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2017世界卓球デュッセルドルフ大会速報

 13歳でありながら、この天才少年は頭の良さをコメントに残す。
試合後の張本のコメント
「勝つチャンスがあったので悔しいです。ループドライブもカウンターするとほとんどオーバーミスするくらいに回転量はすごかった。サービスは効いていて、今大会で自信を持てた。サービスは横回転、逆横回転、縦回転の3種類を出され、ストップが高くなったり、チキータができなかった。コースも厳しくて思い切りチキータができなかった。
 水谷さんに勝って、世界ランク3位の許シンに1ゲーム取ったので、あと2、3年したら勝てないことはない。中国に勝てる選手になりたい。中国に届かないことは絶対ない。相手がどこの国でもひとりの選手として勝ちたい。

 6-9でタイムアウトを取られて、本気なんだと思ったし、許シンは声も出していたので警戒されていたのかなと思うとうれしい。
 水谷さんはオリンピックで許シンに勝っているし、まだ水谷さんを超えたわけじゃないので、自分はまだまだ強くなれる。今日は自分の80%は出せた。あとの20%はバックハンド。バックの大切さを知りました。

 ベスト8はうれしいけど、メダルとそれ以下じゃ全然違うので、やはりくやしい。(最年少)記録はうれしいけど、ここまで来たのでメダルを獲りたかった。記録よりも一枚のメダルが欲しかった」
●男子シングルス準々決勝
許シン(中国) 9、ー6、6、8、4 張本智和

13歳・張本智和、許シンに挑み、2ゲーム目を奪うも1ー4で敗れる……。

台上のチキータから完成度の高いバックハンドの攻守を誇る張本に対し、許シンはサービスを徹底してフォアに集めてきた。1ゲーム目の9ー10の場面で、フォア前へのサービスをチキータで勝負し、オーバーミスとなってこのゲームを落とした張本。2ゲーム目はサービスをよく見切り、フォアフリックでレシーブエースを奪う場面もあり、11ー6で取り返す。場内には「ア〜リモット!!」の声援もこだまする。

しかし3ゲーム目以降、許シンは張本のペースには決して乗らなかった。5ゲーム目の10ー4で迎えたマッチポイントでは、台上に浮いたボールをミドルへパワードライブで打ち抜いたが、一発で決めるような豪快なフォアドライブは、試合を通じてもほとんど打っていない。弧線の低いループドライブで絶妙に張本のミスを誘い、リーチの長いボクサーが距離を取って打っては逃げる「アウトボクシング」のよう。しかし、確実に得点は稼いでいく。

5ゲーム目は4ー5から、許シンが一気の6点連取。最後は張本もやや集中力が切れた感があった。13歳で挑んだ準々決勝の舞台。その器の大きさを随所で証明しながら、経験の差に敗れた一戦だった。
  • 張本、許シンのフォアサイドを何度も打ち抜いたが、及ばず

  • 許シンは裏面フリックも封印し、ローリスクな戦い方を貫く

 オフチャロフ選で素晴らしいプレーを見せた丹羽だが、樊振東にはカウンターを狙うチャンスが減り、苦しい戦いを強いられた。

試合後の丹羽コメント
「1ゲーム目、9-9に追いついたところで自分の得意なサービスを2本出して、2本ともきれいにフォアとバックに打ち抜かれたので、心が折れてしまい、出すサービスがなくなってしまった。途中からバックサービスを使うことになった。オフチャロフの時には、そのレシーブを狙うことができたけど、樊振東はフォアとバックに打ち分けてきたので、とても狙えなかった。
 出すサービスがなかったので、相手が取りづらいサービスをいろいろ出して、サービスは全部を出した感じです。相手のサービスは苦にならなかったのでそこで点を狙うという、いつもと逆の展開でした。そういう中で1ゲームを取れたのは次につながる。
 彼はコース取りがうまいのと、バックハンドの打点が高い。とてもやりづらい。ただ東京五輪を考えると最大のライバルになると思うので、彼に少しでも近づきたい」

 試合後、丹羽のプレーを評価した倉嶋監督のコメント。
「今までで一番内容は良かった。途中から出すサービスがなくなってしまった。丹羽の台上の技術、カウンターの技術はすごく上がっているので、今までは完敗だったけど、競るようになっている。収穫はあった」
●男子シングルス準々決勝
樊振東(中国) 9、7、9、ー8、6 丹羽孝希

丹羽孝希、随所に好ラリーを見せるも、前回大会に続いて樊振東に敗れた。
1ゲーム目から樊振東のチキータと3球目の台上バックドライブを警戒して、レシーブをフォアに集めた丹羽。2ー7とリードされてから9ー9まで追いつき、この1ゲーム目を先取したかったが、ここから樊振東がフォア前の強烈なチキータをストレート、そしてクロスへ2連発。樊振東が11ー9で先制する。

丹羽は2ゲーム目の中盤から、回転を利用されないようにナックル系のバックサービスをミドルに出し、樊振東のチキータを封じようとする。3ゲーム目の4ー4の場面では、得意のバックのカット性ショートから、回り込んでバックストレートへカウンタードライブで打ち抜く。この好プレーに会場がどよめくが、樊振東の10ー9のゲームポイントで、またもチキータを受けきれず。

樊振東も中国選手との対戦では、最近はここまでチキータは使わない。対チキータのカウンターなど、対策が進み、確実に有利な展開に持ち込めるとは限らないからだ。しかし、この試合では樊振東は最初から最後まで、チキータと台上バックドライブを積極的に使ってきた。中国選手のチキータに慣れられるのは中国選手だけ。そういう自信すら感じさせた。

「コーキ、ニ〜〜ワ!!」と地元ファンも声援を送ってくれる中、丹羽の反撃は4ゲーム目。バックサービスからの組み立て、両ハンドのカウンター合戦で得点し、11ー8で1ゲームを返した。しかし、5ゲーム目は1ー1から、樊振東が6点連取。大きく離され、最後は6ー10で3球目フォアドライブをクロスに浴びた。最後まで樊振東を崩すことに集中した丹羽だが、恐るべきボールの質の高さだった。
  • 丹羽、バックサービスからの展開で挑むも及ばず

  • 豪腕チキータ、樊振東の強さ

 序盤リードしながあも、各ゲームの後半での競り合いであと1本に泣いた日本ペアのコメントは以下の通り。

大島「最後のほうに相手からプレッシャーを感じ、やることがなくなってしまった。足りなかったのは、台上の精度。勝つチャンスはあったので、とても悔しい。
 今までは競ったゲームを勝ってきたのに、決勝は競ったゲームを落としてしまった。競ったところでやることがなくなった。戦術を徹底するのか、ひらめきを出すのか、中途半端になってしまった。
 樊振東には徹底してフォア前に行こうと言っていたけど、コースが甘くなったり、浮いてしまった。技術的には対等に戦えた。気持ちは負けてないけど、技術の精度が一つひとつ高かった。
 最後の5ゲームは6-4で許シンのサービスを2本連続でミスした。ストップは結構自信あるのに、あのサービスで一気にストップの感覚がなくなった。次にチキータをせざるを得なくなった。次にストップが浮いてしまって、打たれた。6-4からのレシーブがすべてだった。
 銀メダルを支えてくれた人に感謝したい。決勝で負けて悔しいけど、誇りを持って日本に帰りたい」

森薗「48年ぶりの銀メダルとしてとてもうれしいけど、決勝は勝つチャンスがあったのとても悔しい。序盤良いプレーもあったんですが、後半やることが定まっていなかったし、悪循環になった。要所でのひらめきが足りなかった。
 前回(優勝ペアにマッチポイントを握られながら負けた)と今回では、勝つチャンスは同じくらいだった」
●男子ダブルス決勝
樊振東/許シン(中国) 9、14、9、ー6、11 森薗政崇/大島祐哉

……惜しかった!
内容的には中国ペアと互角の戦いを演じながら、森薗/大島は1ー4で敗れ、銀メダル。

戦った5ゲームすべてで、先に9ポイント目を取ったのは日本ペア。スコアとしては非常に接近していたが、競れば競るほど中国ペアにはミスがなかった。特に2ゲーム目の終盤、日本ペアが3回のゲームポイントを握りながら、樊振東が驚異の両ハンドカウンターで得点を許さず。鬼神のごとく立ちはだかった。

それでも森薗/大島は4ゲーム目を奪い、5ゲーム目も10ー8でゲームポイント。ここで1本目のレシーブでチキータを選択し、樊振東にカウンターで打ち抜かれた大島は、2本目でストップを選択。これが台上に浮き、樊振東のパワードライブを浴びた。最後は11ー13。
前回大会の準々決勝、中国ペアとの最終ゲーム10ー8で大島が2本ともストップを選択し、逆転された森薗/大島。「今大会は最後まで自分たちから攻めていきたい」と大会中に語っていたが……。しかし、レシーブにはコートに立つ者にしか分からない読みや気配がある。周りの人間がどうこう言えることではないだろう。

台上でのストップ対ストップからの展開では、確実に日本ペアが上回っていた。今、中国のエースペアとここまで質の高い試合ができるペアは他にいない。2年前の悔しさを糧に戦ってきた森薗/大島ペア。その成長を証明してくれた、見事な銀メダルだった。
  • 森薗のチキータと大島のパワードライブで、中国ペアに迫った森薗/大島

  • 中国ペアの勝利のパフォーマンスは、前回の胸ドンより地味……

  • 決勝後のベンチ。チャンスはあっただけに悔しい

  • ベンチに入った王皓コーチと優勝ペア

●男子シングルス準々決勝
馬龍(中国) 5、ー8、4、ー5、4、9 ボル(ドイツ)

超満員の観客が踏みならす足音で、メインアリーナが揺れた!
地元ドイツの英雄ボルが、世界ランキング1位の馬龍に迫ったが、2ー4で惜敗……!

まともに打ち合っては勝機は薄いボル。馬龍のバックサイドへ不用意なループドライブを送れば、強烈なバックハンドのカウンターでフォアサイドを抜かれる。それに飛びつき、打ち返すだけのフットワークはボルにはもうない。
それでもボルは、まさに「秘術を尽くして」戦った。チキータもバックドライブも、カウンターのタイミングを外すために前に落とすボールを混ぜ、チャンスボールには回り込んでバッククロスのシュートドライブ。たびたび馬龍のフォアサイドを抜いた。ストップも得意なフォアストップではなく、バックでのストップを混ぜ、馬龍の攻撃を狙った。

会場は「ティーモ! ティーモ!」の大声援。朝の丹羽対オフチャロフも盛り上がったが、さすがボル。今大会一番の盛り上がりだ。ゲームカウント2ー3の6ゲーム目、8ー4でリードして盛り上がりは最高潮に達したが、ここから8ー8に追いつかれ、馬龍の強烈なフォアストレートのカウンターで10ー9のマッチポイント。最後はボルのブロックがネットを越えなかった。

これで男子のドイツ勢は全員が姿を消した。しかし、敗れたとはいえ、最後まで勝利の可能性に賭けたボルはさすがだった。観客から惜しみない拍手が送られた。 
●女子シングルス決勝
丁寧(中国) 4、ー9、ー4、10、6、6 朱雨玲(中国)

女子シングルス優勝は丁寧、2大会連続3回目のV!

バックハンドの守備が非常に堅く、ショートスイングのフォアハンドでのフォアミドルへの対応が非常にうまい朱雨玲は、丁寧に前陣でのミドル対ミドルのラリー戦を挑み、機を見て丁寧のフォアサイドを突いた。丁寧は対ミドルは大きく体をひねって打球するため、体勢が崩れやすく、不利な展開。1ゲームを先取したものの、続く2・3ゲーム目を連取された。鋭く短刀を振るう朱雨玲に、剣豪・丁寧は狭い部屋での戦いを余儀なくされ、十分に力が出せていない印象があった。

勝負のポイントは4ゲーム目。丁寧は7ー9とリードされ、このゲームを落とすと後がなくなるところで本領を発揮する。8ー9で、朱雨玲の威力あるレシーブドライブに回り込み、強靱なフィジカルを感じさせる強引なカウンター。これが決まって9ー9に追いつくと、朱雨玲のフォアサイドへ思い切って連続フォアドライブを打ち込み、台から下げて打ち抜く。

ここから試合は丁寧のペースだった。朱雨玲のフォアをうまく攻めてミドル対ミドルの展開に持ち込ませず、フォア・バック両面からのしゃがみ込みサービスでレシーブを崩して3球目攻撃を狙う。丁寧がゲームカウント3ー2とした6ゲーム目、丁寧7ー5のリードで、丁寧の後陣での執拗な粘りに、朱雨玲が根負けして打ちミス。この一本で勝負あった。最後はバックストレートへの回り込みパワードライブを決めた丁寧が、振り向いて歓喜のガッツポーズ!

孔令輝女子監督の緊急帰国という、非常事態に陥った今回の中国女子チーム。その余波を感じさせない強さを見せた丁寧。勝負師としての勘と強靱なフィジカルでみたびタイトルをもぎ取った。優勝後のショートインタビューで「3回目の優勝は想像もしませんでした。これは私だけの勝利ではなく、中国卓球チームの勝利です」と語った。
  • 丁寧、3回目の世界女王!

  • 素晴らしいミドル処理を見せた朱雨玲だが、及ばず

  • 丁寧、勝利の咆哮!

  • 観客席の丁寧応援団も歓喜!

●男子シングルス準々決勝
李尚洙(韓国) 7、ー10、8、7、5 黄鎮廷(香港)

男子シングルスの1枚目のメダルを獲得したのは、韓国の李尚洙!
ここまで男子ダブルスでの銅メダル1枚と、もうひとつ振るわなかった韓国勢だが、「張継科を破った男」李尚洙がやってくれた。台上から中陣まで、多彩な裏面ドライブを操る黄鎮廷を封じたのは、要所で効果的に使う李尚洙のロングサービス。昨日のサムソノフ戦でも効いていたが、モーションが小さくて直前までわかりにくく、非常に速い。李尚洙はこれで有利なラリー展開に持ち込み、両ハンドドライブの速攻で黄鎮廷を圧倒した。

「最高にハッピーです。今日はとても調子が良かった。明日は樊振東と丹羽、どちらが勝ち上がってきても1本1本に集中していきたい」と試合後のショートインタビューで語った李尚洙。世界ランキング20位の男が大躍進だ。
  • 李尚洙、強豪を連破して準決勝へ

  • 黄鎮廷は故障の影響もあるのか、動きにキレがなかった

 今大会、今までの中でのベストゲームではないか。
 丹羽の卓球は人間の反応速度の限界に挑むような速さだった。
 試合後、ミックスゾーンでは興奮するでも、笑顔をみせるでもなく、いつもの丹羽がいた。

試合後の丹羽のコメント
「オフチャロフはサービスの種類が多いので最後までそれに苦しめられました。それにボールにパワーがあってバックでは抑えきれないので、オールフォアでやっていきました。1ゲーム目、フォアのしゃがみ込みサービスを出してきて、あの対策をやっていなかった。すごく下回転がかかっていて、チキータが遅くなって、それを狙われていました。
 試合をやっているうちに気持ちがだんだん入ってきて途中からは絶対勝つんだという気持ちで戦っていました。競った時にはバックをつぶしていこうと思いました。
 彼には初めて勝つことができました。オフチャロフは世界ランキング5位なので向かっていくだけでした。彼のパワーボールはクロスにしか来ないので、それを狙って打ちました。
 樊振東には2年前の世界選手権でシングルスとダブルスで負けていて、今回もダブルスで負けているけど、今の試合のようにアグレッシブに攻めて勝ちにいきたい」


「ベスト8に二人? いつ以来ですか? というか、もうそんなのどうでもいいです」と倉嶋監督は笑った。彼もまた落ち着きを取り戻していた。

倉嶋洋介監督
「1ゲーム目、しゃがみ込みサービスに切り替えられて動揺してゲームを取られた。あのゲームを取っていたら4-1くらいだったかも。巻き込みサービスをフォア前とバック前に出して相手のチキータを狙っていくという戦術でした。打てるときにはフォアに打ちたいけど、どうしてもバックに集まってしまう。最後は良く力を抜いてフォアに打ってくれた。
 丹羽の持ち味である快速速攻が良かった。オフチャロフのフォアハンドはバックで処理するのは難しいので、それを回り込んでフォアで打っていこうと練習していて、それが相手を驚かせるようなボールになった。
 オフチャロフはサービスの種類が多いので基本はチキータ狙いだけど、難しかったらフォアのレシーブで相手を持ち上げさせてカウンター狙いだった。
 球威は上がっているし、前陣で相手のボールを受け止めるパワーがついてきた。タフな試合だったけど、最後まで集中力を切らさずによく頑張ってくれました」