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中国リポート

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 2010年5月30日、世界選手権団体戦モスクワ大会の女子決勝で、シンガポールに歴史的な敗戦を喫した中国女子チーム。93年イエテボリ大会から続いてきた連覇は8でストップ。多くの中国選手が海外に流出しながらも、なお揺るがぬ強さを誇ってきたが、その敗戦は意外なほどあっけなかった。劉詩ウェンや丁寧からは、対戦相手の戦意を喪失させる、あの中国女子の「神通力」が失われていた。シンガポールと同じ土俵に下りて来て、真っ向から試合を挑んでしまった。
 蚊の鳴くような声を絞り出す劉詩ウェン、眉間に皺を寄せてじっと前を睨んでいた丁寧、ふてくされたような態度の郭躍。敗戦後の記者会見で、打ちひしがれた表情を見せた常勝軍団の姿は、今もって忘れがたい。

 新記録となる9連覇の達成よりも、はるかにセンセーショナルな中国女子の敗戦。中国国内でも様々な論調で報道されている。敗戦について一定の理解を示す報道もある。

★武漢晨報(5月30日)「敗北もまたひとつの貢献」
・中国女子が負けた! 多くの人がこの結果を信じられないでいるだろう。しかし、「負けたからどうしたというのか」というのが正直な感想だ。シンガポールは全員が中国選手、昨日の決勝はさながら部内対抗戦のようだった。
 中国女子がその強さを増すたび、それは周囲の不評を買う。ルール改正のたびに国際卓球連盟がはらう労力にはまったく同情する。卓球は世界のスポーツ、中国だけのものではない。だから中国が負けるのも、広い視野に立ってみれば、卓球界にとってはひとつの貢献だ。
★成都日報(6月2日)「必要なのは総括と反省、名指しの批判は不要」
・施之皓監督は失敗の責任を負うべきだが、それ以上の選手への批判をするべきではない。しっかり総括を行うことで、モスクワでの失敗を未来への貴重な財産になる。中国が上位を独占していた状況の中で、今回の敗戦は中国女子チームにとっても、また世界の女子卓球界にとっても、むしろ歓迎すべき事態かもしれない

 また、今回の若手の起用は拙速すぎたという意見や、近年の中国卓球協会の方針である「養狼(ライバル育成)計画」に言及した報道もある。

★京華時報(5月30日)「『抜苗助長』はやめよ」
・「抜苗助長」(成長を早めるために苗を引っ張って枯らしてしまう)は避けなければならない。郭躍はあまりにも早く主力に抜擢されたことで、いくつかの挫折を味わい、メンタルの脆(もろ)さを抱えてしまったではないか。丁寧と劉詩ウェンのプライド、そして闘志が失われてしまったらどうするのか。今大会の女子チームの選手起用は失敗だ。
★南方日報(5月31日)「飼っていた狼に噛み付かれた」
・シンガポール女子の周樹森監督は、中国女子チームの選手たちを知り抜いていた。それはシンガポールの選手たちにも計り知れない自信となっただろう。世界の卓球界の振興のため、『養狼(ライバル育成)』を打ち出した中国チーム。今まさに狼は成長し、脅威となりつつある

 そして、中国国内でも賛否両論を呼んでいるのが、元世界チャンピオンの郭躍の起用法だ。(その2に続きます…)

Photo上:モスクワ大会女子決勝、苦戦に表情が沈む劉詩ウェン
Photo下:決勝戦後、肩を落として退場する中国女子チーム