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中国リポート

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 世界選手権蘇州大会の男子シングルスで、許昕と張継科を破って決勝に進出した方博。決勝では馬龍に敗れたが、卓球界に強烈なインパクトを残した。これまでバックハンドが弱点と言われていたが、台上のチキータやバック対バックのラリーでもかなり展開が作れるようになり、フォアのパワードライブにつなげていた。多くの選手が戦意を喪失してしまう中国の最強トリオに対して、真っ向勝負の打ち合いを挑んだ勇気と闘志は素晴らしかった。

 方博は男子シングルス決勝が終わった5月3日の深夜、自身の微博(ウェイボー/マイクロブログ)にこんな書き込みをしている。「この世界選手権の銀メダルは、金メダルのように光り輝いてはいないけれど、ぼくにとってはまた別の意味を持っている。ぼくは最高のスポーツ選手じゃないけど、自分の求めるものは手に入れてきた。もう二度と誰かに馬鹿にされることはないし、見下されることもない。周囲から尊重されていることを感じるよ。これこそまさにぼくが求めていたものなんだ」。
 まさに方博の心の叫び。公(おおやけ)にするには少々刺激的な発言だ。

 昨日お伝えした中国・CCTVのテレビ番組『風雲会』で、この書き込みについて尋ねられた方博。「チーム内での人づきあいは良いほうだし、みんなぼくのことをよくからかったり、冗談を言う。気にしていないように見えただろうけど、やっぱり心の中では不愉快な思いもしていた。『自分の力を証明したい』と思って、我慢していた」(方博)。結構プライドが高いのに、じっとそれを押し殺していた方博。だから芽が出るのが遅れたのかもしれないし、同時に努力を続けることができたのかもしれない。

 方博といえば、個人的に思い出されるのは13年全中国運動会。男女シングルスに出ている選手は全員写真を撮るつもりでいたら、気づいたら方博がベンチで泣いている。河北省チームの程靖チィとの試合で、「さすがに方博が勝つか、負けるとしても競るだろう」と他の試合を撮っていたら、ストレートで負けてしまったのだ。プレー中の写真を撮りそびれ、「こんなところで負けるなよ、方博……」とガックリ。この年、彼が右手を傷めていてまともにプレーができず、この大会にも痛み止めの注射を打って出場していたのを知ったのは、ずっと後になってからだった。
 李虎、宋時超、許鋭鋒、宋鴻遠……世界ジュニアで活躍しながら、国家1軍チームで活躍できなかった選手も多い中、見事なカムバックを果たした09年世界ジュニア4冠王。今後の活躍が楽しみだ。
  • 今はガンガン動く方博だが、ジュニア時代は「減量命令」が出たことも

  • 涙の初戦敗退だった13年全中国運動会

 5月8日、中国・CCTV(中国中央電視台)のチャンネル5(スポーツチャンネル)で放送されたインタビュー番組『風雲会』に、世界選手権・蘇州大会を戦い終えた中国チームの選手たちが出演した。
 主役はなんといっても、蘇州大会の男子シングルスで初優勝を飾った馬龍。その表情は余裕と自信にあふれ、その横顔にかつてのあどけなく、頼りない印象はもうない。「若い頃から代表選手としてプレーしてきたけど、今までの成績はきっと皆さんを満足させるものはなかったでしょう。今回の大会はプレッシャーは大きかった。ここまで頑張ってきたし、やっぱりチャンピオンになりたかったですから」(馬龍)。

 決勝で優勝を決めた後、卓球台に飛び乗ったことについて、司会の沙桐氏に尋ねられた馬龍は、こう答えている。「あの時は頭がカーッとなってしまって、思わず台に飛び乗っていた。チームメイト(方博)のことを考えなかった。今この場を借りて、方博と彼のファンに謝りたい」。番組の模様は、CCTVのインターネットサイト『央視網』で観ることができる。もちろん中国語ですが、興味のある方はどうぞ。

http://sports.cntv.cn/2015/05/09/VIDE1431101519060152.shtml

 ちなみに『風雲会』に主力選手でただひとり出演できなかったのが張継科。北京に戻ってから腰痛を悪化させ、歩くこともままならない状態に。5月6日に行われた中国チームのコーチ・選手による総括会議の際も、ずっと座っていることができず、マッサージ用のベッドにうつ伏せに寝ているしかなかった。現在はほぼ回復しているというが、27歳という年齢を迎え、体にはかなり疲労がたまっているようだ。
  • 蘇州大会の決勝後に行われた会見での馬龍

 3月14日、ITTF(国際卓球連盟)は世界選手権個人戦・蘇州大会(4月26日〜5月3日/中国・蘇州)のエントリーリストを発表。中国チームは2月末に発表したエントリーから、いくつかの変更があった。

 まず男子シングルス。当初エントリーされていた前回ベスト8の閻安が、梁靖崑に変更された。閻安は梁靖崑と入れ替わる形で、武楊との混合ダブルスのみエントリーされている。パリ大会以降、国内外の大会で目立った活躍を見せられなかった閻安に対し、「直通蘇州」で張継科を破るなど、その存在をアピールした梁靖崑。閻安の22歳に対して、梁靖崑は18歳と年齢差はわずかだが、非情の世代交代となった。

 また、女子シングルスでは、陳夢から武楊へエントリーが変更された。中国・CCTVの李武軍アナウンサーによれば、四川省成都市で行われている集合訓練のさなか、今月4日に「直通蘇州」第3ステージが行われたのだという(情報不足でスミマセン)。丁寧、朱雨玲、陳夢、武楊の4人が出場し、武楊が優勝、丁寧が準優勝。武楊がシングルスの出場権を獲得した。武楊がシングルスの代表から外れた2月28日のエントリーは、やはり仮のものだったようだ。

 残る丁寧、朱雨玲、陳夢の3名については、チーム内での「信任投票」によって、丁寧と朱雨玲が選出され、陳夢がシングルスの代表から外れた。また、陳夢は3月11日に行われたチーム内での対抗マッチで左ひざを負傷。ルベッソン(フランス)と組む混合ダブルスではエントリー変更されていないことから、それほど重傷ではないようだが、悲劇のダブルパンチに襲われてしまった。「今回シングルスのエントリーから外れたことは、彼女にとって自分を見つめ直す良い機会になるだろう。彼女はまだ若いし、これからもチャンスはある」と孔令輝監督はコメントしているが、果たして「大器」陳夢はここから巻き返せるか。
  • 梁靖崑、千載一遇のチャンスが到来(写真は14年世界ジュニア)

  • シングルスの中国代表を外れた陳夢(写真は14年世界卓球)

 2月26日、中国の卓球雑誌『ピンパン世界』は、世界選手権蘇州大会の代表メンバーが国家チーム内で発表されたことを伝えた。ITTF(国際卓球連盟)によるエントリーの締め切りがこの2月26日だったのだが、例年だとエントリーの締め切り後にも代表メンバーを発表せず、3月に入ってからも代表選考会を行うことが珍しくない中国。2月中の発表は異例の早さだ。エントリーは下記のとおり。

★ 2015 Qoros 世界卓球選手権個人戦・蘇州大会 中国代表選手
[男子シングルス]張継科・馬龍・許シン・樊振東・方博・閻安
[女子シングルス]李暁霞・丁寧・劉詩ウェン・朱雨玲・陳夢・木子
[男子ダブルス]張継科/許シン・馬龍/ボル(ドイツ)・樊振東/周雨
[女子ダブルス]李暁霞/丁寧・劉詩ウェン/朱雨玲、李暁丹/タイの選手
[混合ダブルス]許シン/韓国の選手・陳夢/フランスの選手・梁靖崑/武楊

 すでに男子ダブルスでの馬龍/ボルの国際ペアのエントリーが、大きな話題を集めているが、その他にも女子ダブルスで李暁丹、混合ダブルスで許シンと陳夢が国際ペアを組む。タイ、韓国、フランスのそれぞれの選手はまだ未発表だが、タイの女子選手はタモルワンかナンサナー(コムウォン)。韓国の女子選手は、左の許シンとのペアなので梁夏銀。フランスの男子選手は、すでに張継科や許シンとワールドツアーでペアを組んだ経験のあるマテネと読む。……個人的な予想で、じきに発表されますが。

 そして、男子シングルスに目を向けると、馬龍・樊振東が『直通蘇州』で代表権を獲得していた男子は、加えて張継科、許シン、方博、閻安がシングルスに出場。方博や閻安とシングルスの出場枠を争う存在だった周雨は、樊振東との全中国運動会優勝ペアで、男子ダブルスにエントリーする。方博と閻安は、対外国選手でもやや頼りないところがあるが、張継科・馬龍・許シン・樊振東の「ビッグ4」は鉄壁。若手の樊振東が、最強トリオにどこまで迫れるか。
 女子シングルスでは、『直通蘇州』第2ステージで代表権を獲得した木子が初のシングルス代表となり、丁寧・朱雨玲・陳夢もエントリー。カットの武楊がシングルスのエントリーから外れたが、順当な結果だ。

 それにしても、中国の世界選手権へのエントリーにはスキがない。男女シングルスでは主力選手と若手をミックスさせ、ダブルス3種目ではシングルスの代表から外れた選手もうまく起用して、経験を積ませたり、選手たちが不満を募らせないようにする。外国選手とのペアで全体の出場枠は減っているのだが、実利とバランスに長けた選手起用は健在だ。
  • 蘇州大会で存在感を示したい閻安(写真は13年世界卓球)

  • 単複にエントリーされた朱雨玲(写真は14年アジア競技)

 2月11〜15日に行われたITTFワールドツアー・クウェートオープン。中国は主力選手をエントリーさせ、男女シングルスでベスト4を独占した。
 女子シングルスで、劉詩ウェンと丁寧を連破して優勝したのは現五輪・世界女王の李暁霞。一時期は少々オーバーウェイトの感があったが、かなり体が絞れてきており、得意のストレートへの強打が冴えた。プラスチックボールに変わってから、フォアハンドを中心に技術面にも悩みを抱えていたが、復調をアピールした形だ。

 国家女子チームの孔令輝監督は、『北京青年報』の取材に対して次のように語っている。「例年の慣例では、クウェートオープンとカタールオープンの両大会で優勝した選手に世界選手権の代表権が与えられていた。今年はカタールオープンには出場していないので、李暁霞はクウェートオープンの優勝者として、中国女子3人目の世界代表となる」。劉詩ウェン、木子に続き、李暁霞が世界選手権蘇州大会の出場切符を獲得したということだ。
 国家女子チームでは、まだ丁寧、朱雨玲、陳夢、武楊が代表権を獲得していない。蘇州大会のシングルスの出場枠は6人で、順当にいけば劉詩ウェンと李暁霞にこの4名を加えた6人がベストメンバー。『直通蘇州』の第2ステージで代表権を獲得した木子が、シングルスにエントリーされるかどうかが注目される。

 2月17日にクウェートから北京に帰国後、19日の春節(旧正月)には短い休暇が与えられた国家チームの選手たち。しかし、22日には北京にある国家チームのトレーニングセンターで練習を再開し、3月3日から男子チームが福建省厦門市で、3月5日から女子チームが四川省成都市で集合訓練に入る。男女チームとも、残る世界代表選手の選考方法などは発表されていない。
  • 女傑は健在だった。クウェートオープンを制した李暁霞(写真は14年世界卓球)

 男子は樊振東と馬龍、女子では劉詩ウェンに続いて木子が世界代表への切符を獲得した『直通蘇州』。コートサイドに陣取り、王励勤や王皓、邱貽可といった「コーチ見習い中」の元代表選手たちとともに試合を見守った劉国梁総監督は、「国家チームの選手たちは、まだプラスチックボールに対する理解が不足している部分がある」と述べている。

 木子に敗れた李暁霞は「フォアハンドが全然ダメ。どう打っていいのかわからない」(出典:『人民網』)と深刻な状態。蘇州大会までの時間を考えると、2連覇は決して楽観視できない。「全体的にようやく打球感がつかめてきて、少しずつ飛び方や性質に慣れてきているけど、競った場面になると自分のイメージとは違うミスが出てしまう。とにかくたくさんの試合を通して慣れていくしかない」とは丁寧のコメント。大会前の集合訓練では、より攻撃的なプレーと3球目攻撃に意識を置いて、練習に励むという。

 『直通蘇州』での選手たちのプレーを見ていると、確かに以前では考えられないようなイージーミスが少なくない。プラスチックボールになって回転量が落ちたことで、チキータや台上バックドライブは安易に使うと狙い打たれ、体勢が不利になりやすいため、男子では明らかに使用率が低くなっている。3球目攻撃での仕掛けも、各選手ともセルロイドボールの時ほど積極的にはいけていない印象だ。蘇州大会では、思わぬ番狂わせも起きるかもしれない。

 なお、話題は少し変わるが、国家女子チームはコーチ陣の異動に伴い、5人いるコーチの担当選手を部分的に入れ替えている。コーチによるグループ分けは下記のとおり。

閻森コーチ:朱雨玲・武楊・李暁丹・車暁曦・趙岩
李隼コーチ:李暁霞・木子・陳幸同・朱朝暉・盛丹丹
陳彬コーチ:丁寧・劉斐・劉高陽・顧玉ティン・馮亜蘭
劉志強コーチ:劉詩ウェン・陳夢・袁雪ジャオ・劉曦・文佳
喬暁衛コーチ:張薔・胡麗梅・顧若辰・郭奕宸
  • 多くの故障を抱え、打球感覚の調整にも悩む李暁霞(写真は14年世界卓球)

 樊振東と馬龍という主力ふたりが代表権を獲得した男子『直通蘇州』に対し、女子では異変が起きた。第1ステージで劉詩ウェンが代表権を獲得した後、残る4名の主力選手(丁寧・李暁霞・朱雨玲・陳夢)にリーグ戦で選抜した木子・馮亜蘭・李暁丹・車暁曦の4名を加えて行ったトーナメント戦。ここで優勝したのはなんと26歳の右シェーク異質攻撃型の木子(ムゥ・ズ)。さらに第1ステージ2位の武楊との代表決定戦でも3−0で完勝し、2人目の代表権獲得となったのだ。その結果は下記のとおり。

☆☆☆ 『直通蘇州』女子第2ステージ 2.2〜6/江蘇省鎮江市 ☆☆☆

●準々決勝
丁寧 4、6、7 李暁丹
陳夢 −6、4、10、5 車暁曦
馮亜蘭 9、−9、9、6 朱雨玲
木子 −5、7、11、9 李暁霞
●準決勝
丁寧 −6、6、3、7 陳夢
木子 9、8、7 馮亜蘭
●決勝 木子 −9、8、−8、10、12 丁寧
●代表決定戦 木子 8、2、5 武楊
※木子が代表第2号に決定!

 バック表ソフトの木子だが、バック面の変化はほとんど使わず、フットワークを生かした連続フォアドライブで攻めに攻めた。代表決定戦で武楊を完璧にノックアウトしたフォアドライブの威力は、プラスチックボールをものともしない。
 3年前の2011年3月に行われた「直通鹿特丹(直通ロッテルダム)」第2ステージでも、決勝で李暁霞を破って代表権を獲得した木子。この直前に担当コーチが孔令輝(当時コーチ)から名伯楽・李隼に交代。その後、2軍落ちなども経験したものの、じっくりと実力を蓄えてきた。「李隼コーチのおかげで、メンタルも思考法も、ずいぶん成長することができたと思う。まだ世界戦の目標については考えられないけど、一番大事なのは外国選手との対戦でしっかり勝つこと」(木子/出典:『中国新聞網』)。

 世界選手権蘇州大会での、男女シングルスへの中国の出場枠は6名。劉詩ウェンに続いて木子が蘇州大会の代表権を獲得したことで、「李暁霞・丁寧・朱雨玲・陳夢・武楊の5名のうち、誰かひとりがシングルスのエントリーから外されるのでは?」という報道も中国国内ではある。ただし、木子はロッテルダム大会の時、「直通鹿特丹」で代表権を獲得しながら、シングルスにはエントリーされておらず、蘇州大会でもシングルスに出場するかどうかは定かではない。中国女子の孔令輝監督は、木子の代表権獲得を祝いながらも、「ずいぶんな難問を突きつけてくれたな」と正直にコメントしている。

 ちなみに蘇州大会の代表権を獲得した劉詩ウェンと木子は、ともに遼寧省撫順市の出身。世界選手権3連覇の女王・王楠もこの撫順市で生まれ育っている。男子では、元「柳承敏のコピー選手」こと王建軍や、「王皓2世」と言われた呉家驥も撫順市の出身だ。
  • 木子、ブンブンドライブで主力選手をKO(写真は13年全中国運動会)

 大変遅くなりました、2月6日まで江蘇省鎮江市で行われた世界選手権の中国代表選考会『直通蘇州』の結果をお伝えします。まずは男子からいきましょう。
 2回のラウンドが行われた男子の試合方式は、少々わかりにくい。まず第1ラウンドは、2014年の国家男子チーム内でのレーティングポイント(積分)、上位8名によるトーナメントだ。8番目の王皓がすでに引退しているので、9番目の梁靖崑が繰り上げとなった。第2ラウンドは、前回の第2ステージの上位4名(樊振東・許シン・方博・梁靖崑)に、第2ステージ5・6位のハオ帥と徐晨皓、レーティングポイント上位の馬龍・張継科を加えた8名で争われたが、樊振東が第1ラウンドで代表権を獲得したため、補欠の崔慶磊が繰り上がりで8番目の出場選手となった。結果は下記のとおり。

★★★ 『直通蘇州』男子第3ステージ 2.2〜6/江蘇省鎮江市 ★★★

[第1ラウンド]●準々決勝
馬龍 5、7、10 ハオ帥
梁靖崑 7、−8、8、10 張継科
許シン 8、−7、−10、9、13 尚坤
樊振東 9、2、7 閻安
●準決勝
馬龍 −9、−8、1、10、14 梁靖崑
樊振東 −8、9、10、7 許シン
●決勝 樊振東 −9、9、5、8 馬龍
※樊振東が男子代表第1号!

[第2ラウンド]●準々決勝
馬龍 3、8、−9、9 崔慶磊
許シン 8、5、6 梁靖崑
方博 −5、9、9、6 徐晨皓
張継科 14、−7、5、−7、8 ハオ帥
●準決勝
馬龍 6、8、6 許シン
張継科 14、10、−6、−4、10 方博
●決勝 馬龍 5、−13、5、14 張継科
※馬龍が男子代表第2号!

 張継科が梁靖崑に敗れるという、波乱の幕開けになった第1ラウンドは樊振東が優勝。準決勝の許シン戦は、ゲームカウント0−1の第2ゲームに8−9から逆転し、続く第3ゲームは8−3から10−10まで追いつかれたが、12−10で振り切り、そのまま勝利した。一方、準決勝のもうひと試合、馬龍対梁靖崑は、第4ゲームに梁靖崑が10−9でマッチポイントを握り、さらに第5ゲームも6−0と大きくリード。第5ゲームにも梁靖崑が2回のマッチポイントを握ったが、馬龍がしのぎ切った。
 樊振東と馬龍の決勝は、樊振東のベンチに呉敬平、馬龍のベンチに秦志ジェンとそれぞれの担当コーチが入り、まさに実戦さながら。樊振東が1ゲームを先取されながら、逆転で馬龍を破った。

 続く第2ラウンドは、張継科がハオ帥と方博とのゲームオールの接戦を切り抜け、決勝進出。しかし、馬龍戦は主導権を奪うことができず、第4ゲームも3回のマッチポイントをしのいだものの、14−16で競り負けて馬龍に名を成さしめた。「蘇州大会はぼくにとって5回目の世界選手権。世界選手権では残念な試合もあったけど、今回は自分の夢が成就する大会にしたい」(馬龍/出典:『新浪体育』)。これまで、蘇州で行われたワールドツアーに3回出場し、3回とも優勝している馬龍。「蘇州は馬龍にとって福地(縁起の良い地)」という報道に対し、「確かにそうだね。これからもぼくにとって、蘇州が福地であることを願っているよ」とコメントしている。
  • 樊振東、堂々の代表第1号!

  • 馬龍、プラボール対応に苦しむも、結果を出した

 1月29日、国家体育総局・卓球バドミントン管理センターは、国家1軍・2軍チームの新しいコーチ陣を発表した。1月15〜16日に行われた「2015年国家卓球チームコーチ報告会」の際、コーチ選考会も行われていたもの。実際は選考会といっても、男女チーム監督の交替などがない限り、チーム内での調整という意味合いが大きい。新しいコーチ陣の陣容は下記のとおり。

★男子1軍チームコーチ(4名) ※劉国梁監督(総監督兼任)は留任
肖戦・秦志ジェン・馬俊峰・劉恒
☆女子1軍チームコーチ(5名) ※孔令輝監督は留任
李隼・陳彬・喬暁衛・劉志強・閻森

★男子2軍チームコーチ(4名) ※劉国正監督は留任
呉広・劉彬・鐘金勇・于洋
☆女子2軍チーム監督(1名)
黄海城
☆女子2軍チームコーチ(4名)
陳振江・張琴・李大成・朱文韜
●フィジカルトレーナー(4名)
王喬治・陸愛発・李茶斌・周亢亢

 女子2軍チームの監督だった閻森(00年五輪男子複優勝)は、女子1軍チームのコーチ陣に加わった。地元開催だった昨年のユース五輪と世界ジュニアで、確実にタイトルを獲得したことで、ひとつステップアップ。閻森の後任である黄海城監督は、超級リーグでは広東二沙を率いて不名誉な連敗記録を作ってしまったが、劉詩ウェンの指導に携わったこともあり、かつては男子2軍チームでも実績を残していることが評価されたようだ。2軍チームの張琴コーチは、かつて日本リーグのサンリツでプレーしていたので、ご記憶の方もいるかもしれない。

 国家チームのコーチ陣も若返りが進み、男子1軍チームの劉恒(北京市チーム出身/01年全中国運動会男子複2位)は33歳、女子2軍チームの朱文韜(湖北省チーム出身)はまだ28歳という若さ。いずれも国家1軍チームや2軍チームに上がったことはあるが、国際大会の代表に選ばれるまでには至らず、若くしてコーチに転身している。彼らが指導経験を積んで国家チームを支え、ビッグゲームで修羅場をくぐり抜けてきた劉国梁や孔令輝、劉国正らが「モチベーター」として選手たちの士気を高めていく。

 なお、発表された男子1軍チームのコーチ陣には、馬琳や王皓を指導した「ペンドラ指導のエキスパート」呉敬平の名前がない。当初は「ついに退休(=引退)か」という報道も流れたが、許シンと樊振東という主力2人を抱えている以上、簡単に引退などできない。すでに国家チームで23年も指導を行い、引退の時期を迎えているが、2016年リオデジャネイロ五輪までは指導を続けるそうだ。特例としての定年延長なので、リストに名前が入らなかったのだろうか。
  • 14年アジア競技大会で樊振東のベンチに入った呉敬平コーチ

 1月15日、毎年恒例の「2015年国家卓球チームコーチ報告会」が北京で行われた。
 2005年から毎年行われ、国家卓球チームのコーチ陣によって、1年間の活動報告が行われるこの会議。その席上で、劉国梁総監督はこんな発言をしている。「国家チームは安定して好成績を収めると同時に、卓球文化の創造のためのソフト・パワーを重視しなければならない。コーチや選手は好成績を収めることのみ追い求めるのではなく、卓球文化の樹立のためのコア・バリューを追求するべきだ」(出典:『中国体育報』)。軟実力(ソフト・パワー)、核心価値観(コア・バリュー)という横文字系の言葉を使うあたり、プレゼン慣れしている感じの総監督。……要するに、「中国チームはただ強いだけでなく、卓球の価値を高めるブランドでなければいけない」ということか。

 同時に、劉国梁総監督はこんなことも述べている。「男子チームは主力選手の後ろに控える選手たちの力量が不足している。馬琳、王励勤の引退後、張継科・馬龍・許シン・樊振東の4人が〝4大主力選手〟だが、彼らを除くと総合的に高いレベルにある選手は決して多くない。男子チームはすでに静かな危機を迎えている」。……閻安、周雨、方博、さらに若手の梁靖崑や于子洋が控えているにも関わらず、この発言。確かに一時期に比べると、やや層が薄い感はあるが、さすが劉国梁総監督に「油断」の二文字はない。

 また、女子チームの孔令輝監督は、国際大会への出場をセーブしている李暁霞について、「ロンドン五輪後、モチベーションを失いかけた時期がある」ことを明かしている。そのため、女子ワールドカップでは決勝で丁寧に敗れ、「双満貫(大満貫を2回達成すること)」のためのチャンスをひとつ逸してしまった。大会後、コーチ陣との話し合いを経て、李暁霞は再びリオ五輪へのモチベーションを取り戻すことができたという。日本としては、このまま静かにしていてほしかった李暁霞だが、リオ五輪で最後にひと花咲かせて、翌年の全中国運動会で現役引退というのが、彼女に用意されたラスト・ロードだ(柳澤)。

下写真:ITTFスターアワードの席上での劉国梁総監督(右)と孔令輝女子監督。ちょっと人民服みたいですが、相当お高いものと推察されます(写真提供:ITTF)