●平成27年度全日本選手権速報

【条太】卓球選手における左利き

2016/01/06

 卓球のトップ選手には左利きが異様に多い。
 一般に左利きの割合は、時代と民族によらず10%程度とされているが、卓球のトップ選手の場合は事情が異なる。

 平成26年度全日本選手権のランク選手の場合、16人中、男女とも4人が左利きで25%だった。2015年11月発表の世界ランキングではトップ10のうち男子は4人、女子は2人で、割合はそれぞれ40%と20%だ。
 さらに、昭和13年以降のシングルスの全日本チャンピオンでは男子28%、女子16%、1952年以降のシングルスの世界チャンピオンでは男氏13%、女子17%、歴代五輪のシングルスチャンピオンでは男女とも14%が左利き(複数回チャンピオンになった人は1回だけカウント)という具合で、どの統計をとっても一般人の左利きの割合を上回っている。ただし、水谷は本来右利き、伊藤繁雄は本来左利きだが、それぞれ左利き、右利きとしてカウントした。

 それにしても齋藤清、星野美香といった往年の怪物選手たちを考えると、左利きには根っから運動神経がよい人が多いのではないかと思えてくる。そこで、左利きが有利にも不利にも働かないスポーツ、すなわち、左右が対称でなおかつ対人ではないスポーツの左利きの割合はどうだろうか。

 2012年ロンドン五輪の日本代表選手では、陸上、体操、水泳の選手を調べると、左利きの割合はわずか4%で、むしろ一般人より少なかった。よって、卓球のトップ選手に左利きが多いのは、左利きに運動神経が良い人が多いからではなくて、卓球には左利きが有利だからだということになる。

 その利点とはもちろん、希少価値によるやりにくさと、ダブルスへの抜擢などによる上達機会だ。
 さて、今年の全日本では何人の左利き選手がランク入りするのだろうか。(伊藤条太・卓球コラムニスト)

【速報】新契約した丹羽の最初の正念場は張本戦!?

2016/01/06

「プロフェッショナルとして、また新しいスポンサーに対して、これからは結果が求められる」と丹羽孝希は語った。大学生でありながらプロの卓球選手であり、フランスのクラブとも契約し、1月1日付でヤマト卓球、スヴェンソンとのダブルスポンサー契約を終えた。プロとして「最も稼ぐ日本男子選手の一人」になった。
 その契約直後の全日本選手権である。今までにない重圧がかかるかもしれない。しかも、スーパーシードの丹羽にとって初戦で、もし小学6年生の張本智和(仙台ジュニア)が勝ち上がってくれば一戦を交えることになる。

 張本は先の記事でも触れたように、12月の世界代表選考会で岸川聖也(ファースト)、森薗政崇(明治大)、森田侑樹(シチズン)などの一般選手を堂々たる試合で破っている。初戦の相手としては要注意。敗れた後に森田が「あれは子どもの卓球じゃない。モンスターだ」と語るほどの才能を発揮した。
 張本は昨年春にそれまでのヤサカから電撃的にタマス(バタフライ)に契約を変えた選手だ。タマスからVICTAS(ヤマト卓球)に契約を変えた丹羽との戦いが実現すれば何か因縁めいているではないか。
 丹羽と言えばクールすぎるほどの試合ぶりが特徴だが、今年ひょっとしたら熱くなる丹羽を見ることができるかもしれない。 (今野)*文中敬称略

  • ヤマト卓球の松下社長と握手する丹羽選手

【速報】異常性を持たないチャンピオンがいた

2016/01/06

 「チャンピオンになる人はある意味、異常者だと思う」という水谷隼の言葉は正しいと思うが、良い意味での異常性を持たないチャンピオンもごく希ではあるがいた。
 1991年度の全日本選手権の男子シングルスで優勝した渡辺武弘だ。それまで彼は全日本選手権での上位の常連で、決勝に進んだことがあったのに力を発揮できないまま選手としてのキャリアを終えようとしていた。その大会で彼はすでに30歳を迎えていた。

 彼の人柄の良さは評判だった。卓球はもちろん強かったが、彼を悪く言う人は聞いたことがなかった。
 しかし全日本のシングルスでは優勝できない。当時のインタビューで渡辺はこう語っている。
「おまえは人がいいから勝てないんだよ、とのべ何百人から言われましたよ。自分は勝負事に向いていない性格だなと暗示がかかっていた。齋藤清(全日本8回優勝)なんかは、個性的だし、自己主張もするし、執念もある。オレもああならなきゃいけないのかな、と。
 卓球部(当時協和発酵)のOBに、渡辺は渡辺らしく卓球を極めればいいし、極めていけば人が良くても絶対勝てる、と言われた。それまでは「自分の性格に否定的だったのに、その時の言葉で全日本選手権は自分らしく戦おう、自分を作ったりしないで、あいつは万年2位だと言われようが自分らしく試合をやろう、と吹っ切れた」(1991年渡辺)

 執念がないといわれた渡辺だが、優勝した全日本選手権での戦いは執念の塊そのものだった。(今野)*文中敬称略
  • 1991年全日本選手権で優勝した時の渡辺武弘

【条太】審判と選手の攻防

2016/01/06

 世界選手権などで、勝負どころでフォールトをとられて選手が審判に抗議をする場面を見ることがときどきある。「よりによってなぜこんなところでフォールトを取る?審判が目立ちたいだけなのではないか?」などと思いがちだが、審判から言わせれば選手たちは、苦しくなって違反ギリギリのサービスを“間違いなくわざと”出しているという。

 それは審判から見れば明らかであり、選手は審判の眼力を試しながら調節しているのだという。だから審判は、なるべく選手にフォールトをさせないように早い段階で「注意」(一回だけ可能でレットとなる)をして、基準を選手に示すことが必要なのだ。

 ベンチからの声やジェスチャーによる違反アドバイスについても同様で、ベンチの言動が怪しい場合、審判はなるべく違反をさせないように、胸ポケットのカードに手をかけながら視線を送り「わかってるよ、それ以上やったらカード出すよ」と態度で警告することも必要だ。審判も戦っているのだ。

 以上は国際大会の場合だが、全日本も選手は勝ちたければ選手もコーチもギリギリのプレーをするのは当然だ。それはドライブでギリギリのコーナーを狙うのと同じなのだ。そのあたりの審判との攻防も全日本の見どころになるはずだ。(伊藤条太・卓球コラムニスト)
  

【速報】チャンピオンしか持たない異常性とは何か?

2016/01/05

 水谷隼は話し始めるやいなや、こんな驚きの言葉を放った。
「チャンピオンになる人はある意味、異常者だと思う」
 つまり、全日本チャンピオンや世界チャンピオン、五輪チャンピオンになるような人はその性格や行動の中に「異常性」を持っているという理屈だ。
 それは言葉を置き換えれば、「執念」であったり、「火事場のバカ力」であったり、大舞台に緊張しない「強靱なメンタル」の意味だ。

 良い意味での「クレイジー」な部分を彼らは持っている。逆にそれを持たないとあの大舞台で力を発揮できない。普通の人の感覚では、大舞台でビビるし、本来の自分の力を発揮できないし、大観衆が観ている前で冷静に戦術を考えたりはできないのだ。

 それらを備えた選手を水谷は「異常者」という言葉に置き換えた。そして9年連続全日本選手権の決勝に進み、うち7回優勝した自分も「異常者」だと言う。「しかし、ぼくは自覚している異常者ですからね」と彼は笑った。
 ラケットを握った時の「異常性」はある時には自分で制御できない。そのメンタルを維持することが家族との安らぎであったり、他の人と接しないで雲隠れするような行動、一人だけの時間を持つことだったりする。
 
 過去に数多チャンピオンたちのインタビューを行ってきたが、確かにその練習、試合に対する異常なまでの執念には驚かされることが多かった。「普通でない」人たちがチャンピオンになっているし、チャンピオンという人種はスポーツアスリートとして良い意味での「異常性」を持っていた。
 全日本選手権ではプレーだけでなく、競り合った時の選手たちの表情やメンタルにも注意すると違った楽しみ方ができるかもしれない。

 ただガッツポーズをして叫んだ人がメンタルのが強いのではない。実はそういう興奮状態さえもコントロールできる強靱なメンタルを持った選手が王者になるのだ。  (今野)*文中敬称略
  • 昨年、7度目の優勝を手にした王者・水谷

【速報】記憶には残るが、記録として名前の残らない2位の人たち

2016/01/05

 昨日、テレビを観ていた。アラブ首長国連邦のひとつ、ドバイを特集するものだった。ドバイには世界で最も高い建造物であるブルジュ・ハリーファなどの、記録に残る「世界一」のものが多いという話だった。
 そしてドバイのムハンマド首長にその理由を聞いたところ「だって2位じゃ記録に残らないから」とシンプルな答えが返ってきた。

 そうなのだ。全日本選手権でも記録に残るのはいつも優勝者のみ。2位の選手は記憶には残っても大会プログラムなどの記録には掲載されない。全国大会の決勝に行くだけでもすごいことなのだが、何年か経ち、記憶からもその選手の存在は薄れていくが、優勝者だけは永遠に生き続ける。
 
 全日本選手権に出場するトップ選手たちは誰しも上位を狙っている。ところが真剣に優勝を狙っているのは何人くらいいるのだろう。たぶんそれは数人レベルだろう。
 男子で言えば、優勝を狙う人は王者の水谷隼に勝たなければいけないことを意味する。女子で言えば、女王・石川佳純を倒すことを意味する。彼らの経験や努力を上回ることを日常でなし得ていかなければ優勝はできないのだ。
 
 2位の人たちには2種類の選手がいる。
 ひとつは、たまたま幸運も重なり決勝へ進んだ人。しかし、チャンピオンにはなれなかった。決勝の雰囲気に呑まれたり、経験を積んだ現役チャンピオンに呑まれてしまう人。
 もうひとつは、すでに決勝の舞台を経験していて、本気で優勝を狙っている人。2位は記録に残らないことを知っていて、優勝にしか意味がないと思っている人たちだ。
 昨年の男子の神巧也、女子の森薗美咲は前者だろう。
 逆に、最近では藤井寛子のように決勝で三度敗れ、チャンピオンになれないまま現役を引退した選手もいる。藤井は当然後者のケースだ。
 2位の敗者と1位の勝者の間にあるのは何だろう。
 先日、水谷の取材をしていて、「これだ」と思うことがあった。チャンピオンになる人となれない人の違いが彼の言葉からわかったのだ。
 (今野)*文中敬称略

  • 初ランクで準優勝を果たした神

  • 初の決勝に進んだ森薗だったが、石川に敗れ2位に終わった

【速報】挑戦? 無謀? 王国の速報はなぜ有料になるのか!?

2016/01/05

 今回の全日本選手権速報から、卓球王国はWEB速報(REAL! TT)の有料化に踏み出した。
 インターネットの情報はタダ、という一般人の常識に挑戦する形で王国は動き出す。もとはと言えば、今まで卓球王国の速報は現地にスタッフを送り込み、王国WEBはもちろんだが、卓球(スポーツ)メーカーの速報、卓球ショップの速報などの数社分のページを作成していた。もちろんそれらはクライアント(依頼者)に合わせて、一つひとつ記事を作成し、違う写真をアップしていたのだ。よく新聞で使うように、共同通信、時事通信との契約で同じような記事を掲載するのとは訳が違う、手間のかかる仕事をしてきた。現場での仕事量は凄まじいものだった。
 
 今回は申し訳ない気持ちでそれらのクライアントの速報を休止として、王国独自のWEBに取材を集中していく。

 現場にいる取材スタッフには実は「本能」が強く働く。そのサイトが無料であっても、なるべく速く、数多くの情報をWEBにアップしたいという本能だ。そんな貴重な情報は本誌(紙メディアの卓球王国)だけに載せればいいのにという情報さえも取材者はアップしたくなるのだ。それはインターネット独特のものなのだが、ライブ感覚で読んでいる人のアクセスがわかるために「張り切って」記事を書き、写真を載せていく。「当然だろう、それも王国の宣伝みたいなものだ」と言うかもしれないが、数多くの取材者を派遣し、現場でせっせせっせと情報を流すのもコストがかかる。

 月刊卓球王国は毎月1回の発行なので、深い記事を書くことはできても全日本選手権をライブのようには流せない。ならば速い情報はWEBで一生懸命流す。それはある意味、我々にとっては「もう一冊の卓球王国」を現場で作り、提供するのと同じだ。その質を落としたくないために、今回から試験的に「REAL! TT」としてWEBを有料化し、そこに全エネルギーを使い、貴重な情報をアップしていく覚悟だ。

 こういった理由をご理解いただき、ぜひこの「REAL! TT 全日本速報」を楽しんでいただきたいと思います。大会終了後に「360円払ったけど、それだけの価値はあったな」と言っていただけるように頑張ります!  (今野)

【速報】怪物くん、小学6年張本はどこまで行くのか!?

2015/12/29

 先の世界選手権男子代表選考会で、話題をさらったのは小学6年の怪物・張本智和(仙台ジュニア)だ。
 初日こそ1勝2敗のスタートだったが、2日目には前年度全日本3位、世界選手権メダリストの岸川聖也(ファースト)をストレートで破り、全日本社会人2位の森田侑樹(シチズン)にも快勝。そして全日本学生チャンピオンの森薗政崇(明治大)にも競り勝つなど、その著しい成長ぶりと、シニアレベルの実力を見せつけた。
 あの試合を見せつけられると評価は違ってくる。間違いなくジュニアでは優勝候補。もし優勝すれば史上初の小学生での優勝になる。一般では張本は丹羽孝希(明治大)と4回戦で当たる。この試合は見ものだ。福島での男子選考会を観戦に来ていた丹羽にとって、一番の収穫は「上位選手に勝つ張本を見た」ことだったのかもしれない。

  • 怪物・張本智和が大会前半の目玉となる

【速報】女子単、優勝候補の双璧を誰が破る?

2015/12/25

 全日本の女子シングルス、優勝候補の双璧は、2連覇中の石川佳純(全農)と、3年ぶりの女王返り咲きを狙う福原愛(ANA)で文句なし。国際大会での実績でもずば抜けており、このふたりに「貫禄負け」せずにぶつかっていける選手はなかなかいない。

 女王・石川は課題としていたサウスポー対策や、台上での攻撃力の強化に地道に取り組んできた。好不調の波はありながらも、女子ワールドカップでは左腕のリュウ・ジャ(オーストリア)、リー・ジャオ(オランダ)を連破するなど、一定の成果を見せている。カットや異質攻撃型にも強く、3連覇へ不安はない。
 その石川と福原が、準決勝で当たる組み合わせは卓球ファンにとっては残念。昨年、福原が腰の故障で欠場したためだが、世界ランキング4位の選手を前回大会の成績だけでこの位置にドローするというのも……。福原は順当に勝ち上がれば、6回戦で前回3位の前田美優(日本生命)と当たる。独特のリズム、強烈なフォアスマッシュを誇る左腕・前田は、全日本では当たりたくないタイプの選手だろう。

 そして今回の女子シングルスは、第2シードの森薗美咲(日立化成)がいる第4ブロックが大激戦。五輪団体メンバーに内定の伊藤美誠(スターツSC)、国際大会での活躍が目立った若宮三紗子(日本生命)、全日本での実績では同世代をリードする加藤美優(礼武道場)、そして進境著しい浜本由惟(JOCエリートアカデミー/大原学園)……。ここから誰がベスト4に勝ち上がるのか、予測は非常に難しい。

 伊藤は今年3月のドイツオープン優勝で一気にブレークし、「魔法にかけられたような」一年を過ごしたが、その前兆が昨年1月の全日本ジュニア優勝と一般でのベスト8入りだった。強引なフォア強打での自滅、あるいはバック表ソフトの変化に頼った守備的なプレー、そのふたつのジレンマを克服し、独創的なプレースタイルへと昇華させた。成長を証明する全日本にできれば、史上最年少での優勝も大いにチャンスあり。また、メンタルが強くなり、脚力の強化によってラリーでの安定性と攻撃力を増した浜本も、今大会注目の選手。昨年は山本怜(中央大)に大逆転負けを喫したが、今年の全日本は「大器覚醒」の予感だ。

 優勝戦線を飾るふたりの「HIRANO」、平野早矢香(ミキハウス)と平野美宇(JOCエリートアカデミー)は、勝ち上がると6回戦で対戦するドロー。対攻撃型や異質型では美宇、対カット型では早矢香が強いが、ふたりの対戦となると勝負は互角だ。全日本を五度制した平野早矢香は、今年で30歳。リオ五輪の代表メンバーから外れ、ひとつの転機を迎えているが、プレーヤーとしての向上心はまだまだ健在。新たな境地を見せてもらいたい。
  • 昨年は3冠王の石川佳純、今年は女子単・複と2種目にエントリー

  • 福原愛が2年ぶりに全日本のコートに戻ってくる!

  • 伊藤美誠の史上最年少Vはあるのか?!

  • 一気に伸びてきている浜本由惟、今大会は目が離せない

【速報】プラボール2年目の全日本に、波乱の予感

2015/12/25

 1月11~17日、東京・東京体育館で行われる全日本卓球選手権。今年も7日間の日程で、日本一を決める戦いが幕を開ける。
 水谷隼(beacon.LAB)が2連覇中で、男女を通じて最多タイ記録となる8回目の優勝を狙う男子シングルス。水谷を筆頭に、いずれも全日本での優勝を経験している五輪内定トリオ、水谷隼、丹羽孝希(明治大)、吉村真晴(愛知工業大)の3人が優勝戦線をリード。12月のワールドツアー・グランドファイナルを欠場した吉村も、右肩の故障はかなり良くなり、全日本で大いに暴れてくれそうだ。

 ……しかし、これではさすがに「リアル全日本速報」の見どころとしては物足りない。今年の全日本は、大会序盤から思わぬ波乱の予感がする。その理由は、今回が導入されて2大会目となるプラスチックボールだ。ボールのスピードと回転量がわずかに落ち、サービスエースが減る一方で、フォアで回り込んで攻めるチャンスは確実に増えている。

 バックサイドを回り込んで、フォアで強く攻められる選手。この視点から注目したいのは、ベテランの吉田海偉(Global Athelete Project)と、世界団体選手権選考会で優勝した松平健太(JTB)。
 吉田は12月18日のヨーロッパチャンピオンズリーグ予選最終節で、水谷に3ー1で勝利。意外にもこれが水谷戦での初勝利で、「相手の調子の良し悪しに関係なく、隼に勝てたということは本当にうれしい」と語った。水谷のプレーは確かにベストのものではなかったが、常に先手を取り、バッククロスへのパワードライブを連発して押し切ったことは、大きな自信になるはず。水谷とは準々決勝で当たる組み合わせとなり、非常に興味深い。
 一方、松平は前陣に貼りつく両ハンド攻守のスタイルから、フォアの回り込みの手数が増えてきた印象を受ける。しゃがみ込みサービスで鍛えた脚力は折り紙付き。回り込みから体勢を崩さず、連続で攻めることができる。世界代表の切符を獲得し、優勝候補の第1集団から第2集団に下がった今、ノンプレッシャーで戦える強みもある。

 そして、近年存在感を増す学生卓球界からも、「強打者枠」でヒーロー誕生の可能性あり。一昨年の大会の町飛鳥(明治大)、昨年度大会の神巧也(明治大:現シチズン)のように、一気に決勝まで駆け上がる選手が現れるかもしれない。単複とも世界で活躍を見せる大島祐哉(早稲田大)、森薗政崇(明治大)のふたりはもちろん優勝候補だが、マークが厳しいのも事実。爆発力という点で、明治大の有延大夢、愛知工業大の吉村和弘という野田学園OBのふたりに注目したい。ともに強力なバックハンドを誇るが、勝負所でどれだけフォアで仕掛けられるかがカギになるだろう。

 プラボールになってから、特に国際大会を転戦する選手には故障が増えた。ほんのわずかとはいえ、重さと厚さを増したプラボールでのプレーは、選手への負担が大きくなっている。全日本のシングルスは1日最大2試合というゆるやかなタイムテーブルだが、各選手とも故障だけは気をつけてほしい。
  • 「絶対王者」にさらに近づくのか、水谷隼

  • プレーに安定性を増し、2回目のVを狙う吉村真晴

  • 吉田海偉、驚異の身体能力はいまだ健在

  • 世界代表選考会優勝の松平健太、悲願の初Vへ発進