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中国リポート

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 2008年2月の年次総会で、協会を移籍した選手の大会出場に大幅な制限を加えた国際卓球連盟。ただし、この規定が適用されるのは、世界選手権・世界ジュニア選手権(年齢制限は別規定)・ワールドカップ・ワールドチームカップというビッグゲームに限られる。そしてより重要なのは、IOC(国際オリンピック委員会)の管轄であるオリンピックも、この規制の適用外になるということ。五輪の場合、他国の代表として出場した最後の国際大会から、3年以上が経過していれば、新しい国の代表として五輪に出場できるのだ。
 以下のふたつのコメントからも、今回の5選手の移住の理由がロンドン五輪であることが明確になってくる。

「本当は去年引退して、もうラケットは握らないつもりだった。でも、(シンガポール卓球協会と)連絡を取ってくれた友人がいて、中国卓球協会も移籍を支持してくれたし、シンガポールでも厚遇を受けたので、最終的に決断した。僕はただ、一度オリンピックに出たいという夢をかなえたいだけだ。どうか“帰化選手軍団”とは呼ばないでほしい」
(ジャン健/出典『武漢晨報』)


「新たに加入した選手たちが、良いプレーをしてくれることを望んでいる。特にジャン健と李虎には、シンガポール男子チームがオリンピックの団体戦出場の資格を得る、大きな力になってくれることを望みたい」
(シンガポールチームマネージャーのタイ・ハンチョン氏/出典『新華網』)


 ただし、発表されているロンドン五輪の予選システムの文書を見ると、ロンドン五輪団体戦の出場枠(16カ国)は、世界チームランキングではなく、2012年世界団体選手権ドルトムント大会の成績に基づいて決定すると書かれている。前回のモスクワ大会では16位に終わったシンガポール。ドルトムント大会に出られないジャン健や李虎が加入しても、ドルトムント大会で下位に沈んでしまったら、「元も子もないのでは?」と思われるかもしれない。

 しかし、実際には五輪団体戦の出場チームを決めていく際には、世界ランキング推薦と五輪の各予選を経て、団体戦に必要な3名の選手を揃えた国が優先的に出場できる。ドルトムント大会3位/五輪予選での通過者2名の国と、ドルトムント大会20位/五輪予選での通過者3名の国では、後者の20位のチームが先に出場権を得られるのだ。
 ガオ・ニンの世界ランキングでの五輪推薦出場がほぼ確定しているシンガポール。アジア大陸予選でヤン・ツーとジャン健が代表権を獲得し、団体戦に必要な3名を揃えれば、ドルトムント大会では20位くらいの順位でも、問題なく五輪団体戦への切符を手にできる。言い方を変えれば、アジア大陸予選で最低でも1名は予選を通過させて、五輪団体戦への望みをつなぎたい。
 若手3名は経験を積ませ、規定年数を経てから世界大会に出場させるかもしれないが、ジャン健と李虎はアジア大陸予選を見据えた補強ではないか。カタールオープンでは両選手とも1回戦で敗れたが、UAEオープンとドイツオープンにも出場予定。これからプロツアーを中心に参戦していくことになりそうだ。

Photo:北京五輪でプレーするエースのガオ・ニン。女子とは対照的に、これまで団体戦では実績のないシンガポール男子チームだが…