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中国リポート

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 五輪・卓球競技の男子シングルス表彰式で、初めて五星紅旗を3枚並べてみせた馬琳・王皓・王励勤。大会前、最も番狂わせが起きやすい種目と言われていた男子シングルスでも、三人の強さは揺るがなかった。

 父親の馬輝さんから「挑戦自我、戦勝自我(自らに挑戦し、自らに打ち勝て)」というメールを受け取り、決勝に臨んだという馬琳。アテネの雪辱を期す王皓を一蹴し、あまりに遠かったビッグタイトルをその手に掴んだ。
 今年5月のフォルクスワーゲンオープン荻村杯決勝でも対戦していた馬琳と王皓。筆者はこの試合の第6ゲーム9-6から、馬琳が10-6とマッチポイントを掴んだ回り込みパワードライブに、彼の心理面の変化を見ていた(彼の優勝後に言っても信頼性がないかもしれないが…)。馬琳はついに「戦勝自我」を果たすことができたのだろう
 これで優勝の呪縛から解き放たれた馬琳が、ビッグゲームで今後も強さを発揮するかもしれない。「自分の年齢、プレースタイルから言っても、次のロンドン五輪に出場するのはかなり難しいこと。でも、僕は自分の競技生活をもっと延ばしていきたい。今後の練習と試合の中で、自らの潜在能力を探り出していきたい」と試合後の会見で語っている。世界選手権のシングルス以外にはすべてのタイトルを獲得し、「大満貫」に王手をかけた馬琳。09年世界選手権横浜大会での優勝が当面の、そして最大の目標となる。

 04年アテネ五輪に続き、2大会連続銀メダルに終わった王皓。準決勝までの圧倒的な強さと、決勝での淡白な試合ぶりは、相手が外国選手から同士討ちに変わったとはいえ、前回大会のリプレイのような内容ではなかったか。
「4年前の敗戦は受け入れがたいものだったけど、今回の敗戦は冷静に受け止めている。大会全体を通して、団体戦でもシングルスでも良いプレーができていた。今後とも努力は続けていくし、決して諦めたりしない。2012年のロンドンで、きっとチャンスはある(王皓)」。ここ1年間の国際大会での強さは際立っていた王皓だが、馬琳ら先輩たちの引退を待たねば、戴冠の時はやってこないのか。

 アテネ五輪と同じく準決勝の同士討ちに沈んだのは、現世界チャンピオンの王励勤。アテネ五輪準決勝の王皓戦、柳承敏に圧倒的に分が良い王皓を決勝に進出させるため、勝敗操作で王励勤が敗れたのは公然の事実だが、今回の馬琳戦はまさにガチンコ勝負。しかし、第1ゲーム0-0(ラブオール)でバック面のラバーを破損し、スペアラケットでのプレーを余儀なくされた。不運と言えば不運。しかし厳しい見方をするならば、それだけ出足で緊張していた王励勤のメンタルは、やはり五輪での栄冠を勝ち取るには物足りないとも言える。
 それでも3位決定戦でパーソンに完勝し、中国勢のメダル独占を決定づけた王励勤。試合後の会見で次のようにコメントした。「試合前に自分自身に言い聞かせました。『これがこの大会で最後の試合、しかも相手は外国選手。外国選手に負けないことが自分の第一の目標だ』。3位決定戦であっても、私は全力で戦いました(王励勤)」。中国卓球選手で史上最高齢の五輪メダリストとなった男に、ロンドンはやはり遠い。

Photo:8月18日の男子団体表彰。5日後の男子シングルス最終日、3人の明暗ははっきりと分かれた