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中国リポート

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 モスクワ大会で9連覇の夢を断たれた中国女子チーム。しかも女子決勝が行われた5月30日は、中国の女子スポーツにとって、かつてないほどの「厄日」だった。アジアを代表する強豪チームだった中国女子サッカーチームが、アジアカップ3位決定戦で日本に0-2で敗れ、初めてワールドカップ出場を逃した。また、河南省ルオ(さんずい+累)河市で行われていた中国国際女子バレーボール第2日目では、04年アテネ五輪優勝の中国女子バレーボールチームが、ドミニカ共和国に1-3でまさかの敗戦。歴史的な敗戦が相次いだ。

 そして、モスクワ大会の女子決勝からさかのぼること2週間前。女子卓球チームと全く同じように、連覇の夢を断たれた中国代表チームがある。マレーシア・クアラルンプールで行われた第23回世界女子バドミントン選手権(ユーバー杯)。国別対抗戦の決勝で、中国バドミントン女子チームは1-3で韓国に敗れ、1998年大会から続けていた連覇が6でストップした。決勝ではトップで世界ランキング1位の王儀涵が、一度も負けたことのない裴昇煕(韓国)に完敗。2番ダブルスでプレッシャーに呑まれた若手ペアが敗れ、3番で1点を返したものの、4番で杜靖/于洋が競り負けて終戦。卓球のモスクワ大会は、まるでリプレイのような展開だったのだ。ちなみに、世界バドミントン選手権では日本男女チームがアベック銅メダル、北京五輪優勝を最後に現役引退したバドミントン界の女王は「張寧」という名前だった。奇妙なほど共通点が多い。

 「一刻も早く“一姐(イージエ)”を育成せよ」。中国バドミントンチームの李永波総監督は、世界バドミントン選手権の総括会議で号令を出している。「一姐」は単にエースであるだけでなく、精神的な支柱としてチームを引っ張って行ける女子選手のこと。「一姐」の不在が問題になっているのは、何も女子卓球チームだけではない。若くて実力のある若手が育ちながら、中心選手として重責を担う選手が現れず、ひとたび足並みが乱れるとチーム全体が崩れていってしまう-「無核時代」と評される現象が、他のスポーツの国家チームでも顕著に現れている。

 6月2日付の重慶晩報には、「女子卓球チームの敗戦は、北京五輪の後遺症」という記事が掲載された。中国は北京五輪に照準を合わせて選手を育成してきた結果、エースや一番手の選手が技術面・精神面ともにピークを迎え、北京五輪ですばらしい成績を残した。しかし、北京五輪の開催後、中国スポーツ界全体で急激な世代交代が進み、経験不足の若手が成績を伸ばせないでいるというのだ。「卓球からは張怡“寧”、バドミントンからは張“寧”、どちらも寧がいなくなり、観客は安“寧”に試合を見られなくなった」(重慶晩報)。北京五輪という国家的事業を終え、さしもの常勝軍団にもわずかな隙が生まれたということか。

  モスクワ大会での思わぬ敗戦は、果たして「常勝・中国女子」のプライドに火をつけるのか。モスクワ大会決勝で痛恨の敗戦を喫した劉詩ウェンと丁寧だが、少し歴史を振り返ってみよう。92・96年五輪優勝のトウ亜萍は91年千葉大会決勝の2番で敗れ、劉詩ウェンや丁寧と同じように中国女子の9連覇を実現できなかった。張怡寧も大抜擢された00年クアラルンプール大会決勝のチャイニーズタイペイ戦では、3番で徐競に敗れる苦い経験をしている。
 中国女子の上位独占は歓迎すべき事態ではない。しかし、劉詩ウェンの躍動する両ハンドドライブ、丁寧のダイナミックなラリー戦は魅力的だし、ルックス、プレースタイルともにスター性は十分だ。ふたりの今後に期待したい。

Photo上:「張怡寧さえいれば…」と思ったファンも中国では多かったはず。写真は09年全中国運動会
Photo下:劉詩ウェン、ここから世界ランキング1位の真価が問われる