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中国リポート

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 「直通巴黎」の女子第2ステージで、世界選手権パリ大会のシングルス出場権を獲得した胡麗梅。名前の字面(じづら)も、「フー・リーメイ」という発音しやすい名前も、なかなか押し出しが効いている。山東省の中央部にある淄博(しはく/ズーボォ)市の出身。11歳の時から八一解放軍チームに所属しているが、昨シーズンも郭躍・木子・曹臻らがいて超級リーグには出場できず、甲Aの重慶康徳にレンタルされていた選手だ。

 以前はカット打ちが弱点と言われていたが、最近ではかなり改善され、対カットの黒星もほとんどなくなっていた丁寧。その丁寧に、なぜ胡麗梅は2連勝することができたのか。
 中国のカット主戦型はバック表ソフトが主流である中で、胡麗梅はバック面が粒高ラバー。そのため、昨年のロンドン五輪までは特別に国家1軍チームに昇格し、「仮想・金璟娥」として李暁霞や丁寧のトレーナーを務めていた。丁寧がカット打ちに習熟すると同時に、胡麗梅も丁寧の球威やコース取りにかなり慣れていたはずだ。

 そしてもうひとつ、意外に大きい要因となったのが、試合が行われた内蒙古自治区オルドス市が、標高約1,350mの高地にあったこと。会場を訪れていた国家女子チームの元監督・施之皓が「卓球は高地でやるには向かないスポーツだ。空気が薄く、空気抵抗が少なくなるため、ボールのスピードも回転量も変わる」と述べている。中国全土で開催される超級リーグでも、試合が標高の高い僻地(へきち)で行われ、思わぬ波乱が起こることがある。
 丁寧自身も「(高原では)カットの回転量が普段よりも多くなる」と述べている。あえてそんな環境で代表選考会を行うとは…。日本ならばブーイングが起きそうだが、さすが中国、という感じがする。

 最も、空気が薄い環境では、運動量が多いカット主戦型にかかる負担はより大きくなる。第3ステージの代表決定戦で、丁寧の威力あるパワードライブを最後までしのぎきり、第5ゲーム10−5のマッチポイントでは丁寧のストップにススッと前へ出て、フォアミドルへ完璧なフォアドライブを決めた胡麗梅。その体力と精神力を賞賛するべきだろう。
 現在のところ、まだ世界ランキングがない胡麗梅。パリ大会もノーランクか、かなり低いランキングで迎える可能性が高い。ドローでこの胡麗梅がどこに入るのかも、戦局にかなり影響を与えそうだ。

photo:気の強そうなチョッパー・胡麗梅(写真提供:ITTF)