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 11月23・24日に埼玉・所沢市民体育館で開催された、「2019年(令和元年度)第16回 全日本学生選抜卓球選手権大会」。

 10月に開催された「全日本大学総合選手権(個人の部)」、通称「全日学」での男子優勝・及川瑞基(専修大)が欠場となる中、全日学準優勝の木造勇人(愛知工業大)が危なげなく決勝まで進出。三部航平(専修大)らとの接戦を制して勝ち上がってきた、後輩の田中佑汰との同士討ちとなったが、打球点の早いバックとフォアドライブ速攻のコンビネーションが冴えて主導権を握る。3-1となった第5ゲーム目に一気に優勝を決めるかと思われたが、そこから田中がブロックや強力なバックハンドなどで逆転。しかし第6ゲームは気合いを入れ直した木造が押し切って、優勝を決めた。

 女子は全日学優勝の森田彩音(中央大)が、山本笙子、梅村優香との同士討ちを制して、準決勝では好調の三條裕紀(青山学院大)を接戦で下して決勝進出。競った場面の安定感で、全日学に続く優勝に迫った。しかし奥下茜里(日本大)、鎌田那美(早稲田大)ら実力者に快勝して決勝に進んだ木村香純(専修大)が、両ハンドドライブのラリー戦で優位に立つ。体の切れが良く、打球点の早さと連打で一歩上回った木村が4-2で押し切って、自身初となるシングルスのタイトルを手に入れた。

男子優勝:木造勇人(愛知工業大)
2位:田中佑汰(愛知工業大)
3位:龍崎東寅(明治大)
4位:坂根翔大(関西大)
ベスト8:出雲卓斗(明治大)、高見真己(愛知工業大)、一ノ瀬拓巳(中央大)、三部航平(専修大)

女子優勝:木村香純(専修大)
2位:森田彩音(中央大)
3位:三條裕紀(青山学院大)
4位:鎌田那美(早稲田大)
ベスト8:奥下茜里(日本大)、松岡優香(東京富士大)、岡崎日和(東洋大)、梅村優香(中央大)

大会報道は卓球王国2020年2月号の掲載します
T2ダイヤモンド4日目
●男子シングルス準決勝
許シン(中国) 7、7、−9、6、4  張本智和(日本)

世界ランキング2位、29歳の許シンに立ち向かうのは、同5位、16歳の張本智和。過去6回の対戦はすべて許が勝っている。

 1ゲーム目も許ペース。7−3から7−6にして追い詰めるも、張本は7−11で落とす。連敗している許からの重圧なのか、普段しないようなミスが出た。
 2ゲーム目、許のドライブが唸りを上げ、張本を襲う。許のドライブの力と質が高すぎ、ブロックが止まらない。11−7と許がゲームを連取した。
 3ゲーム目、なんとか食らいついていきたい張本。5−5、ラリーの主導権を奪いたい張本。6−5、6−6、7−6から台上フォアフリックで8−6。ドライブを決められ、8−7となったところでタイムアウト。次を許の裏面バックがミスして9−7。2本打ちミスで9−9、10−9と先にゲームポイント奪った。ここで許は裏面ドライブをミスして、張本がゲームを取り返した。
 4ゲーム目、3−3から4−6、5−9とリードを奪われた張本は、このゲームを6−11で落とした。許のドライブが張本のブロックをはじいてしまう。
 5ゲーム目からFAST5に入ったが、3−3から張本の打ちミスで3−4となるが、次をチキータで決め、4−4。最後はフォアドライブで決めにいった張本のラケットが空を切り、許の勝利が決まった。

 許のドライブの威力ゆえに、先に攻撃を仕掛けようとする張本。それが打ち急ぎとなり、ミスにつながってしまう。ドライブの重圧が張本の攻撃を狂わせている。
 世界ランキング2位と5位の間には、ボールの威力という大きな溝があるようだ。
「いつものように試合がすることができた。優勝したら賞金をどうするか? 子どものために使うよ(笑)」と許シン。
 張本は夜の3位決定戦で林高遠と対戦する。

●張本のコメント
・・・試合を振り返ってどうですか?
「毎回同じパターンで、フォアドライブを取れない。それでも3ゲーム目を取ってチャンスはあったけど、簡単なドライブミスだったり、サービスが(台から)出てしまう。どこでやっても後1、2本が取れない。最初はチキータで攻めた。点は取れたけど、返されたらどうしようもなくて、3ゲーム目からストップに変えて、相手の打ちミスもあった。相手の凡ミスがなければ勝ちはない。4ゲーム目からサービスを変えられた。相手もどんどん進化している」

・・・ワールドカップもあるし、越えなきゃいけない壁ですね。
「勝ち方が全然わからない。勝ち上がって、何回も(彼と)やっていって慣れるしかない。次も中国選手ですけど、今の相手よりは少し下なので、自分の持ち味を出したい」

・・・何回もやっていても、あの許シンのボールは対応できないですか?
「誰も打てないボールなので、練習のしようがない。今回、坪井さんも練習相手してくれて、できる限りの良い準備はできたけど、それでも許シンは全然レベルが違いました」

・・・具体的に言うと、彼のボールはほかの選手と何が違うんだろう。
「普通は横(回転)が入っているとスピードは落ちるのに、彼のドライブはまっすぐと同じスピードに横が入っているので、オーバーミスしてしまう」

・・・あのドライブの威力があるので、打ちミスが出てしまうのかな。
「ストップが浮いてきたのに焦ってしまう。最後(4−4)のボールもそうです。そういうミスはゼロにしないといけない。ラリーをしていては絶対勝てない。浮いたボールに対するミスもなくしたい」
  • 攻める展開も多かったが、許シンには盛り返される

  • 「誰も打てない、練習のしようがない」という世界ナンバーワンの許シンのフォア

  • 許シンは張本にとって超えるべき壁だ

  • 午後は3位決定、林高遠に挑む張本。もう一戦、戦いが待っている

T2ダイヤモンド4日目
●女子シングルス準決勝
伊藤美誠(日本) 7、−5、10、2、1 田志希(ジャン・ジヒ/韓国)

 石川、佐藤と同士討ちを制し、準決勝に上がってきた19歳の伊藤美誠は世界ランキング7位。対する田志希は平野美宇、陳夢と格上の二人を倒した中国からの帰化選手で世界20位、27歳。二人の対戦は伊藤の1勝0敗。
 
 1ゲーム目、3−0から3−3、4−3からバック強打で5−3。2本連続サービスエースで7−3と離す。9−5、10−7からサービスエースで11−7で伊藤がゲームを先に奪った。サービスが効いている。
 2ゲーム目、一転して田が反撃に出る。11−5で取り返す。
 3ゲーム目、伊藤がリードしていたが、8−5から田が8−10と逆転、9−10から伊藤のバックドライブが決まり、10−10。次に伊藤のサービスが決まったかと思ったが、田がビデオチェックを要求。ネットインとわかり、プレー再開。次のボール、ラリーで伊藤がよく飛びつき、11−10で取り返した。このゲームを取ったのは大きい。

 4ゲーム目、出足で2−0から2本連続サービスエースで4−0。流れは完全に伊藤だ。5−1、7−2、11−2で一気にゲームを奪い、勝利に王手をかけた。
 5ゲーム目はFAST5に突入。まずは伊藤の巻き込みサービスがエースを取り、ゲームが始まる。一気に4−0でマッチポイント。サービスミスで4−1。最後はフォアストレートのドライブが決まり5−1で田を下し、決勝進出を決めた。ここまで失ったゲームは2ゲームのみ。伊藤美誠の完璧な試合ぶりが光る。

「3ゲーム目は相手が思いきってきたので、このゲームを取ったのは大きい。孫さんとの試合は楽しく、自分らしい試合をしたい」と伊藤はコメントした。
  • 孫穎莎との決勝へ。WTCのリベンジだ

  • ビデオ判定でサービスがネット判定になった

  • 伊藤の得意な逆チキータも要所で炸裂

  • 粘った田志希だが、レシーブに苦しんだ

T2ダイヤモンド4日目
●女子シングルス準決勝
孫穎莎(スン・インシャ/中国)−4、−7、4、−10、2、1、1 王曼ユ(ワン・マンユ/中国) 

 世界ランキング3位、19歳の孫穎莎、同5位、20歳の王曼昱の対戦。国際大会での対戦成績は孫の5勝4敗とほぼ互角。
 出足から孫穎莎に元気がないのが気になった。昨日、丁寧を破った強さと速さが影を潜め、ミスを連発している。当然、簡単に王曼ユが2ゲーム連取した。気合いを入れる王に対し、元気がないように見える孫は冷静に戦っているとも言える。
 1−3と後がなくなった孫が、FAST5になった5ゲーム目からジリジリと追い上げる。孫は3−3と並び、最後は5-1で王を退け、決勝進出を決めた。何度も対戦している両者の心理的な駆け引きを見るような試合だった。

●男子シングルス準決勝
林ユン儒(リン・ユンジュ/チャイニーズタイペイ) 6、10、8、 林高遠(リン・ガオユァン/中国)
 世界ランキング10位、18歳の林ユン儒は同じサウスポー世界3位、24歳の林高遠と対戦。ランキングでは林高遠が上だが、今の林ユン儒とは互角と言って良いだろう。対戦成績は3勝1敗で林高遠は分が良いが、最後のジャパンオープンでは林ユン儒が勝っている。

 1ゲーム目、林高遠にミスが出て、林ユン儒が先取。2ゲーム目、林高遠のミスも減り、攻撃が決まっていく。しかし、終盤に林ユン儒がつかまえ10−10にすると、最後はサービスからの3球目フォアドライブをバッククロスに決め、11−10で2ゲーム連取した。
 3ゲーム目、6−6から2本連取する林ユン儒。林高遠の攻撃をうまく吸収しつつ、攻撃に転じる。11−8で取り、林ユン儒が3ゲーム連取した。
 4ゲーム目、出足で林ユン儒が4−1とリード。6−3で林高遠のロビングを打ちミスして6−4。これで流れが変わるかとも思いきや、やはり冷静。10−5から10−7になったところで林ユン儒がタイムアウト。10−8となった後、最後はフォアドライブが決まり、11−8で林ユン儒がストレートで林高遠を下した。どちらが世界3位かわからないような内容だった。

 林ユン儒の強さの特徴は「スムーズさ」。両ハンドの攻撃では姿勢が崩れず、バックからフォア、フォアからバック、守りから攻めと転換していっても連続動作が早い。フォア前のサービスもほとんどチキータで返すが、その後のバックへの戻りも早い。攻撃球は驚くほどのパワーボールに見えないが、しなるような腕の使い方でボールは相手の手元で伸びる。
  • 徐々にギアを入れた孫穎莎。女子でこの体勢で打てるのか・・・

  • パワーボールが決まっていた王曼ユは惜しくも敗れた

  • 林ユン儒、恐ろしき18歳。T2の連覇に王手をかけた

  • レシーブに迷い、得意の展開に持ち込めなかった林高遠

●張本智和のコメント
・・・試合を振り返ってください。
「試合と試合(の時間)が少し空いて、相手も丹羽さんで独特のペースの人なのでずっと不安でしょうがなかった。丹羽さんも思い切ってきた。3ゲーム目からサービスや打つコースを変えて、逆転できたので今日はよく耐えた。2ゲーム目を取られた時には正直、0−4で負けるかなと思った。0−2の3ゲーム目の1−3で本当にダメだと思ったけど、ラリーにするしかないと思った」

・・・チキータが少なかった。
「シンガポールは湿気が強くて、今日も1本目のチキータがミスした時点でもう絶対やらないと決めました。横上回転の難しいサービスですけど、ストップをするしかなかった。今日も最初ストップはうまく止まらなかったけど、少しずつ止まるようになった。悪いなりによく耐えた。内容はあまり良くないけど、勝てたことが大事。日本人との試合は嫌じゃないけど、丹羽さんはどの選手にもないような独特の技を持っているし、警戒していて、丹羽さんのビデオは何十回も見たんですけど、あのスタート(0−2)。研究が少なかったら負けていた。アジアカップのリベンジができて良かった」

・・・明日の許シン戦は?
「6回やって、勝ったことのない相手で、絶対勝てる戦術はないけど自分を信じてやるだけです」

・・・湿気があるからチキータを使わなかったと言ってますが、丹羽選手は戦術としてストップをやられて、それがやりにくかったと言ってます。
「チキータはしたかったけど、1球ミスした時点で絶対入らないと思った。ちょうどロングサービスを出されていた。横上サービスをストップにするのは小さく止まらないけど、何本か止まって、少し浮いても相手も手こずっていた。チキータができたら出だしはもう少し楽だったかもしれない」

・・・湿気でボールが滑るという意味?
「理由はわからないけど、ヨーロッパでやるのと全然感覚が違った。ボールが持ち上がらない、重く感じました」

・・・4ゲーム目、張本君は早く終わらせて、次のゲームを11本勝負でやりたいし、丹羽君はFAST5に持っていこうとしていた。駆け引きがありました。
「ぼくはそのゲームを取ることで精一杯だったけど、7−1くらいで残り2、3分で、次を11本でやりたかった。そこで5本勝負になると、運で左右されてしまう」

・・・改めて試合を振り返って感じる点は?
「相手もオリンピックがかかっているし、ぼくもオリンピックが決まっている身として負けられない。いろいろプレッシャーはあったけど、いつもの丹羽さんとは違って、勝ちを意識して固さがなくはないと感じた。プレー以外のことを含めて試合なんだと感じました。アジアカップの時だったら、この感じだと0−4か1−4で負けていた。自分が良かった点もあるけど、相手が少しプレッシャーを感じていた部分もあると思います。
 明日の相手(許シン)はぼくとは格も違うので、勝っても負けても、しっかり表彰台に上がれるように頑張りたい」
  • 明日はまだ勝ったことがない許シンと対戦

  • 勝利後、ガッツポーズで噛み締めた張本

●試合後の丹羽孝希のコメント
・・・試合を振り返ってどうでしたか?
「ぼくは向かっていくだけだったので、序盤は良いプレーができた。2−0でリードしたあたりで時間を気にしてしまった。特に4ゲーム目は3本で負けてしまった。あと15秒くらいでFAST5だった。ぼくの狙いはFAST5に入ってから勝負だと思っていた。2−2でFAST5に行く作戦だった」

・・・チャンスはあったのでは?
「最後のほうはチャンスがどんどんなくなっていく感じだった。最後はぼくのサービスをバック前にストップしてきたし、向こうのサービスの配球も良くなってきた」

・・・今大会、最初は参加できない大会でしたが。
「出られる予定じゃなかったので、勝っても負けてもリラックスしてできた。今日は負けたけど充実感はありました。ラッキーですよ。1回勝てたし」

・・・水谷さんとの差もあまりない状況ですが。
「来週ワールドカップがあり、そこが一番大事になるので、その大会にすべてを賭ける気持ちで頑張りたい。五輪争いを抜きにしてもワールドカップはすごく大きな大会なので、今まで3回ベスト8なので、3位を目指して頑張りたい」

・・・張本選手とはいつ以来ですか?
「春のアジアカップです。あの時はチキータをしてきたけど、今日はぼくのバック前に止めてきた。チキータをしてくれたほうがロングサービスで散らしたりいろいろできるけど、ストップに絞られることでサービスが効かない状態になった。向こうのほうが冷静だった」

・・・水谷選手は「五輪代表の2番手はほぼ不可能だ」と言っていますけど。
「ぼく自身、ドイツオープンの鄭栄植戦が勝負で、そこで負けてから本当に吹っ切れた。シングルスの代表をぼくもあきらめていた。そうしたら、プレーも良くなってきて、運も味方についた。そのプレッシャーから解放されたのが良かった。まあ、他力ですけど」

・・・他力だけど、自分に流れが来ていることも感じている?
「感じてます。今回のT2の4人キャンセルも普通あり得ない。それならグランドファイナルの1人のキャンセルもあり得る。ついてますね」
*16名出るグランドファイナルは丹羽は現在17番目で、リザーブ選手となっている

・・・グランドファイナルを除いても、あと2大会(ワールドカップ、北米オープン)残っています。
「ぼくとしてはドイツオープンで負けてから五輪争いのことは吹っ切れています。カナダ(北米オープン)は正直出るかどうかはわからない。ワールドカップでベスト8、ベスト4に入ることを目指して、それが達成できたらあとの試合をキャンセルするつもりで、ワールドカップにすべてを懸けます」

・・・今回のT2出場は大きかったね。
「大きいですね。ドイツオープンに勝てば、T2にもグランドファイナルにも出られると思っていて、それなのに鄭栄植に負けて、T2も出られないと思って、厳しいと思っていた。複雑ですけど、ついていると思います」

・・・今年に入って、なかなか勝てないことが続いていたけど、最近、少し調子が上がっている感じがします。精神面の影響かな。
「7大会連続1回戦負けをしてから、今は4大会連続1回戦を突破している。プレーも良くなっている。気持ちの問題だと思う」

・・・試合後、握手した時、張本選手が何か言ってましたね。
「ひざは大丈夫ですか、と言われました(笑)」

・・・ひざは痛い?
「体はボロボロです。試合が続いているし、まだ続く。それが終わったら早く休みたい。そのために今頑張っている感じです」
  • 試合後は両者、がっちり握手。張本は丹羽のひざを気遣った

  • 速攻のキレが戻ってきた丹羽。五輪シングルスの切符をつかめるか?

  • ボールに食らいつく。今大会は下がってからでも粘った

  • 少し腰も気にしていた丹羽。満身創痍で選手たちは戦っている

T2ダイアモンド3日目
●女子シングルス準々決勝
田志希(韓国) 10、10、−4、−3、2、−4、4 陳夢(中国) 

 平野美宇を破り、勢いに乗っている 田志希が世界ランキング1位の陳夢を最終ゲーム5−4で下した。安定感とカウンターのうまい田が陳のミスを誘った試合だった。
   
●男子シングルス準々決勝
張本智和(日本) −6、−9、8、3、5、3   丹羽孝希(日本)

 丹羽は長いラリーにせずにサービス、レシーブからの早めに決着をつけたい。1ゲーム目は張本の得意のバックにもミスが出て、11−6で丹羽が先取。1本ごとに気合を入れる張本と、淡々と試合を進める丹羽の試合ぶりは実に対照的だ。
 2ゲーム目、思うようにラリーができない張本にやや焦りが見え、丹羽はいつものクールな試合ぶり。9−9から丹羽がサービスエースで10−9。次をサービスからの連続攻撃で丹羽が取り、11−9とゲームを連取した。

 3ゲーム目、張本のフォアドライブが丹羽を襲う。丹羽は懸命にブロックとカウンターで対抗。6−6から10−6と張本が離す。10−8になったところで張本がタイムアウトを取った。張本がぶつ切りの下回転サービスを丹羽のフォア前へ出し、丹羽のチキータはネットミス。11−8で張本が1ゲームを取り返す。
 4ゲーム目、出足から張本の台上バックドライブが決まる。一気に5−0と張本リード。11−3でこのゲームを張本が取り、ゲームカウントを2−2にした。
 5ゲーム目、早いテンポで試合が進む。丹羽得意のカットブロックを張本がネットミスして3−4。5−5から張本はフォアドライブで得点。次にはバックドライブを決め、7−5と張本がリード。8−5、9−5と張本の強打が炸裂。11−5と張本が3ゲームを連取した。
 5本勝負のFAST5に突入した6ゲーム目。一気にたたみかけたい張本。2−2からお互いのサービスエースで3−3。最後は丹羽のドライブがオーバーミスして5−3で張本が勝利した。

●女子シングルス準々決勝
孫穎莎(中国) 8、6、10、−9、3  丁寧(中国)

 五輪金メダリストの丁寧は若手の孫穎莎に完敗。五輪の中国代表候補の丁寧だが、この試合見る限り、力の差は歴然としている。ボールの威力、動きの速さでは孫穎莎に歯が立たなかった。

●最終日の組み合わせ
<男子準決勝>
張本智和(日本) vs. 許シン(中国)
林ユン儒(チャイニーズタイペイ) vs. 林高遠(中国)
<女子準決勝>
孫穎莎(中国)  vs. 王曼昱(中国)
伊藤美誠(日本) vs. 田志希(韓国)
  • 張本が逆転勝ちをおさめ、準決勝へ

  • 序盤は丹羽ワールド全開

  • 田志希は陳夢に勝利し、笑顔満開だ

  • 足元をすくわれた陳夢。FAST5が苦しめた

  • 素晴らしいバネを持つ孫穎莎。スイングスピードも段違い

  • フォアを抜かれた丁寧。パワーもスピードも孫穎莎に上をいかれた

【LEDに苦しむ水谷。勝負の3ゲームを落とし、勝機を逃す】

T2ダイアモンド3日目
●男子シングルス準々決勝
林高遠(中国) −3、7、10、4、2    水谷隼(日本)

1ゲーム目、水谷はLEDフェンスが見えない「サイド」を選択した。前日のオフチャロフ戦のようにボールが比較的見やすいほうでプレーして、1ゲーム目を先取したいからだ。3−3から一気に8本連取し、11−3とゲームを奪った。サービスが効いている。
 2ゲーム目、反対のサイドに行って、サングラスをかけた水谷。やはりボールが見にくいのだろう。「サングラス効果」(?)か、出足で3−0。4−2、5−3、台上強打で6−3とするも、6−7と逆転される。フォアドライブが決まり7−7としたが、7−11で2ゲーム目を落とした。ラリーになると得点できない展開だ。
 3ゲーム目、0−2からすぐに2−2に追いつく。4−4、カウンターブロックが決まり5−4。5−5から5−7、6−7から水谷のフィッシュを林がドロップショットで6−8、水谷がサービスエースで8−8に追いつく。9−9からバックの強打をミスして9−10。サービスエースで10−10。ジュースなしの1本勝負。最後は林のYGをチキータしたがミスして、11−10で林がゲーム連取した。
 4ゲーム目、出足から林がリード。水谷の見えにくいサイドでやや戦意喪失気味。4−11で落とす。
 5ゲーム目、5点勝負のFAST5に突入。5−2で林が水谷を下した。水谷はベスト8で今大会を終えた。

【「アンラッキーなことをぼくは受け入れるつもりだ」水谷】

・・・試合を振り返ってどうでしょう。
「2ゲーム目、6−3とリードした時にミスしてから一気に流れが相手に行ってしまった。自分から積極的に仕掛けなければ勝てない相手なので、最初は良いスタートが切れてプレーも良かった。このゲームを取れたら行けるかもと頭をよぎってから固くなってしまった。3ゲーム目も10−10から落としたのが悔やまれます」
・・・今大会でも得るものはありましたか?
「競った場面で自分が攻めている時には中国も脅威に感じていると思う。今の卓球は守るだけでは勝てないので、リスクを冒しても攻めなければいけない」
・・・このT2はどうでしたか?
「自分にとってこの環境は地獄ですね。雰囲気は素晴らしいので、複雑な思いです」
・・・2ゲーム目も惜しかったが、光の影響を受けにくいサイドだった3ゲーム目を落としたのが大きかったですね。
「作戦どおり、見えやすいサイドをまずとって、1ゲーム目が取れた。2ゲーム目は取られても良いと思ったけど、思いのほかリードもした。そこで落としたのは想定内。3ゲーム目は取りたかったのに取り切れなかった。取らなければいけないゲームでした。できる限り時間を稼いで4ゲーム目を5点勝負(FAST5)にしたかった。5本勝負のほうがチャンスはあるから。だけど、4ゲーム目も11点勝負で簡単に落とした。2−2になっていればチャンスはあったので、(勝負は)3ゲーム目ですね」
・・・昨日のコメントで、五輪は3番手でも・・という言葉がありましたが、改めてどうですか?
「その気持ちは変わってない。厳しいし、ほぼ(2番手になるのは)不可能ですね」
・・・グランドファイナルでの逆転も可能ですけど。
「(丹羽は)ワールドカップもあるし、カナダ(北米オープン)もあるし、現時点では状況によって変わる。でも、今回、9月のT2(丹羽はノミネートされず、水谷が参戦予定だった)がキャンセルされたり、今回も4人がキャンセルして丹羽が繰り上げって出るとか、自分はどうにもできないアンラッキーなことが起きて、これをぼくは受け入れるべきだと思っている。もがいて頑張ろうとしたけど、結果は苦しい状況になった。これでシングルスに出られなくても、もし団体に選んでもらえて、ミックスに出場できればそこでベストを尽くしたい。そのどれかでメダルを獲れれば、そのためにシングルスに出られなかったと前向きに考えることはできる」
・・・グランドファイナルのラストチャンスに懸けるけども、この状況に納得しているのかな。
「あまりにもアンラッキーなことが続いた。あるべきもの(T2)がなくなって、ないもの(丹羽の出場)が生まれてきたから、受け入れるしかない。これだけのことが起きたらしょうがない。それに、最近、自分のパフォーマンスもあまり良くないから、団体とミックスは自信があるからそこでメダルを獲れるように集中したい」
・・・もちろんグランドファイナルには気持ちを切らさずに向かっていきますよね。
「もちろんそうです。最後の試合ですから。家族やファンの皆さんからも応援してもらっているので、自分が落ち込むと周りも悲しむので、前向きにやっていきたい」
  • 2ゲーム目のみサングラスをかけてプレーした水谷

  • 中盤から気合全開、林高遠が勝利

  • ここを突破して、少しでも丹羽とのポイント差を詰めたかったが・・・

  • 大きなLEDとボールがかぶる。環境も水谷にとっては足かせとなった

T2ダイヤモンド3日目
●女子シングルス準々決勝
王曼昱(中国)  7、−6、−5、1、0、1 陳幸同(中国)
●男子シングルス準々決勝
林昀儒(チャイニーズタイペイ)−10、6、6、2、−1、2  フランチスカ(ドイツ)

●女子シングルス準々決勝
伊藤美誠(日本) 9、4、9、6  佐藤瞳(日本)

 出足から伊藤のミスは少ない。ドライブによるカット打ちでチャンスをつかみ、決定打はスマッシュだ。そこにバックドライブやストップを織り交ぜ、佐藤を激しく揺さぶる。佐藤はしっかりと粘りながら時折放つ攻撃に活路を見いだす。
 佐藤の動きも悪くない、カットにもミスは少ないのだが、伊藤の攻撃の正確性と緩急の変化の前にリードを奪えない。各ゲーム、中盤から伊藤が突き放す展開だ。佐藤の健闘もむなしく。30分で伊藤は退けた。
「日本選手の対決でしっかり勝つことは重要。目の前の試合に戦うことに集中しているので、1戦1戦頑張りたい」と伊藤のコメント。
 これで伊藤は明日の準決勝で、陳夢と田志希の勝者と対戦する。

●男子シングルス準々決勝
許シン(中国) 7、6、−7、7、2  鄭栄植(韓国) 
  • FAST5に持ち込ませず、圧倒的なカット打ちを見せた伊藤

  • 粘りと攻撃、オールラウンドプレーを見せた佐藤

  • 王曼昱は同士討ちで勝利

  • あなたはどこまで動くんですか・・・オールフォアで許昕が準決勝へ

石川が敗れた後、「負けられない」という気持ちが平野を狂わせた

 平野美宇の目からこぼれ落ちる涙。彼女は泣き崩れるのを耐えているようにも見えた。それは胸が締め付けられような瞬間だった。

 シンガポールで行われているT2ダイヤモンド。今年のワールドツアーの上位16名が参戦でき、世界ランキングに直結するボーナスポイントが付与される。日本は先週のオーストリアオープンの後、男女とも張本智和と伊藤美誠が東京五輪の代表を決めているが、シングルスの2人目の切符を、男子の丹羽孝希、水谷隼、女子の石川佳純、平野美宇が大接戦で争っている。
 日本卓球協会は、来年1月の世界ランキングによって上位2名をシングルス代表とすることを選考基準として発表している。実質的には、このT2の後、男子ワールドカップ(水谷不参加)と12月の北米オープン・チャレンジプラス(水谷不参加)とワールドツアー・グランドファイナルがある。女子はあと2大会を残すのみで、五輪代表は決まる。
 過去1年間の上位8大会の獲得ポイントで決まる世界ランキング。対象となる今年のワールドツアーの合算ポイントは、平野美宇が現時点で10295、石川佳純が10230と、平野がわずか65点のリード。
 女子2人の大会の獲得最低ポイントは900。北米オープンでは優勝すると1100が入るので、200点が上乗せされることになる。しかし、この大会には中国の若手が12名もエントリーしている。それら強豪選手をなぎ倒しながら、「優勝のみが目的」の大会に向かう。

 日本の卓球愛好者は120万人とも言われるが、仮に半分が女子だとしても数十万人の中からわずか3人が五輪の代表として東京の舞台に立てる。そしてシングルス枠はわずかに2名。
 そんな高いピラミッドの頂点でしのぎを削る2人のアスリート。しかし、死闘とも言える国内競争は4年ごとに繰り広げられてきた。リオ五輪前もしかり、さらに過酷だったのは2012年ロンドン五輪の時だ。2011年4月の世界選手権ロッテルダム大会の直後に発表される世界ランキングで代表を決めるルールだった。世界大会前に、女子は福原愛、平野早矢香、石川佳純が横一線に並んだ。結果、わずかに1勝上回った福原と石川がシングルスの切符を手にして、平野は団体戦要員に回った。
 試合後の会見で、福原も石川も手放しで喜びを表現しなかった。彼女たちはともに戦った平野を気遣っていたのだ。一方、少し時間をおいて開かれた平野の囲み会見で、疲れ切った表情で登場した平野も、「やれることはすべてやりました。もし団体戦に選ばれたら、日本のために頑張ります」と言いながら、大粒の涙を流した。胸が締め付けられる会見だった。3人は翌年のロンドン五輪で日本卓球史上初のメダルを獲得し、卓球三人娘として日本中を感動させた。日本人同士が激しく戦う代表争いだが、代表が決まれば、3人はどこの国よりも心を通わすチームワークを見せた。
 五輪が特別なのは、選手たちの強い思いがそこに向けられ、喜びと悔恨のストーリーが交錯するからだろう。

平野の口から出た「死ぬ気で頑張る」という言葉の意味

 昨日のT2ダイヤモンドのミックスゾーン。平野美宇が「良いゲームができる時とできない時の差が大きい。海外の選手からすれば単なる試合でも、私たちはプレッシャーがかかっている」と言ったところで、言葉に詰まり、彼女の目から涙がこぼれた。「その時に全然自分のプレーができない、こんなんじゃ(五輪へ)出場しても……今のままじゃだめだと思うので、あと2大会に賭けたい」
 他国の選手は日本とは五輪代表の選考方法は違う。すでに内々に代表が決まっている国(協会)もある。今回のT2の試合の重要度は間違いなく日本選手が一番大きい。
 同じ平野でも、7年前の早矢香の涙と、今回の美宇の涙はその意味が違う。美宇の戦いはまだ終わっていないからだ。このT2での襲いかかってきた重圧によって自分本来のプレーができなかった、自分のふがいなさに流した涙だったのだ。

 平野美宇が代表権を争っているのは石川だが、平野が戦っているのは「平野美宇自身」なのだ。コートの相手を倒そうとするのだが、「勝ちたい」「負けられない」という重圧が平野自身を狂わせた。昨日の試合はそんな戦いだった。
 涙をぬぐいながら、「次の試合に向けて卓球に死ぬ気で賭けるように頑張りたい。同じような負けはしたくない」「あと2大会で決まるので、どれだけ自分のプレーができるか、成長した自分を見せたい」と語った平野。いつもおっとりして、メディアの笑いを誘うようなリアクションを見せる平野の口から発せられた「死ぬ気で」という言葉。それは恐ろしいほどの本音のワードだった。

 リオ五輪では3人の代表に入れず、リザーブとして、練習相手をしたり、観客席で応援に回っていた平野美宇。試合に出れない悔しさがその後の彼女の成長を支えたはずだが、それでもなお、彼女の心を狂わす重圧がある。前日に伊藤美誠に負けていた石川。もし、平野が勝ちきっていれば、100点を加えた165点の差をつけることができたが、それもかなわなかった。
 前日に敗れた石川の目には涙はなかった。熾烈な争いをすでに4年前、8年前に経験している石川は、あと2大会の勝負に気持ちを切り替えている。
 平野美宇と石川佳純との差はわずか65。勝負は12月12日から始まるワールドツアー・グランドファイナルで決まる。 (今野)
  • 石川とのポイント差を広げられず、五輪の切符はグランドファイナルまで決まらない

  • 「死ぬ気で頑張る」、平野は自分自身を乗り越えなければならない