ドイツで行われた男子ワールドカップ決勝で、優勝を決めた直後にフェンスを蹴破り、張継科。賞金4万5千ドルを全額没収され、その行動は中国でも大いに物議をかもした。中国の大手ポータルサイト『新浪』の卓球サイトでは、「張継科がフェンスを壊したことをどう思うか?」というアンケートをネット上で実施。その結果、「何も悪くない、激情にあふれているのは良いこと」が35.7%(8,448票)、「あまり良くはない、理解はできるが少しやり過ぎだ」が32.0%(7,575票)、「良くない、いかなる場合も取るべき行動ではない」が31.5%(7,443票)と見事に票が割れた。「国際卓球連盟による賞金の没収を支持するか」という質問に対しても、「支持する」が51.3%(11,507票)、「支持しない」が48.7%(10,929票)と真っ二つに割れている(票数などは11月11日現在)。
その張継科、今回の全中国選手権では、大会初日から注目の的(まと)になった。観客からは「そのフェンスはけっこう硬いから気をつけろよ、張継科!」「張継科、ずいぶんフェンスにやさしくなったな!」等々のヤジも飛んだと伝えられている。
大会前半の団体戦ではおとなしいプレーで、団体準決勝の上海市戦で若手の趙子豪に敗れた時も、特に変わった様子はなかった張継科。しかし、男子ダブルス決勝で、マスコミや観客に格好のネタを提供してしまった。馬龍と組んだペアで許シン/樊振東ペアと対戦し、第5ゲーム6ー7とリードされたところで、張継科が台上バックドライブをミス。その直後、張継科がふてくされたように放り投げたラケットが、卓球台の上でバウンドした。主審からはすかさずイエローカードが提示され、観客のブーイングが会場に響いた。
決して良いマナーとは言えないが、ヨーロッパ選手なども、ミスをした時にラケットを放り投げることはよくある。張継科の「ラケット投げ」も、台に叩きつけるような乱暴な投げ方ではなかったが、いかんせん事を起こすタイミングが良くない。多くのマスコミに取り上げられる結果となってしまった。
国家チームの劉国梁総監督は、男子ワールドカップの閉幕後に「我々は必ず張継科のあの悪いクセを更正させ、自分の感情をコントロールする術(すべ)を学ばせる」とコメントしている。しかし、今のところ国家チームからは、何の処罰も下されていない。2006年アジアカップ決勝で王皓に負けた陳杞がラケットを投げ、フェンスを蹴った時は1週間の農村での労働や、罰金などの処罰を受けている。張継科の男子ワールドカップ決勝での行為は完全に確信犯であり、周囲に与える影響も大きい。陳杞より重い処罰を受けてもおかしくないところだが……。「下手に処罰して、ふてくされてやる気をなくしたら元も子もない」というのが周囲の本音か。
現役引退後も、コーチなどで国家チームに残る意志はないと聞く張継科。男子ワールドカップでの2回目の優勝で、ダブル「大満貫(五輪・世界選手権・ワールドカップでの優勝)」にリーチをかけ、残るは16年リオデジャネイロ五輪。ロンドン五輪での優勝後、劉国梁総監督や肖戦コーチは張継科のモチベーションを高めるのに苦心していたが、リオ五輪で優勝したら、張継科ももう卓球界に未練はないかもしれない。