入ってからすでに8名の選手が、禁止薬物の陽性反応によって永久資格停止処分を受けている。競泳では男子背泳ぎで国内のトップ選手だった欧陽鯤鵬(オウヤン・クンポン)も処分されており、卓球界でも禁止薬物の使用が発覚すれば、厳罰は免れないだろう。

 国際卓球連盟は、2003年3月に世界アンチドーピング機構(WADA)によって定められた世界アンチドーピング規程を、同年5月のITTF総会で早々と受け入れ、ドーピング検査は卓球界でも常識となっている。国内でも全日本選手権や全日本社会人選手権ではドーピング検査が実施され、09年近畿インターハイでは、他競技に先駆けて卓球でドーピング検査が実施される。選手の身体能力がクローズアップされることは少ない卓球だが、アンチ・ドーピングに関しては先進的な競技と言えそうだ。
 ただし、卓球界には「身体のドーピング」だけでなく、「用具のドーピング(ラケット・ドーピング)」という長年の懸案もある。スピードグルー(揮発性有機溶剤を含む接着剤)を使用する最後の五輪となる北京五輪。シングルスで準決勝進出を果たした金擇洙(韓国)がラケット検査で失格になった、95年世界選手権天津大会のような事態だけは起こって欲しくない。

 Photo:「ドーピングの助けを借りて成績を上げても、光栄とは言えない」とコメントした馬琳