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平成29年度全日本選手権速報

 1月15日、定刻の14時から少し遅れてスタートした開会式。前年度チャンピオンの水谷隼・平野美宇の両選手から天皇杯・皇后杯が返還され、いよいよ全日本選手権が開幕した。

 選手宣誓は平野美宇。「宣誓、私たち選手一同は、歴史と伝統のある天皇杯・皇后杯全日本卓球選手権の舞台に立てることを誇りに思い、スポーツそして卓球の力が世界を平和に導く礎(いしずえ)となることを信じ、感謝と尊敬の気持ちを忘れずに、一球に心を込めて最後までプレーすることを誓います。平成30年1月15日、選手代表、平野美宇」。最後のひと言まで、言葉に力を込めた。
 「すごく緊張したんですけど、開会式の前に水谷さんに『言葉を一つひとつ区切って、ゆっくり話せば噛まない』とアドバイスをもらったおかげで、噛まないで済みました(笑)。すごく感謝しています」(平野の開会式後の会見でのコメント)。

 また、開会式後には昨年のアジア選手権および世界選手権の成績上位者に、日本卓球協会から報奨金が送られた。贈られた選手と金額は下記のとおり。

●アジア選手権
女子シングルス優勝 平野美宇 500万円

●世界選手権大会
女子シングルス3位 平野美宇 300万円
女子ダブルス3位 伊藤美誠、早田ひな 各150万円
男子ダブルス3位 丹羽孝希、吉村真晴 各150万円
男子ダブルス2位 大島祐哉、森薗政崇 各250万円
混合ダブルス優勝 吉村真晴、石川佳純 各500万円
  • 選手宣誓を行った平野美宇

  • 開会式参加の9選手

 今日から平成29年度全日本選手権大会が開幕する。昨日あたりからすでにテレビのスポーツニュースでも「卓球の全日本」の前告知が始まっている。今週は、スポーツニュースでの扱いでも「卓球ウィーク」になるだろう。

 テレビの扱いでも相変わらず「女子への注目」が熱い。ディフェンディングチャンピオンの平野美宇(EA/大原学園・世界ランキング6位)、女王返り咲きを狙う石川佳純(全農・同4位)。その二人を追う伊藤美誠(スターツSC・同5位)と早田ひな(日本生命・同11位)。石川と早田は早々とベスト8決定で対戦するものの、皇后杯は間違いなくこの4人を中心に争われる。しかも、この4人が2020年の東京五輪の代表権争いの第1集団であることに異論を挟む人はいないだろう。
 世界ランキング11位までの4人での「世界レベル」での激闘は目が離せないものになる。

 一方、卓球愛好者の関心はマスコミや一般の人とはひと味違う。つまり、「誰が男子のチャンピオンになるのか」という部分に目が向いている。
 水谷隼(木下グループ・世界ランキング13位)が10度目の優勝で史上最多の優勝記録を更新するのか。
 しかし、関係者の間では「張本が史上最年少優勝記録を作るのか」「日本人世界最高位の丹羽孝希が頂点に立つのか」というトピックスがまことしやかに話されている。

 12月上旬のマレーシア(T2)で水谷選手と話をして、全日本選手権プログラム用にインタビューをしたのだが、そこで彼が口にしたのは「ボールへの不安」。ワールドツアーやロシアリーグで使用するボールと違う「ニッタクボール」への不慣れ。そこが彼の最大の不安要素だった。「前回が100の力だとしたら、今回は慣れないボールなので、自分の力は50」というネガティブな話だった。
 また、国際大会への参加が少ない水谷の存在感が薄いのは仕方ないだろうが、T2の試合を見る限り、力は落ちていない。

 その後、世界選手権最終選考会が行われ、張本智和(EA・同11位)が堂々の優勝と選考会突破で、怪物「張本株」が急上昇し、「全日本選手権も張本が一気に行くのでは」「今の張本なら水谷に勝つかも」という話が出てきた。
 もちろん世界ランキング6位の丹羽孝希(スヴェンソン)の充実ぶりや今シーズン好調の松平健太(木下グループ・同10位)の存在も見逃せない。

マレーシアから水谷が帰国し、10日ほど経った時に彼と会った。「ボールはどう?」と聞くと、「もう大丈夫」とひと言。あの時のネガティブな話は何だったんだろう、と思ったが、チャンピオンは自信ありげに笑っていた。
 ある時は、まるでか弱い少年のように自信なさげにナーバスになったかと思えば、ある時は自信満々に胸を張り、誰も自分に勝てないだろうという雰囲気を出す。これが王者の繊細、かつ図太い神経。予測不可能なメンタルなのだ。
 
 今大会は女子も男子も上位での戦いは世界レベルになる。日本卓球史上、例を見ない、ハイレベルの戦いが繰り広げられることは必至だ。なおかつ、世界中の卓球選手や関係者がこの「全日本卓球」に注目している。 (今野)

  • 10度目の優勝を狙う水谷隼

  • 張本の史上最年少優勝なるか

 男女シングルス以外の種目にも要注目。特に混合ダブルスは、例年にないほど豪華メンバーが出場する。世界選手権混合ダブルス優勝の吉村真晴/石川佳純(名古屋ダイハツ/全農)に、3度の全日本優勝を誇る田添健汰/前田美優(専修大/日本生命)をはじめ、強化本部推薦で張本智和/平野美宇(JOCエリートアカデミー/JOCエリートアカデミー・大原学園)、森薗政崇/伊藤美誠(明治大/スターツSC)、大島祐哉/早田ひな(木下グループ/日本生命)が出場。2020年の東京五輪で混合ダブルスが競技種目に加わったこともあり、例年以上にアツい戦いが繰り広げられそうだ。また、張本、平野は今年の第3回ユース五輪への出場が決定しており、混合ダブルスが含まれる混合団体に向けて手応えをつかみたいところだろう。

 また、強化本部推薦で男子ダブルスに水谷隼/大島祐哉(木下グループ)、松平健太/田添健汰(木下グループ/専修大)、女子ダブルスに伊藤美誠/早田ひな(スターツSC/日本生命)と豪華ペアが出場することとなっている。とはいえシングルスの実力だけでは勝てないのがダブルスの面白さ。意外なペアが優勝をかっさらう可能性もある。

 大会初日からスタートするジュニア男子の優勝候補大本命は張本だろう。もし優勝となれば水谷の持つ記録を抜いて最年少でのジュニア制覇となる。これまでも優勝候補に挙げられながら3位が最高成績の張本。実力は抜きん出ているだけにあとは自分自身との戦いか。
 その張本の対抗馬一番手は世界ジュニアでも活躍を見せた田中佑汰(愛工大名電高)。技術的に穴がなく、戦術の組み立てもうまい。昨年度までジュニア男子2連覇の先輩・木造勇人に続きジュニアのタイトルを母校にもたらせるか。宇田幸矢(JOCエリートアカデミー/大原学園)、戸上隼輔(野田学園高)も爆発力のあるドライブ速攻で優勝を狙う。

 今大会、ジュニア女子には平野、伊藤、早田らは出場せず。その中で優勝戦線を引っ張るのは長﨑美柚と木原美悠のJOCエリートアカデミーコンビと、世界ランキング35位の塩見真希(四天王寺高)の3選手。彼女たちを宮崎翔(四天王寺高)、出雲美空(遊学館高)、野村萌(愛み大瑞穂高)、岡崎日和(川口総合高)らが追う。中学生では大藤沙月をはじめとするミキハウスJSC勢が上位進出の可能性を秘めている。実力ある選手が揃っているが、大本命は不在。昨年度大会で強豪を連破して優勝を飾った笹尾明日香(横浜隼人高)のように、ニューヒロイン誕生の可能性もある。
  • 世界混合複王者の吉村/石川も出場

  • 昨年度優勝の田添/前田は4度目の優勝に挑む

  • 先輩・木造に続くジュニア王者を狙う田中

  • 前回ジュニア準Vの長崎はさらに力をつけている

 続いて女子シングルスの見どころを紹介していく。今年も女子の優勝戦線は平野美宇(JOCエリートアカデミー/大原学園)、伊藤美誠(スターツSC)ら黄金世代と石川佳純(全農)が中心となる。

 前回、早さと力強さを増したプレーで、史上最年少女王に輝いた平野。その勢いは止まらず、4月のアジア選手権では中国選手を3連破して優勝、世界選手権でも日本勢48年ぶりの3位入賞と輝かしい活躍を見せた。当たり出したら止まらない、両ハンドの猛攻は脅威的。攻撃力という点では日本女子の中では一歩抜けている。連覇に向けてカギとなるのはメンタル面。王座に向かって突き進んできたこれまでとは違い、今回は女王としての戦いとなる。相手選手が向かってくる中で、どれだけ攻めの姿勢を貫けるかがポイントとなるだろう。

 女王の座を空け渡した石川も、リベンジに燃える。ワールドツアーでも安定して上位に絡んでおり、世界ランキングも日本女子トップの4位。平野に対してもワールドツアーでは2勝0敗と勝ち越しており、他の日本選手とも相性は良い。トーナメントを勝ち上がる上で、苦手な戦型が少ない部分も大きな強みだ。昨年度大会こそ敗れたが大舞台での勝負勘は折り紙付き。平野とともに優勝争いのトップを走る。

 平野、石川を追う第一集団にいるのが、2018年世界選手権代表選考会優勝の伊藤と同2位の早田ひな(日本生命)。伊藤は8月に行われたワールドツアー・チェコオープンで石川に勝利し優勝。用具、プレースタイルを模索してきた1年だったが、着実にその成果は現れつつある。磨きのかかった意外性のあるプレーと、抜群の勝負度胸で初の全日本女王の座を射止められるか。
 これまで同級生の平野、伊藤の影に隠れがちだった早田だが、今年は初の世界選手権を経験し、女子ダブルスで3位入賞とブレーク。ドライブの球威は日本女子随一と言っても過言ではなく、今シーズンはT2リーグにも参戦し、数多くの試合経験を積んだ。上位進出が期待された前回大会では故障により満足なプレーができなかったが、その鬱憤を晴らしたいところだろう。

 昨年度大会でともに3位に入賞した佐藤瞳、橋本帆乃香(ともにミキハウス)のカット2人も上位に絡んでくるだろう。カットマンという戦型を考えると、手の内を知られている日本選手に対し、どのような突破口を見つけられるかがひとつのカギとなりそうだ。世界ジュニアで2年連続の3位入賞を果たした加藤美優(日本ペイントホールディングス)も上位候補の一人。持ち前のオールラウンドプレーに加え、ここ最近はパワーがついて一発で抜き去るボールも打てるようになってきた。勝ち上がると5回戦(ベスト16決定戦)で前田美優(日本生命)、6回戦で佐藤と対戦する組み合わせだが、ここを乗り切れば優勝戦線を騒がす可能性もある。

 社会人女王の松澤茉里奈(十六銀行)、学生女王の安藤みなみ(専修大)ら日本リーグ、学生界の実力者たちも上位を目指す。日本リーガーでは、この1年間での成長を感じさせる前田、森さくら(日本生命)に、一昨年度大会3位の加藤杏華(十六銀行)、サンリツの若きエース森薗美月に、実績十分の森薗美咲と昨年度ベスト8の鈴木李茄(ともに日立化成)らに注目。山本怜(中央大)、阿部愛莉(早稲田大)ら学生の実力者も意地を見せたい。
 ジュニア世代では伸び盛りの中学3年生・長﨑美柚(JOCエリートアカデミー)も躍進を狙う。左腕からのパワードライブはポテンシャル十分、分厚い黄金世代に割って入りたいところだ。独特の速攻を見せる塩見真希(四天王寺高)も同学年の平野らに負けじと存在感を見せたい。

 かつてないほどのタレントが揃う日本女子卓球界。平野の連覇か、石川の王座奪還か、それとも新女王誕生か。女王のイスをめぐる戦いは今年も熾烈を極めそうだ。
  • 昨年度、圧巻のプレーで頂点に立った平野は連覇なるか

  • 負けっぱなしじゃいられない。石川はリベンジに燃える

  • 初優勝を狙う伊藤は選考会を制して全日本に臨む

  • 左の大砲・早田は飛躍の全日本にしたい

 1月15日より、東京・東京体育館で全日本選手権(一般・ジュニアの部)がスタートする。昨年度大会は水谷隼(木下グループ)が史上最多の9度目の優勝、平野美宇(JOCエリートアカデミー/大原学園)が史上最年少優勝記録を更新と、球史に残る大会となった。
 今年も卓球王国ウェブでは特設ページを設けて試合速報から用具情報、出場選手のドラマまで、盛りだくさんの情報を現地より速報でお伝えしていく。開幕に先立ち、まずは男子シングルスの見どころを紹介して行こう。

 男子シングルスの優勝戦線を引っ張るのは、通算10度目の優勝を狙う水谷隼。昨年度大会まで、11年連続で決勝進出と全日本では圧倒的な安定感を見せている。今シーズンはITTFワールドツアー、ヨーロッパチャンピオンズリーグ、T2リーグと海外を転戦し、実戦の中でプレーを研ぎすませてきた。今大会の使用球である『ニッタク プラ3スタープレミアム』にやや苦手意識があるようだが、巧みな戦術転換と技術、何よりも「全日本での戦い方」を知り尽くしたこの男を、全日本の舞台で倒すのは容易ではない。

 その水谷を張本智和(JOCエリートアカデミー)、丹羽孝希(スヴェンソン)、松平健太(木下グループ)、上田仁(協和発酵キリン)らが追う。
 中でも注目は中学2年生の張本、この人だ。この1年は張本にとって飛躍の1年。初出場の世界選手権では男子シングルスで水谷を破り史上最年少でベスト8入り。さらにワールドツアー・チェコオープンではボル(ドイツ)を下し、史上最年少優勝。12月に行われた2018年の世界選手権代表選考会では、日本のトップ選手らをなぎ倒して優勝とその成長速度には驚かされるばかりだ。さらに完成度が高くなった両ハンドに加え、体もこの1年間で「シニア仕様」に進化。ガッチリとしてきた印象で、打ち合いでもシニア選手に負けないパワーが付きつつある。これまで男子シングルスでの最高成績は4回戦だが、昨年度の平野美宇の記録を更新する史上最年少優勝の可能性も十分にある。なお水谷との対戦となれば、その舞台は決勝。全日本で世界選手権の勝利の再現なるか?

 丹羽と松平は、ワールドツアーを中心に戦い、安定した成績を残してきた。1月発表の世界ランキングでは丹羽が6位、松平が10位で、日本男子では1、2位につけている。近年は全日本では上位にあと一歩届かずにいるが、充実の1年を経て優勝に挑む。順当に勝ち上がれば、水谷とは丹羽が決勝、松平は準決勝で対戦する。
 社会人3連覇を達成した上田も、この1年は目覚ましい活躍を見せている。昨年3月のジャパントップ12では水谷らを退けて優勝、ワールドツアーでも海外のトップランカーを次々に下した。日本リーグ所属選手の優勝となれば、平成17年度大会の吉田海偉(当時日産自動車)以来12年ぶりの優勝となる。

 昨年度大会で存在感を見せた吉田海偉(東京アート)や平野友樹(協和発酵キリン)、世界選手権代表選考会で活躍が光った大島祐哉(木下グループ)、吉田雅己(協和発酵キリン)、高木和卓(東京アート)、ドイツ・ブンデスリーガで好成績を残す森薗政崇(明治大)らも上位を狙う。インターハイ&全日本ジュニア王者の木造勇人(愛工大名電高)も力をつけており面白い存在だ。また、昨年度大会でスーパーシード下からファイナリストとなった吉村和弘(愛知工業大)のように、上位を引っ掻き回す選手が現れると、俄然大会は盛り上がりを見せる。

 今年も男子シングルスの優勝戦線の中心は水谷。その水谷への挑戦権をかけた戦いも白熱必至。白球にかける男たちの戦いから目が離せない。
  • 今年も戦いの中心は水谷。実績、実力、経験ともに抜きん出ている

  • 14歳の怪物・張本は伝説を残せるか?

  • 世界6位の丹羽は充実の1年を過ごした。2度目の戴冠を狙う

  • 松平はワールドツアーで好調をキープ