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石川が敗れた後、「負けられない」という気持ちが平野を狂わせた

 平野美宇の目からこぼれ落ちる涙。彼女は泣き崩れるのを耐えているようにも見えた。それは胸が締め付けられような瞬間だった。

 シンガポールで行われているT2ダイヤモンド。今年のワールドツアーの上位16名が参戦でき、世界ランキングに直結するボーナスポイントが付与される。日本は先週のオーストリアオープンの後、男女とも張本智和と伊藤美誠が東京五輪の代表を決めているが、シングルスの2人目の切符を、男子の丹羽孝希、水谷隼、女子の石川佳純、平野美宇が大接戦で争っている。
 日本卓球協会は、来年1月の世界ランキングによって上位2名をシングルス代表とすることを選考基準として発表している。実質的には、このT2の後、男子ワールドカップ(水谷不参加)と12月の北米オープン・チャレンジプラス(水谷不参加)とワールドツアー・グランドファイナルがある。女子はあと2大会を残すのみで、五輪代表は決まる。
 過去1年間の上位8大会の獲得ポイントで決まる世界ランキング。対象となる今年のワールドツアーの合算ポイントは、平野美宇が現時点で10295、石川佳純が10230と、平野がわずか65点のリード。
 女子2人の大会の獲得最低ポイントは900。北米オープンでは優勝すると1100が入るので、200点が上乗せされることになる。しかし、この大会には中国の若手が12名もエントリーしている。それら強豪選手をなぎ倒しながら、「優勝のみが目的」の大会に向かう。

 日本の卓球愛好者は120万人とも言われるが、仮に半分が女子だとしても数十万人の中からわずか3人が五輪の代表として東京の舞台に立てる。そしてシングルス枠はわずかに2名。
 そんな高いピラミッドの頂点でしのぎを削る2人のアスリート。しかし、死闘とも言える国内競争は4年ごとに繰り広げられてきた。リオ五輪前もしかり、さらに過酷だったのは2012年ロンドン五輪の時だ。2011年4月の世界選手権ロッテルダム大会の直後に発表される世界ランキングで代表を決めるルールだった。世界大会前に、女子は福原愛、平野早矢香、石川佳純が横一線に並んだ。結果、わずかに1勝上回った福原と石川がシングルスの切符を手にして、平野は団体戦要員に回った。
 試合後の会見で、福原も石川も手放しで喜びを表現しなかった。彼女たちはともに戦った平野を気遣っていたのだ。一方、少し時間をおいて開かれた平野の囲み会見で、疲れ切った表情で登場した平野も、「やれることはすべてやりました。もし団体戦に選ばれたら、日本のために頑張ります」と言いながら、大粒の涙を流した。胸が締め付けられる会見だった。3人は翌年のロンドン五輪で日本卓球史上初のメダルを獲得し、卓球三人娘として日本中を感動させた。日本人同士が激しく戦う代表争いだが、代表が決まれば、3人はどこの国よりも心を通わすチームワークを見せた。
 五輪が特別なのは、選手たちの強い思いがそこに向けられ、喜びと悔恨のストーリーが交錯するからだろう。

平野の口から出た「死ぬ気で頑張る」という言葉の意味

 昨日のT2ダイヤモンドのミックスゾーン。平野美宇が「良いゲームができる時とできない時の差が大きい。海外の選手からすれば単なる試合でも、私たちはプレッシャーがかかっている」と言ったところで、言葉に詰まり、彼女の目から涙がこぼれた。「その時に全然自分のプレーができない、こんなんじゃ(五輪へ)出場しても……今のままじゃだめだと思うので、あと2大会に賭けたい」
 他国の選手は日本とは五輪代表の選考方法は違う。すでに内々に代表が決まっている国(協会)もある。今回のT2の試合の重要度は間違いなく日本選手が一番大きい。
 同じ平野でも、7年前の早矢香の涙と、今回の美宇の涙はその意味が違う。美宇の戦いはまだ終わっていないからだ。このT2での襲いかかってきた重圧によって自分本来のプレーができなかった、自分のふがいなさに流した涙だったのだ。

 平野美宇が代表権を争っているのは石川だが、平野が戦っているのは「平野美宇自身」なのだ。コートの相手を倒そうとするのだが、「勝ちたい」「負けられない」という重圧が平野自身を狂わせた。昨日の試合はそんな戦いだった。
 涙をぬぐいながら、「次の試合に向けて卓球に死ぬ気で賭けるように頑張りたい。同じような負けはしたくない」「あと2大会で決まるので、どれだけ自分のプレーができるか、成長した自分を見せたい」と語った平野。いつもおっとりして、メディアの笑いを誘うようなリアクションを見せる平野の口から発せられた「死ぬ気で」という言葉。それは恐ろしいほどの本音のワードだった。

 リオ五輪では3人の代表に入れず、リザーブとして、練習相手をしたり、観客席で応援に回っていた平野美宇。試合に出れない悔しさがその後の彼女の成長を支えたはずだが、それでもなお、彼女の心を狂わす重圧がある。前日に伊藤美誠に負けていた石川。もし、平野が勝ちきっていれば、100点を加えた165点の差をつけることができたが、それもかなわなかった。
 前日に敗れた石川の目には涙はなかった。熾烈な争いをすでに4年前、8年前に経験している石川は、あと2大会の勝負に気持ちを切り替えている。
 平野美宇と石川佳純との差はわずか65。勝負は12月12日から始まるワールドツアー・グランドファイナルで決まる。 (今野)
  • 石川とのポイント差を広げられず、五輪の切符はグランドファイナルまで決まらない

  • 「死ぬ気で頑張る」、平野は自分自身を乗り越えなければならない

 卓球の試合をまさに裏方として支える人たちがいる。それは監督やコーチ、フィジカルトレーナーではなく、「食」で選手たちをサポートするJA全農(全国農業協同組合連合会)の取り組みである。
 シンガポールで行われているT2ダイヤモンド。東京五輪を控え、熾烈な五輪代表レースを繰り広げる中、世界ランキングに直結する大会として、選手の精鋭たちが集まっている。
 JA全農は、大会会場の選手ラウンジや関係者・VIPラウンジに、日本産米の「おむすび」や「いなり寿司」を提供して、本大会を「ニッポンの食」でサポートしている。
 また、全農インターナショナルアジア株式会社が中心となり、11月15日~30日の間、シンガポールで飲食店舗を展開する「牛角」や「哲平食堂」と連携し、「ジャパンフードキャンペーン2019」を開催している。
 11月20日に開催された「T2ダイヤモンドシンガポール大会」のメディアカンファレンスで同社の高須博幸代表取締役社長が登壇し、今大会へのサポート内容や「ジャパンフードキャンペーン2019」について説明した。

 スポーツアスリートにとって、大切なのは心技体智。メンタル、テクニック、フィジカル、タクティクス・・・そのフィジカルとメンタルに影響を与えるのが「食」なのだ。
 こういう古いエピソードがある。1973年の世界選手権サラエボ大会。当時、世界の覇権を争っていた日本と中国。当時の団体戦は3人による9シングルスマッチ。もつれると4、5時間越えることも珍しくはなかった。夜に始まった日本対中国の男子団体。劇的な幕切れで中国の勝利。足になまりをつけたように重い足取りでホテルに戻った日本選手団。深夜ということもあり、ホテルのレストランは閉まっている。疲れ切った選手たちは、空腹に耐えながらベッドに滑り込むことしかできなかった。
 一方、中国は選手団付きの料理人を本国から帯同させていたので、激戦の後、温かい食事を取ることができた。その後の個人戦でも中国は勝利を重ねたのは言うまでもない。

 現在は、日本選手団も大きな大会には栄養士を帯同させ、常に力が発揮できる「和食」などを準備している。最近の日本の卓球選手の活躍にはこういう食のサポートが欠かせなくなっている。

 JA全農は香港オープンでは日本選手団をサポートし、ドイツオープン、今回のT2ダイヤモンドでは日本選手団のみならず、世界から集まってくる卓球選手たち、スタッフにおにぎりなどの提供をしている。
 また、今年からはすべてのワールドツアーの前に食材をトレーニングセンターに送り届け、サポートしている。また、子どもたちの全国大会、全日本選手権ホープス・カブ・バンビの部も後援している。 
 日本の卓球選手や大会にはこういう陰のサポーターがいることを忘れてはならない。
  • 海外選手にも好評のおむすび。写真はカルデラノ

  • フランチスカは丸ごといただきます!

  • 日本選手団のスタッフの力にもなってます

  • ファルクにもおすそ分け

  • メディアカンファレンスに登壇した高須代表取締役社長(右端)

  • 日本の食でパワー充電!

●男子シングルス1回戦
水谷隼(日本) 10、−9、−5、9、2、−0、4  オフチャロフ(ドイツ)

 1ゲーム目、スタートからオフチャロフが飛ばしていく。10−5から水谷がジリジリ挽回し、10−9で早くもオフチャロフはタイムアウト。水谷のドライブレシーブで10−10に追いつく。最後は水谷がYGの下回転サービスでエースを取り、11−6と逆転でゲームを先取。
 2ゲーム目からはオフチャロフのペーストなり、1−2とゲームをひっくり返された水谷。4ゲーム目を取り、2−2にして、FAST5になった5ゲームを取るも、6ゲーム目がオフチャロフが取り、3−3とされ、最終ゲームへ。
 最終ゲーム、4−4。最後は思い切って渾身のバックドライブで勝負を決めた。ネット記事やワイドショーを騒がせていた水谷が、もやもやとした空気を振り払うような最高のプレーを見せた。

——試合を振り返ってください。
「T2は特別なルールなので、今回接戦をものにできたので良かった。この半年間、5試合くらい、マッチポイントを握っていてから逆転負けが続いていて、苦しい試合ばかりだった。今日も、マッチポイントを取ったときに負けるんじゃないかと不安になったけど、最後は自分を信じてプレーができて良かった。この接戦をものにできたことはこれから先の試合にも生きてくる。次も苦しい試合を勝ちきれるように頑張ります。今日は相手が積極的に攻めてきて、守りになることが多かったけど、守りで緩急をつけて点数を取れることができたし、サービスで点を取ることもできた」
——1ゲーム目、ゲームポイントを取られてからの逆転したのは大きかったと思う。
「1ゲーム目はあっという間に点数が離れた。今日はトスで勝って、サイド(場所)を取った。このコートは光の影響を受けにくいサイドがあるので、1ゲーム目をそのサイドを取って、1ゲーム目を絶対取りたかったけど、序盤からリードされた。1ゲーム目を取られていたら2ゲーム目も取られたと思う。逆転できたのは、たまたまですね」
——後ろのLEDの文字の白さや背景のライトも気になるけど。
「気にすればするほど見えなくなるので、何も考えずに適当に打つしかない」
——最終ゲームの前の気持ちはどういう感じだったのだろう。
「最近はゲームオールでは連敗、負け続けだったので、今日もそういう展開かと思った。負け方が良くないパターンかと思ってました。戦術も考えるけど、最近の悪い流れを絶ちきるように、気持ちで負けないようにプレーしました」
——最終ゲームの4−4で、サービスがネットインしてミスしたかと一瞬ヒヤリしました。
「ロングサービスをするのは決めていたけど、まさかネットインするとは思わなかった。相手もチキータしようとしていたので入っていたらかなりの確率でサービスエースを取れていたんじゃないか。読みは悪くなかった。いつもよりサービスの質が低かったかな。次は相手は絶対チキータをしてくると思ったので、それまでフォア前への縦回転のサービスをツッツキで返していたので、最後はそのサービスを出しました。最後、ループではなくて、バックハンドで振り切れたのは成長したところなのかと思います」
——昨日は、代表争いをしている丹羽選手が勝っているけど、その影響は?
「それはないですね。状況的には、ぼくのシングルス(2枠入り)は難しいと思うので、あまり気にしないで、何とか3番手に選ばれるように頑張るだけです」
  • 良く守り、果敢に攻めた水谷

  • 序盤のオフチャロフの攻撃は素晴らしかった

  • 最後は

  • 勝利を決め、安堵の表情の水谷

●男子シングルス1回戦
林昀儒(チャイニーズタイペイ) −10、7、−10、3、3、4   張禹珍(韓国)

 世界10位の林昀儒と14位の張禹珍の対戦。林昀儒は前回のT2マレーシア大会の優勝者だ。お互い互角の展開でゲームカウントは2−2となり、FAST5に突入。攻める張禹珍と、柔らかいボールタッチで張の攻撃をかわしながら連続強打を放つ林。
 5、6ゲーム目を林が取り、激しい試合を制した。17歳ながら落ち着いた試合ぶりを見せた。

●女子シングルス1回戦
陳夢(中国) 4、5、7、3  馮天薇(シンガポール)

 一時期、勝てなくなっていた馮天薇が復活しつつある。不調と言うよりも33歳という年齢のための力の衰えかと思っていたが、世界ランキングを9位まで上げてきた。トレードマークだったちょんまげではなく、少年のようなショートカットにしたせいか、動きまで若々しく感じられる。
 馮天薇の上昇の秘密はコーチかもしれない。中国の国家チームを定年で引退した呉敬平コーチが馮天薇のベンチに座っている。この呉コーチは、かつて王皓、馬琳という世界チャンピオン、五輪金メダリスト、そして最近では樊振東を指導したカリスマコーチなのだ。
 一方、陳夢のベンチにはかつて呉敬平の教え子だった馬琳が座っている。女子選手にとってコーチの存在は大きい。両者のベンチは師弟対決となっていた。
 しかし、6月以降、世界1位の座を死守する陳夢の壁を馮天薇が突き崩すことは困難だった。ドライブの威力と言い、守りから攻めへの転換の早さと言い、陳夢に隙はなかった。「呉敬平マジック」も世界1位には通用しなかった。

●女子シングルス1回戦
田志希(韓国)  −3、5、9、−9、3、−3、3  平野美宇(日本)

 対戦成績では3勝0敗と平野美宇にとって分の良い相手の田志希。五輪代表レースで石川佳純と激しく争っている平野。その石川が前日1回戦で敗れているので、是が非でも勝ちたい一戦。1ゲーム目から平野の集中力は素晴らしく高い。11−3でゲームを先取。
 2ゲーム目、平野が打ち急ぐ場面もあり、終始、田志希がリードして11−5で取り返す。
 3ゲーム目は一進一退。7−7から田志希が離し、11−9で連取。いつもの平野のプレーではない感じがする。
 4ゲーム目、5−5、6−6、7−7から田志希がサービスミス。次を平野は攻撃で得点し、9−7とする。さらに3球目フォアドライブで10−7。10−9とされるも最後はフォアのカウンタードライブを決め、11−9として、ゲームカウントを2−2とした。
 5ゲーム目はFAST5になり、5本勝負。5−3で田が取る。チームワールドカップでも両者は対戦していたが、田の動きはこの日のほうが遙かに良い。
 6ゲーム目、スタートから平野は攻めまくる。5−3で取り返し、最終ゲームに突入した。
 7ゲーム目、いきなり長いラリーを平野が制し、1−0でスタートしたが平野のミスがあり、1−2。平野のバックドライブがクロスに決まり、2−2。3−3から次を平野は台上フリックのミス。最後は田のバックドライブが平野のブロックをはじき、5−3で田が平野を下した。
 試合後のミックスゾーンで、平野の目から涙がこぼれた。それは単なる悔し涙ではなく、重圧の中で自分のプレーができなかった、自分への怒りの涙だったのかもしれない。

 試合後の平野のコメント。
——試合を振り返ってどうですか?
「2ゲーム目の凡ミスが多かった。あまり前のことは考えないようにしたけど、良いゲームができる時とできない時の差が大きい。海外の選手からすれば単なる試合でも、私たちはプレッシャーがかかっている。その時に全然自分のプレーができない、こんなんじゃ(五輪へ)出場しても……今のままじゃだめだと思うので、あと2大会に賭けたい。次の試合(北アメリカオープンとワールドツアーグランドファイナル)に向けて死ぬ気で卓球に賭けるように頑張りたい。同じような負けはしたくない」

——1ゲーム目は相当集中していた。しかし、同時に重圧が大きかったのか?
「1ゲーム目は良かったけど、2ゲーム目に自分にミスが出たら相手の調子が上がってきた。ずっと同じように心を保てたら勝てたと思う」

——最終ゲームの前の心理は?
「負けている時には思い切ってできるのに、リードしたり、3−3になった時に勝ちたい気持ちが出てきてしまう。打ち急いだり、単調になってしまう」

——前日、石川さんが負けたことが心理的に影響はありましたか?
「私が今日勝っても負けてもリードしている状態なので、思い切ってできるかなと思うけど、今日は焦ってしまったり、(ボールを)入れにいってしまうことがあった。あと2大会で決まるので、どれだけ自分のプレーができるか、成長した自分を見せたい」
  • ブロック技術とカウンター、底が知れない林昀儒

  • 五輪イヤーに向けて、怖い存在になりそうな馮天薇

  • 1ゲーム目の攻めは良かった平野だが・・・徐々に攻撃が決まらなくなった

  • 五輪出場への重圧か。ベンチでは不安げな表情を見せた

  • 落ち着いたプレーで逆転勝ちした田志希

  • 陳夢は軽快に勝利


●男子シングルス1回戦
林高遠(中国) 8、9、10、−9、4 ファルク(スウェーデン)

 打ちまくるファルクに対して、中陣からのドライブで粘った林高遠。両ハンドのカウンターを浴びせ、スマッシュチャンスを奪った。世界選手権2位のファルクは1回戦で沈んだ。
 
●女子シングルス1回戦
孫穎莎(中国) 9 、2、−9、6,1   鄭怡静(チャイニーズタイペイ)

 女子は第1シード、世界ランキング3位の孫穎莎が登場。東京五輪の中国女子の代表は、現時点で五輪金メダリストの丁寧、世界ランキング1位の陳夢、同2位の劉詩ウェンの3人が有力視されている。
 しかし、先のチームワールドカップの決勝で日本の伊藤美誠を逆転で下した孫穎莎の存在感は大会ごとに増している。19歳の孫穎莎は、ベテランの丁寧に故障とかの不安があれば、すぐにでもその座を引き継ぐだけの強さをすでに備えている。
 世界11位の鄭怡静を圧倒した孫穎莎の両ハンド強打。恐るべしだ。

●男子シングルス1回戦
鄭栄植(韓国) 5、10、−7、3、−4、−2、3   梁靖崑(中国)   

 世界7位の梁靖崑に、世界21位の鄭栄植が挑んだ。韓国の貴公子とも言われるイケメンの鄭栄植は、昨シーズンはTリーグのT.T彩たまでプレーし、日本にもファンが多い。
 出足から飛ばしたのは鄭栄植。バックドライブが次々と梁靖崑を襲い、先に勝利に鄭栄植が王手をかけた。しかし、FAST5で梁が息を吹き返し、勝負は最終ゲームへ。5−3で鄭が梁を破り、雄叫びを上げた。ワールドチームカップのリベンジを果たした。

●女子シングルス1回戦
丁寧(中国) 8、−8、6、7、2 何卓佳(中国)

 10代の時から中国女子を支えてきた丁寧も29歳。今月上旬のチームワールドカップでは準決勝で腰を傷め、今大会への出場も危ぶまれたが、動きは悪くない。リオ五輪のシングルスと団体で2個の金メダルを獲得した彼女のモチベーションは、来年の東京五輪で有終の美を飾ることだろう。
 しかし、孫穎莎がすぐ後ろに迫っている。チームの精神的な支柱でもある丁寧の存在感は大きく、大舞台での経験を買われて3度目の五輪の舞台を踏む準備を彼女はしている。
 そんなスーパースターに襲いかかったのは21歳の何卓佳。中堅にさしかかる年齢の何卓佳は勝つことでしか、自分を証明できないはずだ。前陣からの両ハンドの異質攻撃を、丁寧は前・中陣でしのぎつつ、カウンターで狙う展開。打球点を変えたり、回転の変化をつけながら何卓佳を崩していった。4−1で丁寧がベテランの巧みなプレーで下し、準々決勝進出を決めた。
  • 強烈なフォアとバックのコンビネーションで梁靖崑を沈めた鄭栄植

  • 韓国ベンチは選手が交代で入る。昨日敗退した李尚洙がサポート

  • 林高遠は落ち着いて表ソフトのファルクを攻略

  • 動きの良い孫穎莎。次は丁寧と対戦だ

  • 昨年のグランドファイナルでは丁寧に勝利していた何卓佳だが今回は力の差を見せつけれられた

  • 厳しい両サイドのボールを放った丁寧が勝利

 世界の卓球ではヨーロッパの弱体化が深刻な問題である。ツアーの結果によるトップ16人が参加するT2や12月のワールドツアー・グランドファイナル(GF)には、ヨーロッパからは男子3人だけ。女子はゼロ。GFには中国女子から10名がノミネートされ、日本からも女子は4名がノミネートされ、女子では16名中、中国と日本で14名を占めている。完全に卓球が「アジアのスポーツ」となっている。この状況で、スポンサーがつくかどうかも微妙だ。
 ヨーロッパ選手がワールドツアーになかなか参加できずに、世界ランキングを上げられない理由はある。お金の問題だ。
 ヨーロッパ選手は生活の基盤がドイツのブンデスリーガやロシアリーグ、フランスリーグなどのクラブのチーム戦。まともにツアーに参戦していたら「本業」のリーグ戦の出場は相当タイトなものになる。
 ボル(世界7位)やオフチャロフ(同12位)などのヨーロッパのトップ選手でも、協会が遠征費をすべて出せない。そのために彼らが世界ランキングを上げるための試合参加経費を卓球メーカーなどが補填する。ゆえに、彼らはワールドツアーなどでは協会代表ウエアではなく、自分の契約メーカーのウエアを着て出場する。
 また、ヨーロッパではプロコーチで生活するのも大変なので、指導者の人材不足に陥り、それが弱体化に拍車をかけている。卓球のアジア化はITTF(国際卓球連盟)にとっても、卓球の将来のためにも何のプラスもない。加盟協会が226となり、競技団体の加盟協会数としてはトップになった卓球。グローバルスポーツを標榜するにもかかわらず、その実態はグローバルではなく、アジアスポーツに傾いている。
 世界ランキングを重視すればするほど、お金を出せる日本、中国と、お金がないヨーロッパとの格差は広がっていくだろう。

 近年の日本の躍進にはいくつかの理由がある。
 ひとつは有望な子どもたちを育成してきた全国各地の熱心な指導者たち。ボランティアの人もいれば、プロコーチの人もいる。それをサポートしてきた日本卓球協会。この指導体制がヨーロッパのそれを遙かに凌駕している。
 そして、もうひとつの理由はトップ選手の環境を作っている資金だろう。かつては選手が世界選手権に参加するにも自己負担金があったが、それはすでに昔話。今や、トップ選手の遠征費は協会が負担し、自費参加と言われる選手たちも所属するチームやスポンサーが拠出する。本当の意味で自費参加する選手は数少ない。
 日本選手は企業や学校が選手をサポートし、トップ選手にはスポンサーがいくつもついており、活動費で困ることはなく、逆に女子のトップ選手のように専任のコーチ、マネジャー、フィジカルコーチが遠征にも帯同し、国際大会には数十人の日本選手団が移動する。世界最強の中国よりもはるかに大きなサポートマネーが日本を支えている。
 しかし、これらのお金は永遠のものだろうか。東京五輪が終わっても、これらのお金が支えてくれるのだろうか。それは予見できない。

 世界ランキングの支配による選手への縛りの強さ。しかし、世界ランキングを得るためには豊富な資金が必要。それを出せるのは中国と日本だけ。ポイントを得るためにツアーに出ても、賞金は少ない現状。
 世界ランキングによる支配と、それに出場することが選手の生活、そして収入と時間をタイトなものにしていく事実。この二律背反に、世界の卓球が苦しんでいる。この現実をITTFは直視しているのだろうか。
 知的でスピード感のある素晴らしいスポーツ、卓球。日本での卓球人気も高まっている。
 さらに卓球が生涯スポーツとして人々に愛され、プロスポーツとしてもステイタスを高めるために、越えるべき現実と目指すべき理想を明確にしなければならない。
  • T2シンガポール大会の女子もオールアジア。欧州勢は苦しい状況に陥っている

  • 今年6月のジャパンオープンで、契約メーカーのウェアでプレーするオフチャロフ

 卓球の世界のトップ選手たちは、ある種の苛立ちを持って毎週のようにある国際大会を戦っている。
 10月以降、ワールドツアーのスウェーデンオープン、ドイツオープン(プラチナ)、11月に入ってチームワールドカップ、オーストリアオープン(プラチナ)、T2ダイアモンド(シンガポール)、男子ワールドカップ(中国)。トップ選手たちは毎週のように遠征を続け、戦う。プラチナ大会とは獲得できるランキングポイントが高い大会で、年間6大会ある。
 選手たちはアジアとヨーロッパを往復しながら、時にはホテルのベッドで目が覚めた時に「ここはどこだろう?」と一瞬わからなくなると言う。

 各国を代表する選手たち、トップを目指すジュニア選手たちは自分の位置を世界ランキングによって確認する。言い方を変えれば、選手たちは世界ランキングによって支配されている。
 日本でも世界選手権や五輪の選手選考は世界ランキングが基準となり、選手たちは世界ランキングを上げるためにせっせと国際大会に出場する。特に、昨年2018年1月から世界ランキングの計算方式が変わってからは選手へのプレッシャーは大きい。
 それまでは選手には持ち点であるレイティングポイントがあり、大会にある時期出場できなくても持ち点は変化しなかった。しかし、現在は、過去1年間の大会での上位8大会の獲得ポイントの合算がその選手のランキングポイントになっているため、選手は試合に出続けないとランキングが下がっていく。これはいわゆるテニスのATPツアーのランキングとほぼ同じと言われている。
 つまりツアー主催者としてはトップ選手に試合に出てほしい。そのためにはランキングがすべてを支配するシステムを作りたいのだ。それはそれぞれのツアーにはスポンサーがつき、トップ選手が出場することによってスポンサーもその大会に価値を見いだし、お金をだすためだ。

 選手サイドからの視点はこうだ。ワールドツアーやワールドイベント、T2ダイヤモンドのイベントのカレンダーが無茶すぎる。アジアとヨーロッパの移動が選手への身体に負担がかかり、毎週のように行われるツアーへの参加では強化もできない。しかも、賞金が少なく、選手だけで行くのも大変なのに、コーチなどを帯同すると完全に赤字となる。
 プラチナ大会と言われるツアーでも卓球では賞金総額が2億円ほどで、すべての大会で優勝しても2千万円ほどだから、ほかのツアーに参加したとしても賞金だけで生活できる選手はいない。トップ選手たち(もしくは協会)はランキングのためだけに経費をかけてツアーに参加する。
 獲得賞金で生活できないツアーへの参加。しかし、参加せざるを得ない世界ランキングの縛りと支配が選手たちを苦しめている。
  • ワールドツアー・ワールドイベントを転戦する丹羽。ハードなスケジュールをこなす

●男子シングルス1回戦
丹羽孝希(日本)  10、−8、6、−3、3、2   カルデラノ(ブラジル)

 先週のオーストリアオープンでは世界ランキング6位のカルデラノが同11位の丹羽孝希を4−2で破っている。二人の対戦はこの1試合のみ。
 1ゲーム目、丹羽が7−1とリード。そこからカルデラノがジリジリと追い上げ、8−8で丹羽は追いつかれる。10−10から丹羽が4球目でフォアドライブを決め、11−10とゲームを先取した。(T2ダイヤモンドではジュースなしのルール)
 2ゲーム目からカルデラノのドライブが決まりはじめ、出足からリードを奪うも、中盤から丹羽のカウンターが炸裂し、8−7でカルデラノがタイムアウト。次の1本をカルデラノの打ちミスで8−8。10−8からの激しい打ち合いをカルデラノが取り、11−8で取り返した。

 3ゲーム目、丹羽のミスが減り、カルデラノには焦りが見え始めた。11−6で丹羽が奪い返した。
 4ゲーム目、1本目からカルデラノのハンマースマッシュが飛び出し、そのまま8−0とリード、11−3とあっという間にカルデラノがゲームを取り返し、ゲームカウント2−2としてFAST5に突入した。
 FAST5の5ゲーム目、丹羽の動きは悪くない。4−3からフォアストレートに強烈なドライブを決め、5−3でゲームを取った。
 6ゲーム目、2−1からカルデラノのフォアクロスのドライブをカウンターで打ち返す丹羽。最後はサービスエースで5−2、丹羽が勝利した。丹羽が要所でカルデラノのパワードライブをブロックでしのぎ、時にはカウンタードライブで打ち返し、ゲームの流れを最後に引き寄せた。

「カルデラノはチキータがうまいので、今日はロングサービスを多くした。また、FAST5になってからも思い切ってロングサービスを多く出した。T2は1回戦から強い選手と対戦するので良い経験です。東京五輪に出られるように頑張りますが、もし出られたらメダルを目指して頑張っていきます」と試合後の丹羽。

 先週のオーストリアオープンまではこのT2への出場権を持っていなかった丹羽。オーストリアから日本に帰国し、家に着いた時にT2への繰り上がり出場が決まったことを聞き、シンガポール行きの準備をした丹羽。中国選手などのキャンセルでつかんだT2行きの切符。これは他力だが、この日の試合では見事に自力で勝利をつかみ、五輪代表レースにとっては貴重なポイントを獲得した。
  • ボールに食らいついた丹羽。ここぞの強さを見せた

  • 凡ミスも少なく、超絶カウンターも炸裂

  • 大きなプレーはあったが、細かいミスが命取りとなったカルデラノ

  • 倉嶋監督とガッチリ握手!

●男子シングルス1回戦
フランチスカ(ドイツ) 2、10、10、−4、3 李尚洙(韓国)

 東京五輪での卓球男子のライバル国はドイツと韓国。五輪では日本男子は準々決勝か準決勝で、この両国と対戦する可能性がある。手強い相手だ。
 ドイツの五輪代表は、ボル(世界ランキング7位)、オフチャロフ(12位)、フランチスカ(17位)でほぼ決まり。シングルス枠はボルが確実で、2人目のシングルス枠をかけて12年五輪銅メダリストのオフチャロフと急成長のフランチスカが争っている。
 韓国の男子は、張禹珍(ジャン・ウジン/世界14位)、李尚洙( イ・サンス/ 16位)、鄭栄植(チョン・ヨンシク/23位)の3人が今年に入って五輪代表に内々に決定。張禹珍は卓球王国のインタビューで「ワールドツアーでは3人で話し合いをして、次の対戦相手に対する戦術をお互いがアドバイスしている」と語っている。12月まで激しく争う日本と違って、すでに韓国は「ワンチーム」になっている。
 
 俊足からの強打が得意の李尚洙に、両ハンドの一撃で仕留めるフランチスカがどう戦うのか。
 出足の2ゲームをフランチスカが奪う。3ゲーム目、8−9のラリーでバックに回り込みクロスにサイドを切るドライブを放った李尚洙。このボールをなんとフランチスカが回り込んでカウンターで李尚洙のフォアを打ち抜き、9−9。10−10からフランチスカは速い下回転のロングサービスを李尚洙のフォアへ送り、エースを取り、3ゲーム連取した。
 4ゲーム目は李尚洙が取り、5ゲーム目以降はFAST5(5点先取)に突入。
 5ゲーム目、4−3とフランチスカがマッチポイント。最後は台上バックドライブのレシーブでフランチスカが勝利した。「T2は初めての経験だったけど、良い試合ができてハッピーだよ。次もベストを尽くすよ」(フランチスカ)。

●女子シングルス1回戦
陳幸同(中国) 7、5、5、−9、−2、4 ユ・モンユ(シンガポール)

●女子シングルス1回戦
伊藤美誠(日本) 6、5、−8、8 、3  石川佳純(日本)

 世界のトップ16人による高額賞金と世界ランキングへのボーナスポイントが付与されるT2ダイヤモンド。シンガポール大会の初日にビッグマッチが待っていた。
 いきなり世界ランキング7位の伊藤美誠と同8位の石川佳純が1回戦で対戦。先のオーストリアオープンで五輪代表を決めた伊藤と、2人目のシングルス枠を平野美宇と激しく争う石川が戦う。二人の対戦は8カ月ぶり。
 国際大会での対戦成績は石川の5勝2敗。しかし、最後は1年以上前の韓国オープンでの対戦。ただし、国内では3月のジャパントップ12の決勝で対戦し、石川が勝っている。一方の伊藤は先週末のオーストリアオープンで優勝し、勢いに乗っている。
 1ゲーム目、出足から一進一退、5−5。伊藤が8−5と離し、11−6で伊藤が先取。要所で伊藤のサービスが効いた。
 2ゲーム目、伊藤が終始、サービスとレシーブでゲームの主導権を取り、11−5で連取。
 3ゲーム目、速い展開で勝負を決めたい伊藤と、1本でも粘り、伊藤のミスを誘いたい石川。6−6と互角の展開。8−8から石川が攻め、3本連取し、11−8とゲームを奪った。 
 4ゲーム目、伊藤が3−0と出足でリード、10−4とゲームポイントを取るも、そこから打ちミスが続き10−8まで詰められたが、最後は攻めきり11−8で、ゲームカウントを3−1とした。
 5ゲーム目、FAST5(5点先取ルール)になったが、5−3で伊藤が勝利。伊藤は終始長いラリーにせずにサービスからの3球目、レシーブからの4球目で石川を圧倒した。

「1、2ゲーム目は私らしい卓球ができて取れた。3ゲーム目を落としたけど、また自分らしいプレーをしようと心がけました。石川さんとは切磋琢磨しているが、こういう場で戦うのは重要だと感じています」と伊藤のコメント。
 伊藤の多彩なサービスと両ハンドでの変化と速攻。その変貌と成長に、石川はコートの向こうで戸惑いの色を隠せなかった。
  • 甘いボールがあれば、すかさず伊藤のスマッシュが飛んでくる

  • 多彩なサービスでエースを量産。伊藤の進化が止まらない

  • 石川は強打を打たせてもらえなかった

  • 日本選手同士の初戦。ベンチにコーチは入れず、孤独な戦い

  • 男子一回戦ではフランチスカが得意のバックハンドで李尚洙を圧倒

  • 陳幸同はFAST5に入ってから苦しんだが辛くも勝利

現在行われている、T2ダイヤモンドシンガポール大会の選手ラウンジとVIPラウンジに、JA全農が毎日おむすび&いなり寿司を提供している。

日本選手のほとんどがオーストリアオープンからの転戦となるだけに、日本のお米は何よりもうれしく、戦うパワーとなるだろう。そして、おむすびの味も多種多様あり、おかか、高菜、肉味噌、鮭、昆布など日替わりで数種類ずつ提供されている。
選手ラウンジには毎日200個のおすむび、100個のいなり寿司、VIPラウンジにも各100個ずつと、数もたっぷり。

さらにメディアルームにも提供してくれているので、我々メディアも大助かり。早速初日から美味しくいただいております。

また、JA全農は11月15〜30日の間、シンガポールで飲食店舗を展開する牛角や哲平食堂と連携し、「ジャパンフードキャンペーン2019」を開催。
日本産の米、青果、牛肉を使ったメニューを提供している。
  • いなりおいしい!これはうれしいですね

  • 毎日200個のおむすびを提供

  • もりもりのおむすび!これは元気が出ます