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 先月末、名古屋でのTリーグ男子のセントラル5試合を取材した翌日、愛知県豊田市にある小和田(現姓:竹内)敏子さんのご自宅に伺い、『The Legends』のインタビューをさせていただいた。小和田さんは1969年世界選手権ミュンヘン大会の女子シングルスチャンピオン。現在のところ、日本女子では最後の世界チャンピオンだ。

 現在でも中京大の名誉教授として、週に1回は学生たちを教えている小和田さん。温かい語り口でありながら、質問に対する返答は明晰(めいせき)で淀みがない。3時間近いインタビューを文章に起こすのが、これほどスムーズだったのは記憶にないくらいだ。

 今の姿からはとても想像できないのだが、現役時代の小和田さんは卓球の「鬼」だった。「これを話すと、性格が悪いと言われるかもしれませんけど……」と笑いながら話してくれたのだが、中京大時代の夜間練習で男子選手たちとゲーム練習を繰り返していた時、常日頃つけていた卓球ノートに選手のリストを作り、自分が勝った選手をそのリストから消していったのだという。

 さらに山形・谷地中時代にさかのぼれば、卓球を始めて間もない頃から、ボール拾いでは一番強い男子選手の後ろにピタリとつき、その選手のプレーを観察した。「競った場面ではこのサービスが多いな」「こう攻めれば攻略できるな」と自分から戦術を学び、中学2年で早くも県大会2位になったというのだから恐れ入る。

 指導者に技術について教わることは、競技人生を通じてほとんどなかった。それでも卓越した「セルフ・コーチング」の才能を発揮して、世界の頂点に立った小和田さん。環境に恵まれない中でも練習に励む中高生の皆さんに、今回の『The Legends』をぜひ読んでもらいたいです。(柳澤)
  • 69年ミュンヘン大会の優勝トロフィーを手にする小和田さん

  • 自分から世界女王とは言わないので、授業で試合をして負けた学生さんが悔しがるそうです