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中国リポート

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 7月4日に終了したITTFプロツアー・ジャパンオープン荻村杯。女子シングルスで15歳の中国選手が一気に決勝まで勝ち上がり、注目を集めた。まだ15歳、若手主体の今回の中国女子チームの中でも、最年少だった朱雨玲(ジュ・ユゥリン)だ。平野早矢香(ミキハウス)、トート(ハンガリー)、福原愛(ANA)、朴美英(韓国)という強豪を連破しての準優勝。ひとりとして同じプレースタイルではなく、またいずれも経験豊富な強者揃い。勢いだけで勝ち上がったとしても十分な価値がある。2002年に14歳でプロツアーに華々しくデビューした郭躍になぞらえ、中国では早くも「郭躍二世か?」との報道もある。

 超級リーグと日程が重なったため、国家2軍(ジュニア)クラスの選手を派遣した中国。朱雨玲のセンセーショナルな活躍が強い印象を残したが、全体としてはやはり成績は今ひとつ。男子は2回戦までに全員が姿を消し、林高遠と呉家驥のベスト32が最高成績。日本の危険なライバルかと思われた女子も、予選リーグで李佳イが森薗美咲(青森山田高)に敗れ、唯一の国家1軍チームのメンバーだった易芳賢が決勝トーナメント1回戦で福原愛(ANA)に敗れるなど、日本勢の前に次々と敗れ去った。男女シングルスに出場した12選手のうち、ベスト16に勝ち残ったのは朱雨玲ただひとり。そして、朱雨玲はこのビッグチャンスを掴んだ。

 朱雨玲は1995年1月10日生まれの15歳、出身は四川省綿陽市。2008年5月に発生した四川大地震で大きな被害を出しており、その名前をご記憶の方もいるかもしれない。朱雨玲は小学1年生の時、地元の少年宮で卓球を教えていた王強コーチの目に留まり、本格的に競技を開始。少年宮というのは子どもたちがスポーツなどの課外活動を行う施設のこと。朱雨玲は少年宮の練習が休みになる週末も王強コーチを家に招き、両親が自宅に買い入れた卓球台で練習に励んだという。その2年後には早くも四川省のジュニアチームに入り、四川省女子チームの李永生監督の指導を受け、順調に実力を伸ばしてきた。2009年に14歳で全中国ジュニア選手権ベスト8、そして今年1月のジュニア選抜集合訓練で3位となり、国家2軍(ジュニア)チーム入りを果たしている。今年6月の甲Aリーグ第1ステージでは、シングルス17勝6敗と高い勝率を記録した。

 『綿陽日報』に掲載された李永生監督のインタビューによると、朱雨玲の利点は「非常に頭が良く、試合での対応能力、戦術転換に優れている」こと。この点でもデビュー当時の郭躍と相通じるものがある。決勝こそ王越古のバック表ソフトのボールと逆モーションのレシーブに手を焼き、完敗の内容だったが、序盤でミスを連発した準決勝の朴美英戦では、巧みな戦術転換も見せた。「朱雨玲は身長は今は160cmくらいだが、165cmくらいまで伸びるだろう。国家2軍で彼女を指導する陳振江コーチも、彼女の将来性を評価しており、施之皓監督も興味を示している。この2、3年が重要な時期になる」(李永生監督)。
 四川省女子チームが輩出した選手といえば、最近では03年の第1回世界ジュニア選手権で優勝した李茜がいるが、彼女はその後成績が伸び悩んだ。陳龍燦(88年ソウル五輪複金メダリスト:現四川省卓球チーム総監督)以来、四川から久々のビッグスター誕生となるだろうか。ただし、国家1軍チーム昇格のあかつきには、金髪に近いあの髪型には「NG」が出るかもしれない…。

Photo上:朱雨玲のパワードライブ。肩中心の豪快なスイングだが、前陣で回り込み、バックストレートに打ち抜く身のこなし、スイングスピードは素晴らしい
Photo下:決勝では百戦錬磨の王越古に翻弄され、宿題ももらった