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中国リポート

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 10月7日、ドイツ・マグデブルクで開催されていたワールドチームカップ(WTC)は、戦前の予想どおり、男女とも中国の圧勝で幕を閉じた。
 1チームにつき4名までしかエントリーできないワールドチームカップ。中国が五輪の前哨戦のひとつと位置づけたこの大会、エントリーした4人の中から1人が脱落し、残る3人が北京五輪代表に確定するという見方が、中国のマスコミでも一般的になっている。

 男子でエントリーしたのは王励勤・王皓・馬琳・陳杞の4人。「それなら世界ランク1~3位の王励勤・王皓・馬琳で決まり」と思っているファンの方も多いだろう。しかし、北京五輪で採用される4単1複の試合形式では、勝利するためにダブルスが非常に重要なポイントになる。そして、国家男子チームの劉国梁監督は異様なまでの慎重さで、ダブルスのペアリングをテストし続けている。

 今回のワールドチームカップの中国香港戦・2番で、王励勤が梁柱恩に敗れたように、北京五輪でもいずれかの試合で、中国が1点落とす可能性はあるだろう。そこに3番ダブルスでの敗戦が加わったらどうなるか? 中国は一気に、敗戦の崖っぷちに立たされることになる。
 たとえばドイツと対戦した場合、エースのボルを2点起用してくるより、ボルを単複で起用し、ボル/ズースの強力なダブルスを組まれるほうが中国にとってはイヤかもしれない。もし前半でボルに単複2点を取られたら、4・5番でオフチャロフ、ズースといった格下の選手が相手でも、どんな番狂わせが起こるか分からない。歴史的な地元開催のオリンピック、熱狂的な観客の声援、プレッシャーは想像を絶するものだろう。

 そういったダブルスの重要性を踏まえると、やはりダブルスのスペシャリスト・陳杞の存在感も無視できないものがある。五輪・世界選手権で優勝した馬琳とのペアリングはもちろん、今シーズンは王励勤や王皓と組んでもプロツアーで優勝している。ワールドチームカップではロシア戦でクズミンに勝った1試合しか出場しなかったが、この陳杞が3番手の座を獲得する可能性もゼロではない。

 中国にとって、金メダルが至上命題である北京五輪。敗北の可能性は徹底的に排除しなければならない。世界ランク1~3位の選手を素直に選べない理由も、まさにそこにあるのだ。

Illust左上:北京五輪の団体戦の試合形式(クリックすると拡大)。1・2番が終わったあと、両チームの監督がダブルスのオーダーを交換。自動的に4・5番のシングルスのオーダーも決定する。
Photo中:5月のザグレブ大会で優勝した馬琳/陳杞
Photo下:6月のフォルクスワーゲンオープン荻村杯は、王励勤/陳杞が優勝。試合中は陳杞が、先輩の王励勤にも積極的にアドバイスしていた