ひょんなことからボージックさんが体験した東ドイツの話になった。
1976年にプラハでヨーロッパ選手権があり、当時18歳だったボージックさんは西ドイツ代表として参加し、開会式で東ドイツチームの隣に並んだという。するとひとりの選手がボージックさんに「ボールを持っていないか」と話しかけたという。ボージックさんは驚いてすぐにポケットからボールを出して渡そうとすると「ここではダメだ」と言う。彼らは常に当局から監視されているので「資本主義のボール」をもらうのは問題なのだという。そこで、後で人目につかないところでボールを渡したという。
また、東ドイツから西ドイツの選手を見ようとやってきた観客もいて、話してみると彼らはその夜は駅で寝るという。何百キロも車を運転してきてホテルに泊まるお金もなく駅で寝るというのだ。心を痛めたボージックさんはチームメイトとお金を出し合い、彼らをホテルに泊めたという。
「まったく信じられないショックな経験だった」とボージックさんは語った。