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中国リポート

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 「いつ引退するのか」「まだ引退しないのか」と常にマスコミの話題を集め、今回の全中国運動会を現役生活のひとつの区切りにするとコメントしていた王励勤。男子団体では馬琳・張継科・ハオ帥・樊振東といった強豪選手に勝利。チームは惜しくも準優勝に終わったが、7戦全勝の活躍でエース許シンの不調をカバーし、男子シングルスでもきっちりベスト8まで勝ち上がった。4種目にフルエントリーするハードスケジュールで、血尿が出るほど疲労しながら、最後まで戦い抜いた。

 一球たりとも気を抜かない高い集中力もさることながら、王励勤の凄いところは、30歳を越えてからプレースタイルを変えたことだ。全盛期は前・中陣での豪快なフォアドライブがトレードマークだったが、世界選手権モスクワ大会の団体メンバーから外れた2010年頃から、前陣でのショートスイングのバックドライブを主体にしたスタイルにモデルチェンジ。今回の全中国では、張継科や樊振東の台上バックドライブにも確実に対応し、バック対バックでも引けをとらなかった。

「この2年ほど、ぼくはずっと自分を変えようとしてきた。その変化こそ、ぼくにとっては最も貴重なものだ。ピークを過ぎた選手というのは、何かを変えるのにとても勇気がいるからね。このチャレンジャー・スピリットがあれば、ぼくはこれからの人生をより力強く歩いていけるよ」(王励勤のコメント/出典『中国新聞網』)

 モデルチェンジに取り組みはじめた時、王励勤はすでに世界選手権や五輪で中国チームの主軸を担う存在ではなくなっていた。節制された競技生活で、馬琳や王皓のように太ることはなかったが、筋力が落ちはじめ、体の線も細くなってきていた。それでも彼の中にはまだ、勝利への渇望(かつぼう)があったのだ。
 王励勤と3回戦で対戦した陳杞は、いつもと変わらずフォアドライブをブンブン振り回した。そして王励勤のピッチの早いバックドライブ連打についていけず、ストレートで敗れた。変わった者と変わらなかった者の差がクッキリ出た試合だったが、陳杞のほうが普通なのだろう。

 「今の状態をキープできれば、ぼくはまだ試合を楽しむことができる。他のどの仕事でも、この充実感は味わえないものなんだ」(出典:『中国新聞網』)。バックハンド主体のプレーに一抹(いちまつ)の寂しさを感じながらも、そのプロ根性には脱帽するほかない。彼こそ真のプロフェッショナルだ。現役生活にもまだ未練がありそうだが、果たして去就はどうなるのか。
  • ショートスイングのバックドライブは安定感抜群

  • 馬龍戦の敗戦後、やっぱり悔しそうです