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中国リポート

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 今月23日に開幕を迎える第50回世界卓球選手権団体戦・モスクワ大会。優勝を争うチャンピオンシップディビジョンには、今大会も出身/2世選手を含め、多くの中国系選手がエントリーしている。やはり目立つのは女子。女子チャンピオンシップディビジョンの顔ぶれを見ていると、チャイニーズタイペイと同組ではあるものの、日本女子のいるグループDに中国系選手がいないのが不思議なくらいだ。
 そんな女子チャンピオンシップディビジョンの出場チームの中で、ひと際異彩を放っているのがアメリカ女子チーム。08年広州大会に続いて全て中国系選手を揃えてエントリーしているが、王晨(08年北京五輪ベスト8)などの引退に伴い、エースの高軍以外は4人のメンバーが全て入れ替わった。まずは、その顔ぶれを見ていただきたい。

★アメリカ女子卓球チーム
No.1 高軍 41歳 右ペンホルダー表ソフト前陣攻守型
No.2 アリエル・シン(邢延華) 14歳 右シェーク両面裏ソフトドライブ型
No.3 ナタリー・スン(孫維慈) 14歳 右シェーク異質攻撃型
No.4 リリー・チャン(張安)  13歳 右シェーク両面裏ソフトドライブ型
No.5 エリカ・ウー(呉玄寧)  14歳 右シェーク異質攻撃型
※( )内は中国名

 …まるでモスクワへの修学旅行のようなメンバー。もちろん、先生は高軍だ。
 若手の中国系選手4名はいずれも帰化選手ではなく、アメリカ・カリフォルニア州出身の2世選手。ジュニア時代に中国でもまれた帰化選手にはかなわないが、アリエル・シンが北京の什刹海体育学校、ナタリー・スンが遼寧省で練習を積むなど、中国での修行によって好成績を収めている。
 2番手のアリエル・シンと4番手のリリー・チャンは、09年世界選手権横浜大会でひと足お先に世界戦デビュー。当時12歳10カ月のリリー・チャンは女子の最年少選手だった。横浜大会のシングルスでは決勝トーナメント(ベスト128)まで勝ち進んだアリエル・シンは、すでにアメリカの女子シニアでもトップクラスの実力者。先日5月2日には世界長者番付で1位になったこともある著名な投資家ウォーレン・バフェットと、卓球のエキシビションマッチを行っている。高軍をして「アメリカ女子卓球界の希望」とまで言わしめている、アメリカの天才卓球少女なのだ。

 また、エースの高軍は中国代表時代と合わせると、モスクワ大会が14大会目の世界選手権出場。現在は上海の華東理工大学を練習拠点としており、名人芸のバックショートはいまだ健在だ。高軍というと思い出さずにはいられないのが、91年世界選手権千葉大会の女子団体決勝。ラストで高軍がユ・スンボク(統一コリア)に敗れ、中国は女子団体9連覇を逃した。そして19年後のモスクワ大会。高軍は自分の子どもくらいの年齢の後輩たちを引っぱりながら、いまだ現役でプレーを続け、何度目かの世代交代を果たした中国女子は、高軍がなし得なかった9連覇に再び挑もうとしている。

 モスクワ大会では、帰化選手ひしめくグループB(シンガポール/ドイツ/オランダ/スペイン/チェコ/アメリカ)に入ったアメリカ。対米感情は微妙(?)なロシアの観客だが、小さな代表選手たちの奮闘には大きな声援が送られそうだ。モスクワではぜひ注目してみたい。

Photo上:歯切れの良い速攻プレーを見せるアリエル・シン
Photo下:09年横浜大会での高軍のプレー。08年広州大会からアメリカ卓球代表のウェアは、中国の「李寧」がオフィシャルサプライヤーになっている