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中国リポート

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 「2010年中国卓球クラブ超級リーグ・摘牌大会」で女子の選手入札リストに名を連ねたのは、わずかに3名。北京女子チームから放出された郭炎と、所属チームが超級リーグに参戦していない范瑛と姚彦だ。その落札結果は以下のとおりとなった。

★女子「特級甲等」 ※選手名の後ろの( )内は昨シーズンの所属チーム
郭炎(山西大土河華東理工)   →[1133万元(約1億5500万円)]→ 山西大土河華東理工
★女子「一級」
范瑛(江蘇中超電纜)      →[520万元(約7100万円)]→ 山西大土河華東理工
姚彦(江蘇中超電纜)      →[610万元(約8350万円)]→ 内蒙古銀行

 3選手の落札額が、いずれも男子の最高額(450万元/ハオ帥)を上回ったばかりか、郭炎に1133万元という信じられない落札額がついた。中国のマスコミは「郭炎、馬琳4人分!」「冷静な計算か、それとも狂気の沙汰か?」と大々的に書き立て、郭炎は一躍中国スポーツ界の「時の人」となった。
 郭炎の入札は最低価格の80万元から、50万元や100万元の単位で金額が急上昇。開始からわずか5分あまりで600万元に到達し、超級リーグの摘牌大会の新記録を更新した。600万元以降は、郭炎の昨シーズンまでの所属チームである山西大土河華東理工と、新顔の内蒙古銀行(旧:北大方正・冀中能源)が「札束の叩き合い」。入札額が1000万元を超えたところで、ついに内蒙古銀行がギブアップし、山西大土河華東理工が郭炎を残留させることに成功した。
 郭炎を落札した華東理工大卓球部の臧玉瑛総監督も、「55回も入札の札を挙げた」とほとんど脱力状態。08年の摘牌大会で郭炎を落札した時の金額は148万元だったから、約8倍もの巨費を投じたことになる。郭炎自身は摘牌大会後、「自分につけられる落札額は、どんなに高くても500万元か、600万元くらいだと思っていた。途中からは『一体どこまで上がるの?』と思いながら見ていました」とコメントを残した。

 郭炎を競り落とした山西大土河華東理工は、山西省呂梁市に本社を置く石炭会社大手の山西大土河焦化有限公司が、上海の強豪大学である華東理工大学・女子卓球部のスポンサーとなっているチーム。山西大土河の賈廷亮董事長は、ロバに引かせた車で石炭を売っていた青年時代から、一代で山西省でも一番の大金持ちになった立志伝中の人物。08年時点での個人総資産は42億元(約580億円)と報道されている。郭炎に続き、なんと范瑛にも520万元を投じて落札し、今回の女子摘牌大会の話題を独り占め。広告効果はバツグンといったところだ。「我々には1200人を収容できる自前の体育館があり、炭坑や工場で働いている社員たちもたくさん超級リーグを観戦に訪れる。郭炎は一番人気がある選手で、郭炎がコートに入ると、みんな“郭炎、加油!”の大合唱をやるよ」とは山西大土河華東理工の白堅代表のコメント。賈董事長も卓球の大ファンだそうだが、ガッツあふれる郭炎のプレースタイルが、炭坑の町によく似合うのだろうか。

 サッカーでは甲Aリーグ時代の2003年、上海申花のスター選手である呉承瑛がライバルチームの上海中遠に1300万元で落札された記録があるが、2004年以降のサッカー超級リーグでは、トップ選手でも落札額は500万元が標準。プロバスケットボールリーグのCBAに至っては、歴代でも薛玉洋の60万元が最高だという。しかも郭炎の場合はわずか2年間の所有権に過ぎない。
 もっとも、落札額がいくらまで跳ね上がろうと、郭炎の懐に入るのは年棒の上限である120万元(約1640万円)だけ。30万元が郭炎の所属する北京体育局に支給され、残る983万元のうち、70%が超級リーグの賞金や運営費に、30%が再び北京体育局へと支給される仕組みだ。結果的に1133万元のうち、約61%に当たる688万元は超級リーグの主催者側(国家体育総局卓球・バドミントン管理センター)が手にすることになる。1133万元という金額も決して超級リーグの人気を反映したものではなく、石炭長者の意地が打ち上げた大花火、と表現したほうが妥当(だとう)かもしれない。

 中国卓球クラブ超級リーグは4月20日に監督・コーチおよび選手(中国卓球協会登録)、4月30日に外国籍選手の登録が締め切られる。その後、一週間ほどで今シーズンの登録クラブとメンバーリストが公表される予定だ。

Photo上:思わぬ「摘牌狂想曲」に巻き込まれた郭炎、結局は所属チームに残留することに
Photo中:郭炎と同じく、山西大土河華東理工が落札したカット主戦型の范瑛
Photo下:長身の姚彦は内蒙古銀行が落札。内蒙古自治区のフフハト市では、今年6月7~12日に世界ベテラン選手権が開催予定