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中国リポート

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 男子チームが福建省厦門市、女子チームが四川省成都市で40日あまりの集合訓練に入った国家卓球チーム。いよいよロンドン五輪への最終調整に入っている。

 この集合訓練に際し、選手より先に訓練基地へ大量に届けられたものがある。それは「肉」だ。大部分は豚肉と牛肉、さらに羊肉や鶏肉。男子チームは250キロ、女子チームは400キロの肉や肉製品を空輸している。もちろんこれは第一陣で、男子チームの肉250kgでは10日持つかどうか。肉製品や野菜などの食材は、現地では一切調達せず、すべて北京から空輸される。国家体育総局のアンチ・ドーピングセンターで、禁止薬物や毒素などが含まれていないか、厳格な検査が行われてから、晴れて訓練基地へ送り出されるのだという。

 国家チームが食材の管理に細心の注意を払うのは、主に豚肉に使用される「痩肉精(クレンブテロール)」の問題があるからだ。健康志向の高まりによって、脂身の多い肉よりも赤身肉のほうが高値を呼ぶ中国では、豚肉の赤身を増やす効果があるクレンブテロールの使用が常習化。各地で集団中毒を引き起こし、社会問題となっている。
 そして、スポーツ選手にとって何より怖いのは、このクレンブテロールがIOC(国際オリンピック委員会)の指定薬物であり、検出されるとドーピング違反になってしまうこと。オフチャロフ(ドイツ)が中国オープンの際、地元のホテルで豚肉を食べ、ドーピング騒動に巻き込まれたことは記憶に新しい。2年間の出場停止処分を辛くもまぬがれ、オフチャロフは「二度と中国で豚肉は食べない」と語った。

 国産食材への不信感がピークに達していると言われる中国。女子チームが集合訓練を行う四川省成都市は、中国でも有数の食の都だが、選手たちは外出しての食事は厳禁なのだという。先日行われた中国オープンに、ヨーロッパのトップ選手の参加が少なかったのも、食事への不信感があったのだろうか。

 時代は違えど、今回の「食材空輸」の逸話は、1961年北京大会での集合訓練を想起させる。中国全土が大飢饉に襲われ、都市部でも人々が街路樹の葉を食べて飢えをしのぐ中、荘則棟や邱鐘恵ら国家チームの選手たちには栄養豊富な食事と、恵まれた住環境が与えられていた。現在では世界一の食糧生産量を誇るまでになった中国だが、代表選手たちの食料を地元で調達できないというのは、なんとも残念な気がする。

photo:09年全中国運動会で出たお弁当、串焼きの串の部分になぜか「ねぎま」の文字が…。なにやら底深い闇を覗いたような気がシマシタ