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中国リポート

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 11月20日まで中国・広州市で行われた第16回アジア競技大会・卓球競技。開催国である中国が7種目を全て制し、78年の第8回バンコク大会以来、32年ぶり2回目の全種目制覇を達成した(以前、中国は全種目制覇はないと書きました。スミマセン)。混合ダブルス準々決勝で張継科/丁寧が敗れたものの、これまで取りこぼしの多かったダブルスでも確実にタイトルを獲得。これまで「中国がなぜか勝ち切れない大会」だったが、集合訓練できっちり調整し、危なげのない勝ちっぷりを見せた。

 今大会で最も多くのタイトルを獲得したのは、女子団体・シングルス・ダブルスの三冠王となった李暁霞。女子シングルス決勝はダブルスのパートナーである郭躍との、三冠王を賭けた戦い。ゲームカウント0-3と大きくリードされ、第6ゲームには9-10とマッチポイントを握られたが、最後まで集中力を切らさず、粘り強い両ハンドの攻守で勝ち切った。「これまで私はずっと精神面が弱く、メンタルの部分で壁を乗り越えられなかったけど、この3年間でずいぶん成長したと思う。少なくとも最後まで試合をあきらめることはなくなった。これは進歩と言えると思います」(李暁霞/出典『北京晩報』)。
 ちなみに大会期間中には、李暁霞と同じ李隼コーチの指導を受けていた張怡寧が、李暁霞のプレーについて李隼コーチと常に連絡を取り合い、戦術面についてアドバイスを与えていたことを、ピンパン世界の夏娃編集長が明かしている。李暁霞の三冠王は「チーム李隼」の勝利でもあったわけだ。

 一度は世界ランキング1位(08年11月)に立ちながら、王楠や張怡寧の陰に隠れ、劉詩ウェンや丁寧の控えに甘んじて、常にチームの4・5番手だった李暁霞。両ハンドの安定感のあるドライブで攻めるプレースタイルも、郭躍の斬りつけるようなカウンターや劉詩ウェンの俊敏な攻守、丁寧のスケールの大きい両ハンドドライブに比べると、もうひとつファンにアピールしない。日本の卓球ファンの中でも「李暁霞のファン」という人は、結構珍しいのではないだろうか。

 しかし、今回のアジア競技大会の活躍で、「李暁霞が中国女子の“一姐(エース)”」との声も高まっている。今年1月に急性虫垂炎を患いながら直通莫斯科を戦い抜き、超級リーグではプレーオフでの大活躍で、チームを優勝へと導いた。そしてアジア競技大会・女子シングルス決勝での劇的な逆転勝ち。レベルが接近し、技術面で大きな差はない中国女子にあって、精神面の成長をアピールできたことは大きな意味を持つ。来年の世界選手権ロッテルダム大会(個人戦)で、07年ザグレブ大会で逃がした大魚を釣り上げたいところだ。

Photo上:李暁霞、中国女子では8人目のアジア競技大会優勝者となった
Photo下:団体戦で中国女子のベンチに入った李隼コーチ