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2017世界卓球デュッセルドルフ大会速報

 世界選手権の開幕から2日目を迎えた5月30日の朝、衝撃的なニュースがデュッセルドルフを駆け巡っている。すでに日本でも報道されているが、中国卓球協会が中国女子チームの孔令輝監督を一時的な職務停止処分とし、中国に帰国させることを5月30日付で発表したのだ。

 職務停止の理由は借金によるスキャンダル報道。2015年2月、孔令輝氏がシンガポールのカジノで100万シンガポールドル(約8000万円)を借り、そのうち45.5万シンガポールドル(約3600万円)が未返済だとして、カジノ側が香港の裁判所に訴えたという報道が中国で一斉に流れている。。中国卓球協会は孔令輝氏を帰国させ、より詳しい調査・審理を行うと発表している。一方、孔令輝氏は自身の微博(マイクロブログ)で以下のように声明を発表している。

 「2015年2月に春節の休暇を利用して、両親や友人とシンガポールを4日間訪れ、泊まっていたホテルにカジノがあったので、友人が遊ぶのをそばで観ていた。友人たちのチップを借りる時に、私の個人情報を残した。今回、メディアにニュースが流れてから、その時にカジノにいた友人にどういうことなのか電話をしてみて、カジノとの借金の問題がまだ解決しておらず、私までその訴訟に巻き込まれていることを初めて知った。公式の場に出て事実を明らかにすること、そして法的手段によって私の権利が守られるように依頼した。

 今はまさに世界選手権の期間中であり、今回の事件によってチーム全体にマイナスの影響が出ることを深く憂慮している。そして皆さんには信じてもらいたい。私は必ずチームと力を合わせ、あらゆる妨害を排除し、今大会で良い成績が残せるように全力を尽くし、これからも祖国の栄誉のために戦い続けるだろう」

 孔令輝氏は全面的にスキャンダルを否定しているが、一時帰国後に再びドイツに戻り、チームの指揮を執ることは難しいだろう。それにしても、世界選手権の開幕日にネットでニュースが大々的に流れるというのは、いささかキナ臭い。劉国梁総監督が、一時的に女子監督の代理となるのか。
 世界選手権の盛り上がりに水を差す、残念なニュースだが、今後の展開を見守りたい。
 男女シングルス予選ラウンドが進行した大会第1日目。見慣れたアフロヘアーで会場に登場したのは、トリニダード・トバゴのデクスター・セントルイス。08年北京五輪に40歳で出場して話題となったが、それからもう9年経っているので、今年で……49歳?

 少々額が寂しくなっているのは、髪型による負担なのか、それとも年齢ゆえか……。相手の攻撃を粘り強くブロックし、チャンスボールにはバックハンドのカウンターで狙い打つプレー。さすがにフォアハンドの手数は減ったが、世界選手権の名物選手としてまだまだ頑張ってほしい。ちなみに同じ1968年生まれの選手は、ガシアン(フランス)、フェッツナー(ドイツ)、ベンツェン(デンマーク)などなど。ロスコフ(ドイツ)やプリモラッツ(ベルギー)は1歳年下です。

 中米からもうひとり、こちらも世界選手権の名物男。ボールの速さで観客席をどよめかせるキューバのアンディ・ペレイラ。こちらは水谷隼選手と同じ1989年生まれ。卓球にスピードガンコンテストがあったら、この人のパワードライブは世界のトップ10に入るかも。左腕の筋肉、スゴイんです。
  • 49歳のレジェンド、セントルイス

  • キューバのブンブン丸、ペレイラ

 ただいま現地時間は5月30日午前6時40分。おはようございます、と言いたいところですが、日本はもう午後の昼下がりですね。この7時間の時差、昼夜逆転に近いくらいの感覚があります。
 今日は18時30分スタートの混合ダブルス1回戦で、ついに日本選手が登場。吉村/石川ペアと田添/前田ペアが初戦を迎えます。こちらも日本では深夜の1時30分スタートですが……。全日本混合チャンピオンペアの田添/前田は強敵のディヤス/グルジボウスカ(ポーランド)との対戦。ここを乗り切れば一気に波に乗れるはず。頑張れ!

★5月30日・大会第2日目の日本選手のタイムテーブル

●混合ダブルス1回戦 18:30(日本時間31日1:30)
吉村真晴/石川佳純 vs. 予選ラウンドの勝者
田添健汰/前田美優 vs. ディヤス/グルジボウスカ(ポーランド)

●女子ダブルス1回戦 19:30(日本時間31日2:30)
平野美宇/石川佳純 vs. パラナン/S.サウェータブット(タイ)
早田ひな/伊藤美誠 vs. アシュワンデン/クマハラ(スイス/ブラジル)

●男子ダブルス1回戦 20:15(日本時間31日3:15)
森薗政崇/大島祐哉 vs. 予選ラウンドの勝者
丹羽孝希/吉村真晴 vs. ゴメス/ラマドリッド(チリ)

●混合ダブルス2回戦 21:15(日本時間31日4:15)
 いよいよ開幕した世界選手権個人戦。大会初日の29日は、男女シングルスや混合ダブルスなどの予選が行われている。観客席はさすがに空席ばかりで、初日はこんなものかなと思いきや、さにあらず。裏側に回ってみれば、各メーカーのブースのみならず、卓球の体験コーナーなども充実。広い展示場という会場の強みを生かして、試合観戦以外も存分に楽しめる仕掛けだ。コーヒーショップにホットドッグ屋、アイスクリームスタンドなど、飲食店もたくさん並んでいるのがうれしい。
  • 大会のメインスポンサー、リープヘルの重機はド迫力!

  • こちらはジューススタンド。飲食店も充実

  • 子どもたちは観戦より打ちたい!

  • オジサンたちだって打ちたい!

  • アンドロのブースではスピードガンコンテストが人気

  • 特大サイズの佳純ちゃんがニッコリ

 世界選手権後にブンデスリーガの決勝を控えるドイツの名門クラブ『ボルシア・デュッセルドルフ』を訪ねた。
 対応してくれたのはクラブの最高責任者であるアンドレアス・プレウス氏。彼は元同クラブの代表選手で、コーチを経て、現在はゼネラルマネジャーとしてクラブを仕切っている55歳。
 
 1961年創立の60年近い歴史を持つ名門クラブ『ボルシア・デュッセルドルフ』は、かつて松下浩二も在籍した。ブンデスリーガでの優勝はもちろん、欧州チャンピオンズリーグでも優勝し、トップのプロチームを頂点に傘下には23のアマチュアチームを持つ、クラブの規模と歴史でも欧州随一のクラブだ。
 クラブの予算規模は約2.5億円で、ドイツでは『オクセンハウゼン』とほぼ同程度か。
 トップチームはもちろんだが、それ以外に、各種オープン大会の企画、コーチセミナー、スポーツホテルの経営、そして社会活動として、障がい者卓球のサポート、老人ホームや病院などへ出向いての卓球活動など幅広い。

 「クラブとしてはスポンサー収入をメインとして、チケット収入、社会活動を通しての補助金、ホテルや各種イベントからの収入で成り立っている。スタッフはプロ選手を含めると20人、それ以外にパートタイマーを含めたコーチ陣が20人ほど。ホームマッチの時には会員の家族や友達などがサポートしてくれるし、そういったボランティアやファンクラブ、会員がクラブを支え、そういうコミュニティーとつながりがクラブの中心になっている。ドイツと言えばサッカーが有名だし、スポーツと言えばサッカーと言われるが、卓球でしかできない活動があると思っている」(プレウス)。

 クラブの歴史を綿々とつなぎ、クラブとしての軸をぶらさず、「TABLE TENNIS for ALL」(すべての人のための卓球)を実践し、デュッセルドルフという町に密着していこうとしている。
 そこにこそ、来年開幕しようとしているTリーグが目指す本来のクラブの姿があるのではないか。
「日本で新しく新リーグが立ち上がることは聞いているよ。それにシンガポールで始まるT2リーグやインドリーグなども始まるから、選手の争奪戦も始まるかもしれないね。日本は日本独自のやり方があると思う。学校や企業と協力した独自のやり方があるのだろう。今日本はオリンピックの後に良い流れが来ていると聞いているし、日本の卓球が発展していくことは卓球界にとってとても良いことだ」(プレウス)。
 
 ゆったりとしたクラブラウンジやテラス。そこで働くスタッフの笑顔。平日の昼間、高齢の方や障がい者の会員が卓球を楽しんでいた。60年近いクラブ運営と素晴らしい施設。こんなクラブが日本にできるのだろうか。
 お金を稼ぐだけのものではなく、単なるエンターテイメントの箱ではない、地域密着の『ボルシア・デュッセルドルフ』のようなクラブが近い将来、日本にできることを願っている。
  • クラブのあり方について、情熱的に語るプレウス氏

  • ECLなどの優勝カップが並ぶ棚。クラブの栄光の歴史を物語る

  • 水谷隼や岸川聖也が汗を流したフロアで、楽しそうに汗を流す愛好者たち

  • クラブの本拠地であるDTTZ(ドイツ卓球センター)の外観

 世界選手権の開幕を祝うかのように(?)、朝からグングン気温が上がっているデュッセルドルフ。今日の最高気温はなんと36℃。明日からは24℃前後に落ち着くようですが、とにかく真夏のような暑さ。ただ、湿度は40%くらいなのでカラッとしていますね。

 そして王国取材班が泊まるホテルには冷房がありません。到着して部屋に入った時、かなり暑かったので天井を見回してみたんですが、どこにも何もない。
「ヨーロッパでは冷房がない家は普通にあるよ、暖房はついてるけど」
「昔は車にも冷房ついてなかったですよね。でも最近は温暖化してるから、新しい家には普通に冷房ありますよ」
 ……渡欧歴の豊富な今野編集長と編集部・中川はそう言っております。なるほど。

 ホテルのそばにグリューナー湖という小さな湖があり、1周2キロちょっとなのでランニングには最適。ノウサギや大きなガンの群れがたくさんいてビックリです。今朝も湖の周りを走ってきた編集部タローは、帰りにスーパーまで足を伸ばそうとして道に迷いました。道に迷うだろうな、と思っていたらちゃんと迷いましたね。

 今日は日本選手の試合はなし。お昼からドイツ卓球界のビッグクラブ、ボルシア・デュッセルドルフの練習場を訪れます。午後に会場に向かい、世界の若手選手などをピックアップしたいと思います!
  • なんて素敵な街並み!

  • こちらも美しいグリューナー湖

  • シジュウカラガンという種類のようです。かなり大きい

  • ガンの群れのそばをノウサギが駆け抜けていきました

  • 絵画のような湖の小径です

 世界選手権では恒例となっている、開幕前日の「バタフライパーティー」が、今年も会場に隣接するホテルで盛大に開催された。

 会場では美味しい料理を食べながら、お喋りに夢中な若手選手もいれば、往年の名選手たちが旧交を温め合う姿もある。これから大会を戦う選手たちも、開幕前につかの間のリラックスタイム。老若男女を問わず、多くの卓球人の笑顔があふれていた。
  • サイドにオーバーミス防止のガードがついた、新しいタイプの卓球台

  • ドリンクとフードのサービスも充実!

  • 相変わらずカッコいい、元フランス代表のレグー

  • プリモラッツ(写真右)も全然変わらないですね

 今大会の開会式とドローが行われたのは、会場のメッセ・デュッセルドルフに隣接する「エスプリ・アレーナ」。地元のサッカークラブであるフォルトゥナ・デュッセルドルフ(ブンデスリーガ2部)の本拠地で、天然芝の緑がとても美しい。

 その芝生をバックに設置された、開会式の舞台。目にした時は思わず「オオッ!」と声をあげてしまったが、開会式はITTFのヴァイカート会長の歓迎の挨拶に、地元の若いミュージシャンたちによる「ONE GAME, ONE WORLD」という歌の披露で終了。至ってシンプルなものだった。もっとも、最近では開会式を派手に演出するのは中国くらいのものだ。

 ちなみにこの「エスプリ・アレーナ」、2006年のサッカーワールドカップの際、日本代表がマルタ代表と大会前の最後の親善試合を行った場所でもあるという。その親善試合を現地で取材していた、日本経済新聞の山口大介さんが教えてくれました。格下相手に快勝して、大会本番に向けて弾みをつけるはずが、1ー0の辛勝でチームの雰囲気が最悪になってしまったとか……。まあ、もう11年も前のこと。卓球の日本代表は大活躍を見せてくれるでしょう!
  • 開会式の出席者&取材者は、誘導されてエスプリ・アレーナへ

  • なんとサッカー場の芝生をバックに開会式!

  • 地元ドイツで挨拶するヴァイカート会長

  • 生歌を披露してくれた地元ミュージシャンの皆さん

  • あ、現れたな! ドイツでの卓球イベントではお馴染みの「ラケディーノ」くん

  • 出席者にはドリンク&フードのサービスも

 第6シードとしてドローに臨み、準々決勝で許シン(中国)と対戦するブロックに入った水谷隼。2回戦ですぐに張本智和と当たる組み合わせになったのは残念だが、中国のビッグ4が第1〜4シードを独占する中で、メダルを懸けて当たる相手が誰になるのかは重要なポイントだった。

 結果的にリオ五輪で勝っている許シンが入ってきたのは、メダルに向けて一歩前進したと言える。第3・4シードのドローで先に張継科が数字を引き、水谷のブロックに入る「64」か隣のブロックの「65」、どちらを引くか固唾(かたず)を呑んで見守ったが、引いたのは「65」。この時点で水谷のメダルを懸けた対戦相手は許シンに決まった。張継科は故障続きでピーク時ほどの力はないかもしれないが、大舞台での強さを考えるとやはり張継科は怖い。水谷はドローの終了後、次のようにコメントしている。

 「許シンともし当たればリオ五輪以来ということで、約1年ぶりの試合になるんですけど、彼もかなり対策をしてきているでしょうし、リオ五輪と同じようにはいかない。自分もリオ五輪の時からさらに進化したプレーを彼に見せられたらいいと思いますね。
 自分のキャリアの中で、世界選手権でのメダルはものすごく重いものがある。歴史がそれを物語っているように、(男子では)79年大会からメダルから遠ざかっているので、やっぱりここでメダルを獲りたい。自分にしかできないことだし、そのチャンスがあると思っているので達成したい」

 28日午前中の会場練習には参加しなかったが、「まだシングルスが始まるまで3日あるので、そんなに焦らず、本番に疲れを残さないように迎えたいと思っています」とコメント。大会までハードなスケジュールが続いたこともあり、無理をせずに調整していく構えだ。「あとは自分が思うコースにサービスを出せるよう、しっかり練習するだけですね」(水谷)。
  • ドローを行う水谷、引いた数字は「33」

  • 水谷の隣で、樊振東のブロックに入ったオフチャロフは険しい顔

  • 張継科が「65」を引き、水谷のブロックに許シンが入ることが決定

 ドローが終わった後、開幕前日の恒例の記者会見が開かれた。現世界チャンピオンの丁寧(中国)と現アジアチャンピオンの平野美宇(日本)が出席した。

平野「去年は世界選手権に出られなかったので悔しかった。この1年間頑張ってきて、いろんなタイトルを取れたので、この大会でもさらに頑張りたい」
丁寧「世界選手権は卓球の試合の中でもっともレベルの高い大会なのでここで最高のパフォーマンスをしたい。平野はアジア選手権で中国に勝ち、今回中国は彼女に対して準備をしてきたけれども、大切なことは1試合1試合に集中すること」

 さらに会見後の囲みで平野はドローの結果を記者に聞かれ、「馮天薇にはチャンスがあると思うけど、まだ中国の木子がどこに入るかわからないので、1戦1戦頑張りたい。杜凱琹(香港)とは1回もやったことがないので、世界ランキングも高いし、少し怖い相手ですね」と語った。
  • 大会に向けての抱負を語った平野

  • 3回目の優勝を目指す丁寧